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高血圧の減塩対策、10g/日から8g/日を目標に
ナトリウム表記×2.5が実際の塩分摂取量

2014年4月7日(月)、ヤクルトホールで、日本栄養士会主催の第35回健康づくり提唱のつどい「高血圧予防の健康な食事〜美味しい減塩食のすすめ」が開催された。4月1日より新たになる血圧測定のガイドラインなど、日々の高血圧対策などが説かれた。

日本栄養士会、塩分摂取量の目標を現在の10g/日から8g/日に

当日、土橋 卓也氏(社会医療法人製鉄記念八幡病院副院長・高血圧センター長)が「高血圧と上手に付き合う」と題して講演した。

世界では25歳以上の3人に1人が高血圧症を発症しており、そのほとんどがその症状に気づかないか放置している。そのため、適切な治療が行われず、毎年900万人が亡くなっているという。

日本における高血圧症人口は、厚労省の発表では、すでに平成18年時点で40〜70歳以上の男性60%、女性40%が高血圧と診断され、高血圧症有病者は3,970万人、正常高値血圧症は1,520万人、合わせて5,490万人と推計。現在もほぼ同様の割合となっている。

国は平成25年4月から10年間、健康寿命の延伸および生活の質の向上を実現することを目標にした「健康21(第二次)」の積極的な推進を図るとしているが、日本栄養士会でも食塩摂取量を現在の10g/日から8g/日へと目標設定し、減塩に取り組んでいるという。

4月1日よりガイドライン、1回の計測で2度計測し、平均値を採る

病院や検診で血圧を計測した場合、最大140mmHg、最小90mmHg以上が高血圧と診断される。最近は家庭血圧計が普及しているが、家庭の場合は入浴後、飲酒後、服薬後を除き、起床時、就寝前の1日2回を測定のタイミングとし、135/85mmHg以上が高血圧の基準となっている。

近年、家庭で血圧を測定する人が増えており、「図るたびに血圧が違う」という声も多いが、1回の計測で2度計測し平均値を採ることが、4月1日よりガイドラインで定められている。

高血圧対策については、塩分の摂取量と高血圧が関係することがよく知られている。ちなみに、食塩を摂取しないエスキモー人やマーシャル群島人には高血圧症がいないといわれている。

日本人の食塩摂取量は減少傾向にあるが、日本栄養士会では1日の塩分摂取量を10gから8gにまで下げることを目標としている。また、高血圧症の治療を行っている人は6g/1日までに減塩して欲しいとしている。

1日の総塩分摂取のうち20%が醤油

問題は自分が食べている食事にどれだけ食塩が含まれているのか分かりにくいという点だが、平均で1日の総塩分摂取のうち20%が醤油、40%が加工食品によるもので、これだけで60%を占めるという。

加工食品の場合、食品表示では塩分を「ナトリウム」と表記している。このナトリウム表記は、イコール食塩量というわけではない。表記されているナトリウムの数値に2.5を掛けたものが塩分量で、このことを知っている人はあまり多くないと土橋氏。

例えば、一般的なカップ麺には「ナトリウム2.0g」と記載されているが、実際の塩分量は、×2.5で約5gの食塩が含まれていることになる。栄養士会では消費者庁にこのナトリウム表記の是正を何年も訴えているが、いまだ実現の目途が立っていないという。

そのため、消費者がナトリウムではなく塩分表記されているものしか買わないという活動を行うようになれば、企業も動き、国の施策を待つより早いのではないかと土橋氏は提案する。

伝統的な和食は長寿に貢献してきたか 

また、日本栄養士会では、食塩摂取量の減少とともに、野菜摂取量も現状の282g/日から350g/日を目標としている。
中村 丁次氏(公益社団法人 日本栄養士会名誉会長)は、「日本人の長寿を支える健康な食事と和食の魅力」と題して講演。和食がユネスコに無形文化遺産登録され、世界中からヘルシーフードとして注目されているが、そもそも和食とは一体どのようなものか、その特徴について説いた。

和食は、一汁三菜を基本とし、栄養バランスの非常に優れた「食」とされている。しかしながら、その伝統的な和食を摂っていた時代、例えば江戸時代では脚気を始め各種の栄養欠乏症に悩まされ、今より短命であった。

つまり伝統的な和食が長寿に貢献してきたとは素直に認めがたい。現代の日本人の健康長寿を支えてきたのは、戦後の「日本食」ではなかったか、と中村氏。

また、日本人は東日本大震災を経験したことで、食の意識がワンランクアップしたと中村氏は指摘する。震災直後、世界各国から食糧を中心に支援物資が大量に届けられたが、山積みになったままムダになったものも少なくなかった。

健康を維持するためには「食の連続性」が不可欠である。つまり、食物の生産から分配、そして摂取による消化・吸収という連続性が適切に機能していること。それにより、適切な健康管理が可能になるということを学んだのではないかという。

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