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厚労省研究班調査、低出生体重児は糖尿病の可能性
要因は妊娠適齢期女性の「喫煙」や「低栄養」

日本では、80年代に入って、低出生体重児の出現率が増加、今やOECD加盟国の中でもトップといわれている。要因として妊娠適齢期女性の「喫煙」や「低栄養」が挙げられているが、低出生体重児が成人になると糖尿病になりやすいことが厚生労働省研究班調査で明らかになった。

低出生体重児の出現率、1975年以降増加傾向

体重が1.5kg未満の低体重児が成人になると3割近くが糖尿病になりやすい---。
先頃、厚生労働省研究班がそうした報告を行った。調査は1990年に体重1.5kg未満で生まれた平均年齢20.3歳、66人を対象にした。

日本では、80年代に入って、低出生体重児の出現率(出生時体重2.5kg未満)が増えている。人口動態統計によると、低出生体重児の出現率は1975年以降、増加傾向にあり、1975年は男児4.7%、女児5.5%だったが、2000年にはそれぞれ7.8%、9.5%へと増加している。

低出生体重児誕生の要因として、妊娠適齢期女性の「喫煙」や「低栄養による痩せ」が指摘されている。とくに若い女性の痩せ願望による無理なダイエットで、母体の妊娠前の栄養不良が低出生体重児出現のリスクファクターとなっている。

低出生体重児、生活習慣病に罹患しやすい(バーカー説)

低体重出生児は死亡リスクが高いばかりでなく、成人期における冠動脈疾患、高血圧、糖尿病といった生活習慣病に罹患しやすいとされている。 これについては、バーカー説(成人病胎児期発症説)がよく知られる。母子の健康状態や栄養状況が現代と比べて劣っていた1920〜30年代に生まれたヨーロッパ人を追跡調査した研究で、胎内及び早期乳児期の低栄養保育は、身体の組成や生理機能、代謝に生涯にわたって影響を及ぼすことが示唆された。

これによりバーカー説では、「子宮内環境で低栄養の赤ちゃんが育つことが成人病の原因となる。これに出生後、生活習慣でリスクファクターが加わると成人病が発症しやすくなる」としている。そのため、乳幼児期ばかりでなく、妊娠前の女性の栄養摂取が乳幼児の成人期における生活習慣病のリスク軽減の重要なカギとなる。

現在、日本の低出生体重児の出現率は9.1%、OECD加盟国中では日本がトップになっている。平均すると現在10人に1人の割合で低出生体重児が誕生していることになる。

糖尿病、ガンのリスクを高める

今回の厚生労働省研究班の報告で、低出生体重児の成人後の糖尿病リスクが指摘されたが、糖尿病はガン罹患のリスクも高めることが最近報告されている。5月15日付けの朝日新聞で、日本糖尿病学会と日本癌学会の研究で、糖尿病患者はガンになるリスクが1.2倍に高まることが分かったと報じている。

研究では、35歳以上の男性15万5千人、女性18万1千人を平均10年間追跡調査。調査期間中、男性約2万人、女性約1万3千人が、ガンになったが、この人達を糖尿病の人がガンになるリスクを糖尿病でない人と比べると、ガン全体で2割ほど高くなっていたという。
現在、日本における糖尿病患者は900万人、予備軍を含めると2千万人を超すといわれている。

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