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意図的に、放射能恐怖を世界中に撒き散らす人々
放射能問題最終章:放射能ノイローゼの棲む世界(2)

13日夜、フランス国営テレビがサッカー日本代表のゴールキーパー・川島永嗣選手の腕が4本あるかのような合成写真を放映した。日本政府が抗議すると、軽率だったとテレビ局側は謝罪したが、ジョークにしてはいささか手が込みすぎている。一方で、司会者は謝罪もせず、「自由な表現を出来るフランスを誇るべきだ」とうそぶいているという。はたして放映にはどのような思惑があったのか。

日本代表ゴールキーパーの腕を意図的に合成し、「福島の影響か」

フランス国営テレビ・フランス2は13日夜の娯楽番組で、サッカー日本代表のゴールキーパー・川島永嗣選手の腕が4本あるかのような合成写真を放映。フランスが日本に敗れた試合に触れ、司会者のローラン・リュキエ氏は「福島の影響があったのか」とおどけ顔で皮肉った。 これに対し、日本政府は被災者の人々の心情を傷つける行為とパリの日本大使館にただちに抗議。16日、フランス2は「日本の皆さまの心情を傷つけた。深くおわびする。失礼なことをするつもりはなかった」と釈明した。

福島ではいまだに多くの人々が、放射能への不安を抱えながら暮らしている。当然ながら、リュキエ氏と番組は、悪趣味、下品、無神経、現地の人々の心情を逆なでする行為と内外から痛烈にパッシングされた。

はたして、番組の放映前にチェックはなされなかったのか。このネットの時代に、そうした面妖な合成写真を流せば、世界中からどのような抗議が寄せられるか、正常な思考を持ち合わせた人間であれば予測はつくはずだ。

それでもあえて放映したのはそれなりの覚悟があってのことだろう。司会者のリュキエ氏は「自由な表現を出来るフランスを誇るべきだ」と謝罪もせず、ラジオ番組では、「フランスのテレビが何をするかを決めるのかは日本ではない」とうそぶいていたという。何をいわれようが、全て承知のうえでの放映である。

軽妙なおどけの舌先に忍ばせた、反原発へのポイズン

パリジャン紙には、「この冗談は原子力災害が引き起こす結果」に向けたものだとリュキエ氏は語っているという。おそらく、番組での揶揄(やゆ)の底に潜んでいたのは、欧米人の払しょくできない原発への根深い恐怖、恨みであろう。

冗談でも軽い気持ちでもない。この司会者が軽妙なおどけの舌先に含ませていたものは、原発大国フランスへの抗議、世界の原子力を牽引する自国へのアイロニー(皮肉)という強烈なポイズン(毒)ではなかったか。世界中で忌避される放射能、それを生み出す原発への抗議に、意図的に合成した異様な写真を流すことも、福島を引き合いに出すことの罪の意識も、彼の頭の中ではすべて帳消しということであったのだろう。

それにしても、リュキエ氏のおぞましい感性の倒錯(そもそも放射能の影響で腕が4本の奇形が出た例が世界にあるのか)、放射能への恐怖、心的障害は一体どのように育まれたものであろうか。

欧米人の放射能恐怖症のルーツ、セラフィールドの白血病多発伝説

ネットがいくら普及したとはいえ、いまだにテレビが抗しがたい洗脳メディアであることには変わりない。テレビ報道の客観性・倫理性などすでに崩壊しつつあるが、今回のフランス2の番組はテレビ報道の意図的な所作というものをあらためて人々に見せつける恰好となった。

現実にあり得ない写真を流してでも、放射能の恐怖を世界中に訴えたかったのであろうが、確かに、テレビというツールはそうした目的をかなえる最強の武器でもある。とはいえ、その実、自らもこの最強の洗脳メディアに放射能の恐怖を延々と植えつけられてきたことを忘れてはいないか。

そもそも、彼ら欧米人に、原発への恐怖を抱かせるきっかけを作ったのもテレビ報道である。例えば、イギリス・セラフィールドの白血病多発報道。日本でもいまだにセラフィールドで放射能による大惨事が起きたかのように信じ込んでいる人々がいる。

欧米人の原発恐怖症のルーツともいえる、セラフィールドの白血病多発伝説とは一体どのようなものだったのか。
1983年11月1日、英国カンブリア地方セラフィールドに隣接するシースケール村で小児白血病が多発、通常の10倍にも達するとテレビ番組が報じた。セラフィールドには1950年来運転している核燃料再処理施設があるが、これが小児白血病の発症と関連づけられた。また、スコットランドのドンレイ原子力研究施設から近い、西ソーサでも小児白血病の発生率が高いとされた。

これに対し、D.ブラックを中心とした研究チームが調査に乗り出すが、英国放射線防護委員会(NRPB)の返答は、放出された放射性物質の濃度は自然放射線よりも低く、小児白血病の発症にはその400倍必要というものであった。

