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【 好調に推移する米国健康食品産業を総括 】

ウィスコンシン医科大学のヘルス・ポリシー協会が行った調査によると、1994年から2010年 までの間に米国における患者の代替医療医師利用度は124%増大するという推定が発表 されている。だが現在の米国の代替医療ブームは、こうした資料を見るまでもない。ドラッグ ストアの人気ハーブ製品の品切れ現象がこのブームをはっきり示している。今回は代替医 療の中でも中核を成すハーブなど健康・栄養食品のここ数年の売れ行き推移を報告する。 (※現在、米国で代替医療が流行っている経緯については「ヘルスメディア」のトピック「オ ルタナティブ・メディスン(代替医療)へ、岐路に立つ米国医療界」の中でも紹介しています ので、そちらも参考にしてください。)

代替医療分野、追い風で今後も2、3倍の伸びが予測

同協会は、代替医療の中でもカイロプラクティック、鍼、自然療法の3つの傾向を調べたが、 同じく2010年までにそれぞれの成長率を2倍、2.3倍、3倍と推定している。また、 Nutrition Business Journalが明らかにした新しい調査によると、1998年の米国代替医療 費は272億ドルに上るという。こうした背景には「自分の健康は自分で守ろう」というアメリカ 人の意識変化が存在することを米国で有名な健康情報誌「Natural Foods Merchandiser」 は指摘している。

ハーブなど代替医療関連製品の売上げ推移を調べた調査によると、1994年から96年 までで自然食品や製品売上高は22.6%上昇。特に95年のビタミン剤売上は11億5千万ド ルから12億6千万ドル、自然医薬品2億7千万ドルから2億9千800万ドル、ハーブが5億2 千万ドルから5億6千万ドルとなっている。

また、デービッド・アイゼンバーグ医師の新しい推定資料によると、97年の代替医療費で はビタミン剤多量投与に33億ドル、ハーブ治療51億ドル、ダイエット17億ドル、講座/本 /教材などに47億ドルが使われたことが指摘、同市場の急成長を明らかにしている。

98年では米国の栄養関連産業はさらに増大、自然食品、ダイエタリー・サプリメント、自然 派ケア製品などを含む同市場売上は97年の235億ドルから10%増の258億ドルに拡大する (内訳=自然食品34%/ビタミン剤21%/ハーブ・植物15%/自然派ケア製品13%/スポー ツ栄養製品5%など)(※統計については米国誌「Nutrition Business Journal」を参考)

エキナセア、ガーリックなどのハーブ製品、前年比32%増で好調

米国健康情報誌「Whole Foods」誌が掲載した記事では「ハーブ成長の強さ」を強調、 全体的なハーブ関連製品の売上が前年比32%増であることを明らかにしている。 その中でも著しい売上を示したのがエキナセアで全体の9.6%を占めた。

さらにガーリック(7.2%)、朝鮮ニンジン、ギンコ、ゴールデンシール(ユキノシタ科)と続き、この上位 5つで全体の33%を占めたという。以下エフェドラ、シベリア朝鮮ニンジン、シャゼンシ、 ノコギリパルメット、Cascara sagrada(アメリカ産クロウメモドキ属の樹皮)となった。

また、同誌が行った消費者調査(96年)によると、前年度治療目的で最低1度はガーリ ックを購入した消費者は45%。エキナセアと朝鮮ニンジンでは44%、ギンコが35%、カモ ミール31%、アロエ30%という数字を挙げた。サプリメント専門店では、56%が総合ビタミン 剤を購入。46%はビタミンC、ビタミンE43%、カルシウム41%、ガーリック・サプリメント39%、 複合ビタミンB剤38%などとなっている。

この他、ダイエタリー・サプリメントの売上も好調で、ミネラル入り総合ビタミン剤が総売上 の30%を占めた。単一ビタミン剤は20%だが、そのうちビタミンCが33%、ビタミンE20%、複 合ビタミンB18%と続く。人気急上昇のサプリメントは、メラトニン、抗酸化剤、グリーン・フ ーズ、ピクノジェノール、キャッツクロー、グルコサミン・サルフェイトなどとなっている。

昨年、ストレス緩和ハーブ「カバカバ」が爆発的人気

98年のダイエタリー・サプリメント売上は98億ドルを示し、同市場の成長はとどまるところ を知らないかのようにみえる。専門家の予測によると、この成長は今後も続き年間10〜 12%になるだろうという。

USA Today紙が掲載した最近の記事では、6千万人が植物系サプリメントを利用、5千 万人はハーブを愛用していることを示している。こうした動向の理由として、@処方箋薬 剤に比べサプリメントが割安である、A副作用が少ない、B多くの研究発表がメディアを 賑わし、消費者の関心をあおっている――などが挙げられる。

「スリー・G」と言われるガーリック(Garlic)、朝鮮人参(Ginseng)、ギンコ(Ginkgo biloba)は相変わらずの売上だ が、98年は集中力を維持しながら緊張感や不安感を和らげるというkava kava(カバカバ) の人気が爆発した。ドイツで101人の患者を対象に行われたkavaの研究では、「ハミルト ン不安スケール」を基にkava効果を確かめた。

