乳幼児期に発症した食物アレルギー、多くが成長とともに治癒
アレルギーを持つ乳幼児が増えているが、入園・入学などの新たな環境はアレルギー児の保護者にとって一層不安な時期となる。
アレルギー児の場合、入園・入学の前に知っておかなければならないことが2つある。1つ目は学校でのアレルギー疾患対策の基本となる「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン(以下、学校ガイドライン)」。
2つ目が主治医と保護者と学校の3者が情報共有するために使用する「学校生活管理指導表」である。アレルギー症状の中でも、とくに「食物アレルギー児の対応」については文部科学省が「学校ガイドライン」と「学校生活管理指導表」の活用を徹底するよう通知している。
食物アレルギーは、原因となる食品を摂ることで引き起こされるだけでなく、接触や吸引でも起きる。また、年齢によって起きやすさも異なる。
一般的にアレルギーは治りにくいと思われている。しかし、乳幼児期に発症した食物アレルギーの多くは、成長とともに治癒することが期待できる。
乳児期の食物アレルギーは5〜10%の割合だが、3歳くらいから徐々に減少し、5歳以降になると1.5〜3%に減少することも報告されている。
とはいえ、一旦治癒したあとに再発するというケースもあるため、定期的に食物アレルギーの経過を診る必要がある。また、年齢事に適切にケアをする必要がある、と古川氏。
即時型食物アレルギー、2時間以内に症状が現れる
全体としては食物アレルギーの有病率は増加傾向にあり、食物アレルギー症状が出たときは必要なケアを行わなければ命に関わることもあるため注意が必要であることに間違いはない。
食物アレルギーの中でも、アレルギーの原因となる食物を摂り2時間以内に症状が現れるのが「即時型食物アレルギー」である。その症状は多岐にわたる。
皮膚に出る場合は赤味や蕁麻疹、かゆみとなって現れる。目・口・鼻に出る場合は花粉症のような症状になる。呼吸器に出る場合は喉が締め付けられる感じがしたり、呼吸困難になったり、咳が止まらなくなることもある。
消化器に現れる場合は嘔吐や下痢、腹痛になる。また循環器系に現れる症状としては血圧低下、チアノーゼ、頻脈がある。また、全身ではぐったり、意識もうろう、失禁などの症状がある。
離乳食を遅らせてもアレルギーは予防できない
これらの症状のうち、全身の症状や呼吸器または消化器の症状がでる場合は「緊急性が高い症状」と判断でき、これら複数の臓器に重篤な症状が現れるのが「アナフィラキシー」と呼ばれるアレルギー症状である。
乳幼児はこうしたアレルギー症状を必ずしも上手に表現することができない。そのため保護者はより一層注意深く観察する必要がある。
食物アレルギーはそれぞれの年齢によって適切に対応することが求められる。例えば、離乳食のスタートを遅くするほうがアレルギー疾患の発症が予防できる、といわれていたが、現在の研究では離乳食を遅らせてもアレルギーは予防できないこともわかってる。
食物アレルギー疾患がなければ離乳食は生後5〜6ヶ月から通常通り進めることで舌の動き、嚥下の力を発達させることができるし、遅らせてもアレルギーの予防にならないのなら離乳食を確立させることのほうが大事。
また3〜4歳になったらそれまで「食べたことのない食材」を少しずつ減らしていくことも必要で、海老やピーナッツ、そばなども少しずつ食べ始めたほうがいい、と古川氏。
乳時期に「牛乳」や「卵」のアレルギーが認められた場合でも再審査をすることで、完全除去なのか、少しの摂取であれば問題ないのか、経過観察と状況把握をし続けることも大切と古川氏はまとめた。