HOME > 米国代替医療への道・TOP

【 がん患者の9割強が代替医療を経験〜米国最新がん事情 】

米国が「がん」に宣戦布告したのは1971年。ヴィクトリーまでの道のりは まだ遠いが、死亡率は年々減少傾向を示している。がん予防で「納豆」 など日本の伝統食が注目され、既存の西洋医療と代替医療を組み合わせた 治療効果への関心も高まっている。米国におけるがんをとりまく栄養補助 食品および代替医療関連の最新情報を報告する。

がん罹患率、ここ数年横ばい状態に

アメリカでここ数年、がんによる死亡率が減っていることが、9月はじめに発表 された疫病対策予防センター(CDC)、米国がんインスティチュート(NCI)らの 共同調査で明らかになった。罹患率については横ばい状態が続いている。 その主な理由として禁煙、エクソサイズ、健康的な食生活といった予防への関心 が高まっているのに加え、検診を受ける人が増えたのと、それによる早期発見が 挙げられている。

調査報告によると、死亡率が減り始めたのは1990年半ば頃からで、なかでも 男性の肺がんに劇的な減少がみられた。また、乳がん、前立腺がん、大腸がん も右下がりとなっている。 ちなみに、肺がん、乳がん、前立腺がん、大腸がんの死亡率は、全体の半数 以上を占める。

肺がん死、男性は減少するも女性は上昇

がんの種類別にみると、肺がんは、男性の死亡率が減っている一方、女性の 死亡率は1990年代に上昇。2000年以降は減少はしていないものの、非常に 緩やかな右上がり状態が続いている。毎年、約90万人が新たに肺がんと診断 され、うち3分の1が女性。男女ともにがん死亡率のトップとなっている。 乳がんと前立腺がんについては、マンモグラフィー、PSA(前立腺特異抗原 という腫瘍マーカー)を受ける人が増えたことで、罹患率は増えているものの、 死亡率は減っている。

乳がんは検診による早期発見が功を奏しているとされるが、1993年から減少 傾向にある前立腺がんの理由は不明だ。というのも、PSAがまだ普及されて いない国でも減少傾向が見られるからだ。 大腸がんについては、罹患率は横ばい、死亡率は減少している。がんになる 前のポリープの段階で発見されるケースが増えていることから、検診の普及 による早期発見が減少の鍵といえそうだ。

がん患者の97%が代替医療を試みる

死亡率減少という朗報に加え、がんと代替医療に関する興味深い調査報告も 最近発表された。フレッド・ハッチンソン癌リサーチセンターの調査報告で、 1997年2月から1998年12月にかけて乳がん、または前立腺がん、大腸がんと 診断されたワシントン州西部に住む大人356人を対象に電話でインタビュー したところ、約97%がなんらかの代替医療を利用しており、その結果、ほぼ 全員が体調がよくなったと答えたという。

健康維持が主な理由だが、約56%はがん治療の一環に代替医療を積極的に組み 込んでいるという。手術だけの患者に比べ、化学療法や放射線療法も受けた 患者の利用が目立った。

また、17%が自然療法やマッサージ療法といった代替医療専門医に通い、20% がバイオフィードバック、催眠療法、イメージ療法、クリスタル療法、キレー ション療法、マグネット療法などのメンタルおよびエネルギーの改善に効果が あるといわれる代替医療を試みているという。中でも最も多かったのは サプリメント利用で65%だった。

ちなみに、健康産業業界紙「ニュートリション・ビジネスジャーナル」による と、ガン予防サプリメントの2000年売り上げは、約5億5000万ドルを示している。 代替医療の利用者については、大卒の女性に代替医療を試みる傾向が強くみら れる他、年齢別では70歳以上に比べ60歳以下の利用が顕著だった。また、 大腸がん患者に比べ乳がん患者に代替医療との併用が目立った。

病院でも既存医療と代替医療を併用 

また、別の調査でも、がん患者の37%から83%が診断後、何らかの代替医療を 試みているといった報告があるように、代替医療を治療の選択肢のひとつと 考える患者は確実に増えている。そうした現状を踏まえ、代替医療を治療の一環 に組み込む病院もでてきた。

ニューヨークのメモリアル・スローン・ケータリング癌センターもその一つ。 医者と代替医療医がチームを組み、既存医療による治療と患者のニーズに合わ せた代替医療を併用し、最善のガン治療に取り組んでいる。通院でも入院でも 代替医療サービスが受けられる。既存医療と代替医療を組み合わせることで 患者のがんと闘う意欲が高まり、目を見張る治療効果をあげているという。

ここで受けられる代替医療は、マッサージ、針の他に、音楽療法、瞑想、 バイオフィードバック、自己催眠、ヨガといったマインド療法。末期患者の 不安感、痛み、などの緩和ケアに効果にも大きな効果をあげている。

がん予防効果で「椎茸」「納豆」が話題に

治療の選択肢が広まったとはいえ、がんから身を守るのがまず第一。そこで 今、アメリカで注目されているのが日本食。アメリカでも緑茶、トウフ、味噌 のがん予防効果はすっかり浸透したと言っていい。なかでも、最近では、 「椎茸」と「納豆」のがん予防効果が評価されている。

「椎茸」はがん予防 のほか免疫力を高める働きがあると、健康食品店の定番商品にもなりつつある。 「納豆」については健康関連の雑誌が取り上げ始めたという段階で、日系の スーパーマーケットでしか入手できない、アメリカ人にとってはまだまだ 入手困難な商品のため、「納豆の作り方」を掲載している雑誌もあるほど。 ただ、あのねばりと強い匂いと味が苦手というアメリカ人も多く、 「Nattokinase」というタブレットも販売されている。

「納豆」は、がんを防ぎ、更年期障害の症状を緩和し、血液をサラサラにする ことから脳卒中や心臓発作も予防する――と健康雑誌が大々的に取り上げて いることから、緑茶やトウフに次ぐブームになるのは時間の問題といえそうだ。

抗酸化サプリメントの有効性で議論沸騰

日本食がもてはやされる一方で、がん予防の定番サプリメントが非難の矢面に 立たされている。連邦政府の諮問機関「米国プリベンティティブ・サービス 特別専門委員会」が7月、ビタミンA、C、Eといった抗酸化サプリメントのがん 予防効果に疑問符をつけたからだ。

体内で自然発生する活性酸素ががんを招く。そこでビタミンA、C、Eといった 抗酸化力をもつサプリメンがにわかに注目されたわけだが、同委員会は 「抗酸化サプリメントに関する複数の研究報告を調べたところ、がんおよび 心臓病の発生を食い止めると言いきれるほどの十分な証拠はない」と結論付 けた。

抗酸化物質は確かにがんなどの様々な病気の発生や進行を食い止めるものの、 あくまで食べ物で摂った際に効果があるという指摘もあることから、サプリ メントに懐疑の目を向けた形だ。また、β-カロチンについては、ヘビー スモーカーの服用は逆に発生率を高めると警告している。

この他、サプリメントのがんをめぐる気になる情報については、ハーバード 大学医学部が、カルシウムの過剰摂取は前立腺ガン発症の誘因となることを 発表している。

また、抗酸化サプリメントは、放射線療法、化学療法の副作用を緩和する一方、 治療効果を妨げる恐れがあるといった報告も出ている。ただし、これらを結論 付けるには、さらに今後の研究が必要とされている。

ヘルスネットメディア

Copyright(C)GRAPHIC ARTS CO.,LTD. All rights reserved.