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世界保健機構(WHO)、代替療法利用に関するガイドライン発行

西洋医療以外の有効性が明らかな医療、代替医療を求める動きが世界的に加速しているが、先頃、世界保健機構(WHO)は代替療法の規制が不十分な 点や安全でない使用について警告を発し、世界の保健機関に信頼できる情報を消費者へ発信するようガイドラインを発行した。一方では、先進諸国においては高騰する医療費に歯止めをかけるため、西洋医療と代替医療のコラボレーション(協力)による疾病の予防・改善に期待をかけざるを得ないという状況もある。

世界の保健機関へ向けて、代替医療の正しい利用を促す

有効性が立証され、副作用の少ない伝統伝承医療(TM:トラディショナル・メディスン)および補完代替医療(CAM:コンプリメンタリー&オルタナティブ・メディスン)を求める声が、世界的に高まっている。よく知られるTM/CAMとしては、漢方、ハーブ・サプリメントを用いた栄養療法、鍼灸、カイロプラクティック、アロマテラピー、心理療法などがある。WHOによると、こうしたTM/CAMは世界に100余りあるといわれる。

これまでTM/CAMについては、効果・効能の明確なエビデンス(根拠)や、客観性・再現性が不十分な点を正当派西洋医療サイドから指摘されてきた。とはいえ、逆に西洋医療の不備な点を補完する医療として、また日頃の予防医療としてのニーズも強く、90年代以降、インターネットでの情報開示なども手伝い、世界的にもその利用頻度が高くなっている。

しかし、その一方で、関連するトラブルも多くなっているとWHOでは指摘。WHOの伝統医療コーディネーターは「自然物質は元来安全なものではあるが、その適正な使用法についての知識が欠けている。多くの国々ではハーブ製品を管理する規制がなく、90カ国以上で市販されている」と述べている。

こうした状況に対し、グローバルレベルで保健・衛生を統括するWHOは、TM/CAMの危険性をできるだけ回避するため、TM/CAMの有効性および正しい使用法を消費者に理解させるために、医学界全体、関連業界、教育界など幅広い範囲を対象にガイドラインを発行した。

手軽さから、先進諸国でも65%がTM/CAMを利用

現在、TM/CAMは、経済力が低から中程度の国では、国民の最大80%が使用しており、また高い経済力を誇る国でも65%が利用しているともいわれる。

その理由として、通常療法に比べ比較的副作用が少ないこと、高額な費用が必要となる最先端技術医療が手に入らないなどがある。例えば、ハーブ・サプリメントを用いた栄養療法は手軽に行える代替療法として利用頻度が高いが、WHO Roll Back Malaria Programmeが1998年に行った調査によると、ガーナ、ナイジェリア、ザンビアなどの諸国では、子どもの高熱の処置に60%以上の家庭がハーブを使用しているという。

ハーブなどを用いた栄養療法は世界的にも利用頻度が高いだけに、その安全性・品質がしばしば問題となる。また、医薬品との相互作用の検証も医療現場からあがっている。エビデンスに基づくTM/CAMとしては、ハーブのセント・ジョンズ・ワート、ソー・パルメット(ノコギリヤシ)などが人気が高い。
また、他のTM/CAMについて言うと、National Institute of Health(NIH:米国立衛生研究所)が鍼療法について、通常治療に比べ副作用が少ないことを報告している。

ガイドラインでは、生活者がTM/CAMを使用する前に、1)その療法は症状の治療に適しているか。2)その療法は症状を予防、軽減、治癒するため有効性があるか。さもなければ、健康の改善に役立つか。3)その療法、あるいはハーブは資格のあるTM/CAM従事者、もしくは適切な技術を有する医療関係者から提供されたものか。4)その療法、あるいはハーブ製品は品質が保証されているか ---などのチェック行う必要があるとしている。

さらに、TM/CAM療法の情報・広告コントロールが必要で、情報の信頼性、倫理性を監督し、不正な宣伝コピーや扇情広告を排除する必要があるとしている。

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