D.ブラックは1950年代の同施設操業開始後の数年間に2基の黒鉛炉から流出した酸化ウランにも着目するが、これもNRPBの評価では小児白血病発生率の100分の1程度とされ、ドンレイも同様とみなされた。

こうしたことからセラフィールドとドンレイの小児白血病発生異常は放射線被曝以外によるものと考えられるようになった。その後も、セラフィールドで100mSv以上被曝した父親を持つ小児への異常発生説などが挙げられたが、複数の疫学調査でも放射能との因果関係が見出されなかった。

このセラフィールドの一件を、京大原子炉実験所の今中哲二氏が文献で徹底的に調べているが、実際には、放射性廃液がタレ流し状態になっていたことがわかったという。
では一体、どれほどの量だったのか。セラフィールドでのセシウム137の放出量が4京1000兆ベクレル(約110万キュリー)で、チェルノブイリ事故で爆発した原子炉から放出された量の2分の1から3分の1に相当。また、プルトニウムの放出量が610兆ベクレル(1万6000キュリー)で、長崎原爆で使われたプルトニウムの約2個分。その他、大変な量の放射能が、英国とアイルランドの間の狭いアイリッシュ海に放出されていたという。

結論として、今中氏は、シースケール村の白血病の原因は、セラフィールドから放出された放射能にあると考えるのがもっとも素直な判断としている。では、これほどの放出量でどれほど深刻な事態がもたらされていたのかというと、1950年の核燃料再処理施設の稼働から1983年までに白血病の発症者は7人。4年に1人の割合の発症である。 現在日本では白血病の発症者は年間7000人以上といわれている。もちろん、その多くが原発周辺地域に住んでいるわけではない。

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    放射能、怖いと思わせることで利益を得る人々がいる

    テレビ報道では、人々の注意を喚起するもの、それを取り上げることが何よりも優先する。視聴率のアップを図るには、人々の防衛本能に訴えかけるものを流すのが手っ取り早い。放射能報道は人々の潜在的恐怖をすくい上げる。関心を向けさせるにはうってつけのテーマだ。

    次第に、報道サイドでは、「放射能は、たとえ微量でも恐ろしいもの」、「恐ろしいものではなくてはならない」という暗黙のテーゼが確立するようになる。そこから、高視聴率を稼ぎだすための手前勝手な彼らの理念が、社会通念でもあるかのように一般の人々に広く定着していくという構図である。

    1927年のH.JマラーのDNA修復機能の喪失したショウジョウバエの実験から放射線の有害性は直線的に比例して高まるという直線仮説(LNT仮説)が生まれ、1958年に国際放射線防護委員会(ICRP)がそれに基づいた放射線安全基準値を世界に勧告。以後50年余りの間、放射線医学の専門家らがその誤りを指摘してきたが、いまだに多くの人々が、「放射能は微量でも恐ろしいもの」という観念に浸ったままでいる。

    これまで、放射能の恐怖を間断なく国民に吹き込み続けてきたテレビ報道。背後には、その流れに乗り、利益を得る人々もいる。彼らにとってみれば、テレビの放射能恐怖報道の是正など不用なものであり、未来永劫、放射能への恐怖を煽り続けてくれることが望ましいことなのである。

    やしきたかじんと辛坊治郎による討論番組「たかじんのそこまで言って委員会 超・原発論」のDVD(昨年12月16日発売)に、ジャーナリストの宮崎哲弥氏を司会に大阪大学名誉教授で元ICRP委員の中村仁信氏と武田邦彦氏(中部大学教授)との対談が収録されている。

    この中で、中村氏と武田氏の興味深いやりとりがある。

    「10mSvなど問題ない、では上げたらいいかというと、そうは簡単にはいかない」

    中村:ICRPおよび日本医学放射線学会の考え方ですが、防護量という概念を取り入れている。線量規制をする時に1mSvまでですよということを言っておくと便利なことがいろいろある。例えば病院の放射線を扱う医療区域、一般の人は1mSvまでですから入れませんとか、放射性物質をいろいろ商売にしている人があったとしても1mSvを超えたらダメなんだ、法律で決まっているからと。ということで、防護のための線量で、決して1mSvを超えると何かなるということではない。いまだに1mSvということがICRPでも残っている。変えようとした委員長もいたが、変わらなかった。10mSvなんて問題ないよ、と皆がいうから、では上げたらいいかというと、そうは簡単にはいかない。

    武田:10年くらい前からさかんに1mSvまで下げろ下げろといわれてきた。放射線業務従事者は下げるのを懸命にやってきた。原子力業界自体が1mSvに下げてきた。ものすごい努力して。これを突然10mSvとかに切り替えられない。

