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ビタミンE、過剰摂取は骨粗鬆症を引き起こす
ラットに8週間、通常の5倍のビタミンEを投与

ビタミンEの摂り過ぎは骨粗鬆症が生じる可能性が高い。動物実験でそうしたことが明らかになったと、3月4日付けの医学誌ネイチャーの電子版が報じている。 ビタミンEは抗酸化ビタミンとして人気が高く、ビタミンCとともに多くの利用者がいる。過ぎたるはおよばざるがごとし、ということか。詳細を報告する。

体重50kgの人が約1000mgのサプリメント摂取に相当

研究は慶應大学医学部の竹田秀特任准教授や伊藤裕教授らによるもので、ラットにビタミンEを1キロ当たり約600mg(通常の5倍程度)を添加した餌を8週間与えた。その結果、骨密度が2割減り、骨粗鬆症に近い状態になったという。

現在の日本人の食事摂取基準(厚生労働省2010年版)では、ビタミンEの耐容上限量は、成人男性で一日当たり800〜900ミリグラム、成人女性で一日当たり650〜700ミリグラムとなっている。今回のラット実験では、体重50kgの人が約1000mgのサプリメントを摂ることに相当するが、ビタミンEが骨を破壊する細胞を活性化するため骨密度が低くなるものと考えられているという。

揺れるビタミンEの評価

高い抗酸化機能を持ち、人気が高いが、何かと槍玉に挙げられがちなビタミンE。以前も、権威ある米国医師会誌(JAMA)2005年3月16日号で、「ガンや心血管疾患の予防に効果がないばかりか、心不全の危険が高まる」という研究報告が出て、ビタミンEのリスクが騒がれたことがあった。それまで、ビタミンEは心臓病のリスクを低下させるといわれていた。

この研究報告は、カナダのマクマスター大学のエバ・ロン博士らによるもので、1993年から99年にかけ55歳以上の心血管疾患および糖尿病の患者約9,600人を2グループに分け、一方にビタミンEを400IU、もう一方にプラセボを毎日服用させた。
さらに、この調査終了後の1999年から2003年にかけ、死亡者と継続服用を拒否した人を除く約4,000人を対象に同様の調査を行った。 その結果、いずれの調査でも、ビタミンEを摂取したグループは、プラセボグループより心不全のリスクが13%高いことが判明した。また、心臓発作やガン罹患のリスクは変わらなかったという。

研究報告では、心血管病または糖尿病の患者においては、ビタミンEサプリメントの長期摂取にガンおよび心血管病の予防効果はなく、逆に心臓病のリスクを高める危険があると結論づけている。

統計的になんらかの問題があると指摘

こうしたビタミンEの心臓病へのリスクが派手に報じられた一方で、その直後、同じ「JAMA」2005年7月6日号には「ビタミンEは女性の心臓病による死亡リスクを減少する」という内容の研究報告が掲載された。

それによると、オレゴン州立大学のマレット・トラバー博士らが45歳以上の健康な女性約4万人を対象に1992年から2004年にかけ調査を実施。2万人ずつの2グループに分け、一方のグループにビタミンE600IU、もう一方のグループにプラセボをそれぞれ1日おきに摂取させたところ、プラセボグループに比べ、ビタミンEグループの心臓病による死亡率が24%少ないことが分かった。65歳以上ではさらにプラセボとの差は大きく、49%であったという。

これでは、一体ビタミンEは心臓病に有益なのか否かという論争にも発展するが、これに対し、米健康食品業界は、「これまでのネガティブな研究報告は、病気を抱える高齢者を対象としたもので、統計的にもなんらかの問題があると指摘されている。消費者の困惑を招いただけ」と批判の声を挙げている。

最近のビタミンEに関する研究報告にはどのようなものがあるか。
ビタミンE摂取は精神機能の改善に有用であると、Neurobiology of Aging誌12.1月号が報じている。 Karolinska Instituteなどの研究者グループによるもので、アルツハイマー病患者168例、軽度認知障害患者166例、認知機能正常被験者187例のデータを分析した。データには、ビタミンEのトコフェロール(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)とトコトリエノール(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)摂取が含まれていた。

分析の結果、アルツハイマー病患者および軽度認知障害患者は、総トコフェロールおよび総ビタミンE摂取量が最高群の平均値に比べ85%低いことが分かった。また、総トコトリエノールは、アルツハイマー病患者で92%、軽度認知障害患者で94%低かったという。

ビタミンEの過剰摂取による骨粗鬆症の可能性については今後のさらなる研究が待たれるが、骨の健康維持については、ビタミンK、Dの有用性が報告されている。 Bone誌11.4月号で、ビタミンKは高齢男女の骨の健康維持に有望と報じている。Universitat Rovira i Virgili研究者グループが、平均年齢67歳の男女200人を対象に、137品目食品頻度調査(FFQ)を行った。研究期間は2年。ビタミンKの平均摂取量は男性は334マイクログラム/日、女性は300マイクログラムだった。

被験者125人の骨ミネラル密度(BMD)を測定したところ、ビタミンKの摂取量を100マイクログラム増やすごとに、BMDが0.008g/m2増加することが分かった。さらに、ビタミンKはBMDの損失を著明に低下することも分かったという。

また、Osteoporosis International誌10.11月号でカルシウムとビタミンDの併用は骨密度改善に有効と報じている。 フィンランドの研究者グループが66歳から71歳の女性3,432例を対象にしたOsteoporosis Risk Factor and Prevention-Fracture Prevention Studyを用いた研究を行った。研究者はサブセットの593例のBMD(骨ミネラル密度)を測定し、半数にはビタミンD(800 IU)とカルシウム(1000mg)を3年間与えた。残り半数は何も与えずに経過を見た。

結果、ビタミンD+カルシウム投与群ではBMDが0.84%増大したことが分かった。対照群の結果は0.19%だった。ただし、腰椎、大腿骨頸部、大腿骨転子、大腿骨近以部では有意な変化は認められなかったという。

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