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男性喫煙率減少も、妊娠適齢期女性の喫煙率は横ばい
「平成19年度国民健康・栄養調査結果」

男性のがん死原因のトップに立つ肺がん。喫煙との関連が指摘されていることから年々男性の喫煙率は減少傾向にある。一方、妊娠適齢期の女性の喫煙率はというとほぼ横ばい。そうした現状が、厚生労働省が公表した「平成19年度国民健康・栄養調査結果」で明らかとなった。妊娠適齢期女性の喫煙は、流産や低出生体重児出産のリスクが高まることも指摘されているのだが。

男性喫煙者は約4割、女性は約1割

12月25日、厚生労働省が平成19年度国民健康・栄養調査結果の概要を公表した。調査は、無作為抽出の約6,000世帯18,000人を対象に、11月に実施。平成19年度の重点調査項目は「糖尿病」、「休養(睡眠)」。他に、「メタボリックシンドローム」、「喫煙」、「食生活」の状況なども調査した。

「喫煙」では、男性の喫煙者が約4割、女性が約1割。男女とも20-40歳代で喫煙者が多く、男性で約5割、女性で約2割を占めていた。また、男性の喫煙率は減少傾向にあるものの、女性の喫煙率は横ばいであることが明らかとなった。

喫煙により肺がんに至る可能性が高いことが指摘されている。男性の喫煙者の減少傾向はそうした認識の高まりによるものであろうか。
昨年5月に公表された「平成19年人口動態統計」によると、平成19年の死亡者数は110万8280人(前年より2万3830人増加)。死亡原因のトップは悪性新生物(がん)で33万6290人。平成19年では全死亡者の30.3%を占め、3人に1人ががんで死亡していることになる。

男性のがん死原因のトップは肺がんで、平成19年の死亡者数は4万7659人。平成5年以降、胃がんを抜き第1位になっている。ちなみに、女性は大腸がんが胃がんを抜き第1位。平成19年の死亡者数は1万9003人。

女性喫煙者も肺がん死リスクがトップ

では、女性の喫煙はどのような疾患リスクが高まるのか---。
先頃、厚生労働省研究班(主任研究者=祖父江友孝・国立がんセンター部長)の研究で、喫煙が原因で死亡した人々は年間で20万人に達することが分かった。

研究では、40-79歳の男女約29万7千人に喫煙習慣をヒアリングした。その結果、喫煙者の疾患死亡リスクでは、男性のトップが消化性潰瘍、次いで喉頭がん、肺がん、くも膜下出血となった。 また、女性では、トップが肺がん、次いで慢性閉塞性肺疾患、心筋梗塞、子宮頸がんなどとなった。

女性の喫煙では、とくに妊娠適齢期女性の喫煙で低出生体重児の出産や流産のリスクが懸念されている。流産の可能性が喫煙しない妊婦より1.5倍高いといわれている。また、タバコのニコチンは母乳経由で新生児に浸透し、ニコチン中毒症を引き起こすことも指摘されている。

ともあれ、まず禁煙が必要だが、男女ともに喫煙による疾患リスクの軽減には日頃から野菜の摂取を心がけることが功を奏しそうだ。 ブロッコリー成分が喫煙者の肺がん予防に有用であることが、Cancer Prevention Research誌08/12月号に掲載されている。

University of Minnesota研究者グループによるもので、煙草特異的発がん物質、4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノンとベンゾ(a)ピレン(BaP)をマウスにさらしたところ、16週間後、マウス1匹あたり平均で21の腫瘍が見つかった。その後、マウスに、ブロッコリーなどアブラナ科野菜に含まれるI3C(インドール3カルビノール)を1、10、30、71、112マイクロモール/g、それぞれ与えたところ、腫瘍の数がそれぞれ、15、51、53、75、88%減少したことが分ったという。

ブロッコリーやキャベツ、ケールなどのアブラナ科野菜に含まれる成分ががん予防に有用であることはこれまでにも報告されている。Food Chemistry誌08/10月号に掲載された記事によると、Quebec University研究者グループが、34種類の野菜の抽出物が、胃、肺、乳房、腎臓、皮膚、すい臓のがん細胞株におよぼす影響を観察したところ、ブロッコリー、キャベツ、ケールなどアブラナ科野菜の抽出物であるスルフォルファンおよびガーリックの硫黄化合物ががん細胞の増殖を最も抑えていることが分かったという。

緑葉野菜の肺がん予防の有用性については、Nutrition誌08/3月号でも紹介されている。Galician Public Foundation for Health Emergencies研究者グループが、被験者617人(肺がん患者295人、健康体322人)に、食品頻度調査(FFQ)を行った。

結果、緑葉野菜を1日最低1回摂取するグループは1週間に5回未満のグループに比べ、肺がんに罹るリスクが5%低いことが分かった。多量に摂取すると予防効果が大きい野菜は、じゃがいも、キャベツ、かぶら菜、レタス。また、果物では大きな影響は見られなかったという。


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