    日本の法律で1mSvと規制されれば、原子力業界といえども、嫌が応でも従わざるを得ない。しかし、この年間1mSvについては生体影響とは無関係の違う思惑で決められたものだ。

    中村:1mSvになった理由ですが、最初は5mSvにしていた。ガンが増えてきた。しかし年齢とともにガンが増えるのは当たり前なのに、全部原爆のせいになっている。(中略)細かく考えて1mSvにしているわけではない。ざっくりとしたもの。日本では1mSvを取り入れて法律にした。法律で1mSvになってしまっているのだから、これを超えると怖いのだろうと思われてしまっている。こうした誤解を解かないといけないが、関係者がしていないといえばしていない。

    そして、武田氏はその内実をこう曝露する。

    武田:うがったことを言って恐縮なんですが、努力をしなかったのは一つは儲かるんですよ。低いほうが。いつもそれがあって。私ね、実は原子力委員会の部会でもアイソトープ協会の部会でも出るでしょ、もう怪しいんですよ。なぜ、怪しいかというと多くの人が1mSvでもいいんじゃないかと思っている節がある。下がるほうにいくんですよ。なぜ下がるほうにいくかというと下がれば下がるほど取扱量が増えて、膨大に儲かる。機械も儲かるんですよ。

    ガンもあらゆる病気も、全てがチェルノブイリのせい

    放射能を異常に怖いと思わせ、利益を得ようとする人々がいる一方で、あらゆる疾病を全て放射能のせいにして恩恵に浴そうとする人々もいる。

    『週刊新潮』(12.3.15)に、「原発事故から26年目、チェルノブイリを歩く」という記事が掲載されている。この中で、チェルノブイリから南西に位置するコロステン市での状況を紹介している。同市はチェルノブイリ原発から100キロ以上離れているが、事故後の放射線量は福島より高かったという。

    同市にあるジトミール州立広域診断センターのアレクサンドル・グテービチ副院長は次のように語っている。
    「10年ほど前までは身体の不調を感じると、ただの風邪から心筋梗塞や脳溢血まで、あるいは便が硬いなんていう場合でも、チェルノブイリのせいだと言う人が多かった。実際、原発事故と疾病との関連性を判定する委員会があり、どんなガンでもチェルノブイリとの関連性が認められていました。もちろん厳密に証明できるはずもないのですが、認められると無料でもらえる薬が増えたり、入れ歯がタダになったりと優遇されるので、住民はその権利を欲しがったんです」

    「今から10年ほど前まで」とは、2000年頃までそうしたことが常態化していたということか。チェルノブイリでの原発事故が1986年、それから10数年、グテービチ副院長の指摘する「委員会で、どんなガンでもチェルノブイリとの関連性が認められていた」、そんなことが現地で当然のことのように行われていたということなのか。

    テレビ報道関係者、写真家、ジャーナリスト、彼らが現地を訪れた際、住民らが「チェルノブイリの恩恵」に浴すために口裏を合わせるように放射能恐怖を語っていたとしたら、被害者意識にかられた彼らの茶番に世界中が付き合わされ、振り回されていたことになる。彼らの利益のために、世界中が騙されていたことになる。

    ガンやさまざまな疾患、低線量放射線被曝が原因と明確に立証できない

    チェルノブイリでセシウムをはじめとするさまざまな放射性物質が飛散し、どれほど低線量の被曝でも有害で、身体的被害が生じるとする論文も出ている。しかしそれが、低線量放射線というリスク因子のみによるものと明確に立証できるかというと、むろん出来ない。

    1996年にマイロン・ポリコーブ博士とルードビッヒ・ファイネンデーゲン博士らが日々発生する活性酸素によるDNA損傷は自然放射線の1000万倍、日々少なくともヒト(大人も子供も)は200mSv照射レベルのDNA損傷が生じていると発表している。

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    チェルノブイリにしろ福島にしろ、もちろん1日に200mSv相当の放射線を浴びるような地域は存在しないが、人はどこに住もうが、生活空間に潜む活性酸素でこれだけのDNA損傷を受けているのである。活性酸素の発生源は酸素や紫外線、薬剤、農薬や食品添加物などの化学物資、排気ガス、ストレスといったものだ。まさか、放射能以上にこうした交絡因子のほうがDNAを傷つける力が強いとは誰も想像もできないであろう。

    DNA損傷による突然変異から生じるとされるガンやさまざまな疾病には、この活性酸素が深く関わっている。低線量でも身体的被害が出ているとする論文、さらにそこに居住する人々の訴えも、日々200mSv相当のDNA損傷をもたらす活性酸素の弊害というリスク因子を考慮に、今一度再検証しなければいけない。


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    『週刊新潮』「原発事故26年目、チェルノブイリを歩く」

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