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健康長寿に向けて医師が求めるサプリメント
統合医療で望まれる健康食品とは

2014年2月25日(火)、大正製薬9階ホールで、「平成25年度第1回機能性食品勉強会」が開催された。この中で、川嶋明氏(東京女子医科大学附属青山女性・自然医療研究所 自然医療部門准教授)が「健康長寿に向けて医師が求めるサプリメントについて」と題して講演。川嶋氏は統合医療を実践しているが、医療現場でどのようなサプリメントが求められているのか現状を報告した。

抗生物質で腸管の善玉菌がほぼ全滅する

そもそも病気には2つの反応がある。1つが「疼痛」と呼ばれる痛みの反応。もう1つが発熱や炎症といった免疫反応である。しかし、この免疫反応は回復に向かう途上であるため、それを抑える必要はない。

例えば、風邪を引くと多くの医者は薬を処方する。患者もそれを欲っする。しかし、咳止め、解熱剤、下痢止め、抗生物質などは使うべきではない。こうしたことはもはや常識だが、誰も疑問を持たないことが日本人の最大の問題と川嶋氏は警鐘を鳴らす。

抗生物質は、一度飲むと腸管の善玉菌がほぼ全滅する。すると免疫系が崩れ、風邪は悪化へと向かう。医師が抗生物質を処方するのは、患者がそれを欲しがる、あるいは訴えられたら困るからということがある。

風邪が悪化して肺炎になり、万が一命を落としたら医師は訴えられる。しかし風邪で抗生物質を処方し、副作用で下痢が生じたとしても訴えられることはない。医者が「念のため処方しておきます」というのは、患者のためではなく医者自身のためであると川嶋氏。

世界の7割の抗生物質を日本が使っている

世界の7割の抗生物質を日本が使っている。日本人の一人ひとりが、正しい知識で医療や薬と関わらないと医療費は破綻する。それが分かっていて何もしない日本人の国民性をなんとかしなければならないと川嶋氏はいう。

例えば、ある患者で、15年間降圧剤を処方されている人がいた。その薬を調べると、その患者にマッチした良い薬であったが、「実は15年間1度も飲んだことがないんです」と告白をしたという。

なぜ、担当医に「薬は不要です」と伝えないのかと尋ねると、「難しい先生だからいざという時に診てもらえなくなったら困る」と答えたという。 その患者と医者との間で、このようなやり取りがあった。「目の前に10円が落ちていたらどぶに捨てますか?」と担当医。「いいえ、拾うと思います」と患者。医者は「この薬は1つ10円以上しますよ」と。さらに追い打ちをかけるように、「そのうちの7円は私たち国民が負担しているんですよ」と。その言葉に患者は黙ってしまったという。

このように患者が使っていない薬が年間数千億円にものぼる。患者が自らの健康や人生を医師に丸投げし、医師は都合のいい治療法を押し付けている。こうした医療の在り方には限界がある。そのことに気がつき始めた医師が統合医療を実践しているという。

ただ、統合医療にも問題がある。最大の問題は偽物が存在しやすいという点、また人により必ずしも同じ効果が得られないという点。日本で統合医療は定義されておらず、教育機関も研究費用もほとんどないのが現状と川嶋氏。

世界で伝統的に行われてきた療法を推進させるべき

2004年にWHO(世界保健機構)は「代替医療のガイドライン」を定めている。以下のようなことである。

1.製品の有効性・安全性について消費者に十分な情報提供が行われていることを確認する。
2.医薬品の有害反応について消費者が報告する方法を設定する。
3.伝統医療と西洋医療の施術者の交流を促す。
4.マスメディアと協力して消費者教育を行う。
5.西洋医療以外でも適切な実証がなされている療法は保険を適用する。

しかしこれらはいずれも全く進展していない。世界各国で伝統的に行われてきた療法を日本の医療の現場でも積極的に取り入れ、統合医療として普及させるべきであると川嶋氏は主張する。

川嶋氏は統合医療を次のように定義して実践している。
「個人の年齢や性別、性格、生活環境、さらに個人がどう歩み、どう死んでいくかまで考え、西洋医学、補完・代替医療を問わず、あらゆる療法からその個人にあったものを見つけ、提供される受診側主導の医療」。

この観点から、川嶋氏は栄養指導やサプリメント指導を行っている。サプリメントについては、サプリメントツリーという考え方をベースにしているという。

安全性や有効性のエビデンスがしっかりしているサプリメントが望まれる

まず、ビタミンやミネラルなど、基本的な微量栄養素のサプリメントがあり、現代食で摂取が難しい微量栄養素についてはサプリメントという選択肢があることを患者に伝える。

次に、ヘルスサプリメントとして、プロバイオティクスや食物繊維、アミノ酸やプロテイン、黒酢などエビデンスや食経験の豊富なもの。さらにオプショナルサプリメントとして、イチョウ葉エキスやセントジョーンズワート、ノコギリヤシなどの有用性の高いものを紹介する。

しかし、サプリメントは一手段であり、サプリメント単独での治療はほぼない。患者からサプリメントや栄養指導以外の治療法の要望がある場合はそれを優先することも大切にしているという。

川嶋氏の病院ではどのような基準でサプリメントを採用しているのか、次のようにまとめた。 「まずはエビデンスがしっかりしているもの。安全性や有効性の基礎データが十分であると判断できるもの。価格が適切であるもの。成分表示や添加物表示が明示されているもの。採取場所や加工法などが明確なもの」。

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