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トランス脂肪酸、肥満・心臓病リスクで規制
昨年6月、米食品医薬品局(FDA)は食品への使用を禁止

2016年1月24日(日)、よみうりホールで、一般公開セミナー「食品の栄養・機能性表示を考える」(主催:国立健康・栄養研究所)が開催された。この中で、山添 康氏(内閣府食品安全委員会委員長代理)らが食品の機能性や安全性評価について講演した。

心臓に溜まりやすく、心疾患リスクが高まる

食品安全委員会は、7人の専門委員と12の専門調査会(現在218名の専門家が所属)から構成、食品のリスクの検討などを行っている。

食品の安全性では、食品添加物や遺伝子組み換え食品などが俎上にのぼるが、とくに今注目を集めているのがトランス脂肪酸やアクリルアミドの安全性。

肥満大国といわれる米国では、昨年6月、米食品医薬品局(FDA)がトランス脂肪酸は心臓疾患のリスクを高めるとし、食品への不使用を打ち出した。2018年6月より食品への添加が使用禁止となる。

トランス脂肪酸はなぜ問題なのか。
脂質は体内に多く留まるため、運動量が低下すると体組織に蓄積・定着し肥満の原因となる。

脂肪の中でも不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸の順で分解・代謝され、トランス脂肪酸はその後に回される。こうしたことから、トランス脂肪酸はとくに体内に残りやすい。

食品安全委員会では、総エネルギーの5%をトランス脂肪酸が占めるような食事を持続的に摂ると、心臓に脂肪酸が溜まりやすく、心疾患リスクが上がると考えているという。

日本人のトランス脂肪酸、ほぼ全世代層でWHOの推奨基準よりも1%低い

とはいえ、外食や加工食品に含まれているトランス脂肪酸の量を計ることは難しい。そのため、欧米では食品加工に用いるトランス脂肪酸の量を規制する方針を取っているという。

食品安全委員会では、2012年に日本人のトランス脂肪酸の健康への影響を評価している。日本人のトランス脂肪酸の総カロリー摂取に占める割合を調査したところ、ほぼ全世代層でWHOの推奨基準よりも1%低いという結果が出ているという。

アクリルアミド、加熱食品にふくまれる有害化学物質

また、食品安全委員会では、アクリルアミドの発がん性についても評価。アクリルアミドは加熱食品にふくまれる有害化学物質の一つで、発がん性が疑われるだけでなく、一度に大量摂取すると神経障害を引き起こすことも報告されているという。

しかし、炭水化物を高温で加熱するとアクリルアミドが生成される。また、アクリルアミドはポテトチップスや米菓子だけでなく、麦茶やほうじ茶からも検出されるため、完全に避けることはできない。そのため加工食品の摂取量に気をつけるなど、大量摂取をしないよう心がけるしかない。

この他、食肉加工品の摂取量と大腸がんの発症リスクには明確な関連性があるという疫学調査結果が報道(2015年10月)されているが、食品安全委員会としてはこの件については正式な評価はまだ行っていないという。

こうしたトランス脂肪酸、アクリルアミド、食肉加工品など、我々は非意図的に多種多様な不要成分を摂取しているが、これらの摂取を避けることができない以上、異物代謝系である肝臓や腎臓の機能を高めることも肝要という。

日頃から暴飲暴食を避ける、過食をさける、不要な薬物やタバコ、アルコールなどの摂取を控えるといったことが異物代謝系を大切にすることに繋がると山添氏はまとめた。


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