24週間の使用の後、kavaグループでは不 安計測値が30.7から9.9までに減少するなどかなりの回復を見せた。こうした研究発表や クリス・キルハム著「Kava:Medicine Hunting in Paradise」並びにハロルド・ブルームフィ ールド著「Healing Anxiety With Herbs」がABCのテレビ番組20/20で紹介されたことな どでkava人気に火がついた。

抗鬱ハーブ「セントジョンズ・ワート」も脚光

引き続き注目を浴びるハーブはセントジョンズ・ワート。抗鬱作用を示す同ハーブの人気 が高まったのは、96年同じくハロルド・ブルームフィールドが書いた 「Hypericum(St. John's Wort) and Depression」が20/20やCBSのGood Morningなど で紹介されたことがきっかけ。同ハーブは常に処方箋薬のProzac(TM)と比較されるが、 副作用が少ないことでも愛用される。ドイツでは、Prozacの25倍の処方箋が書かれてい るという。98年、米国立精神衛生研究所と同内代替医療局(OAM)の援助で3年にわた る430万ドルをかけた米国では初めての大規模な研究が始まった。

この他、最近の注目株ハーブには肝臓を浄化するというオオアザミ(milk thistle)、良性 前立腺肥大による泌尿障害を緩和するノコギリ・パルメット、尿道感染に薦められるクラン ベリー・エキス、免疫促進のエキナセア、呼吸器官のイライラにゴールデンシールなどが ある。

関節炎緩和でグルコサミンが急浮上

さらに、サプリメントとして
@5‐HTP(5−hydroxytryptophan)/アミノ酸のトリプトファンだが、化学汚染のあったもの が好酸球増加筋痛症候群を引き起こし死者36人を出したことから、89年FDAは市場から 回収した。94年のダイエタリーサプリメント健康教育法(DSHEA)制定以降、再び登場して いる。5‐HTPは、安定感や満足感を与える神経伝達物質、セロトニンに直接転換される。

Aグルコサミン・サルフェイト/関節炎や骨粗しょう症に伴う痛みを緩和するとして市場に 踊り出た。グルコサミンは元々体内に存在する物質。年齢と共に減少し、関節の硬化など を起こす。この処方箋を書く医師が増えているにもかかわらず、米国では建前として公式 使用を認めていない。

BビタミンE/別に目新しくはないが、売上で常に1位あるいは2位を占める。アルツハイマ ーの進行抑制や前立腺がんの危険性低下など新しい研究発表で常に話題を提供する。

Cαリポ酸/ビタミン剤の宣伝などで有名になった用語「抗酸化剤」。ユニークな抗酸化剤 やエネルギー促進として注目を浴びるようになったのがαリポ酸。体内で作られる自然物 質だが、その量は限られている。ビタミンCやE、補酵素Q10、グルタチオンの代謝ライフを 拡大しその効果を倍加する。

Dホモシステイン制御/98年になってまた目新しい用語を耳にするようになる。それは、 「メチル化」並びに「メチル・ドナー」。メチル・ドナーには葉酸、ビタミンB6、B12などがあり、 有害アミノ酸のホモシステインを有益アミノ酸に転換するため、メチル化というプロセスを使 う――などが注目を集め始めている。

栄養補助食品のネットワークビジネス160億ドル市場、直販総売上げの72.4%占める

食品会社を始めケミカル関連企業も熱い視線を送っている「ニュートラスーティカル」も96年 は860億ドルという驚異的数字を示した(Nutrition Business Journal)。食品で病気の治療 や予防を目指す新分野として続々新しい商品が登場しているが、内訳は自然・オーガニッ ク食品が8.5%、サプリメント12.1%、機能性食品16.6%、「レッサー・エヴィル食品」(健康のた め砂糖、塩分、カフェイン、脂肪などを取り除いたもの)28.5%などとなり、今後の動向が注 目される分野。

栄養関連製品や自然派健康食品などの販売経路にはドラッグストア、健康食品専門店、 通販など多種多様だが、97年の売上ではネットワークビジネスが米国だけでも160億ドルを 上げ直販総売上の72.4%を占めた。この5年間での売上の伸びは、メールオーダーの48.6%、 テレマーケッティング29%と比べ、直販が57.5%とダントツの勢い。一方、小売店の伸びは6.5% にとどまった。

インターネットが新たな販路として急成長

だがその一方で、最近ではスーパーマーケットも健康食品販売に参画、かなりの成績を上げ ている。例えば、kava kavaやカノコソウ(valerian)はドラッグストアで230%の伸び、大量販売 アウトレット店で157%などを示しているのに対し、スーパーマーケットで254%成長という数字 を挙げた。最近売上成長の目覚しいポリフェノールもドラッグストアの13%、アウトレット店38%と 比べ56%増と健闘している(Natural Business1998年)。

さらに急成長を遂げているのが、イン ターネット販売。最近のパソコン利用の急増に伴い新しい販促ツールとして目を引いている。 割合としては、98年度サプリメント総売上の0.3%を示しているに過ぎないが、97年の1千200 万ドルから4千万ドルと飛躍した。最近あるいは今後、Heralthshop.com、MotherNature.com、 GreenTree.comといったベンチャー企業やSoma.com、Drugstore.comなどのファーマシー、 並びにカタログ販売社、大手食品会社などが参入してくるものと見られる。

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