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ビタミンEとセレンの併用、水銀の毒性低減に貢献(ラット実験)

日本人の長寿体質を作った素材として、米に大豆、そして魚が挙げられるが、魚食で懸念されているのが水銀の摂取。とくに妊婦の場合、魚に含まれるオメガ3系脂肪酸は胎児の認識力や視覚発達の成長・発達に欠かせないだけに、摂り方に留意を要する。Neurotoxicity and Teratology誌に掲載された記事によると、ラット実験で、Eとセレン(セレニウム)の併用が水銀毒性の低減に関与することが分かったという。

妊婦、魚食による水銀摂取懸念で、DHA入りミルクなどの必要性

魚はDHAやEPAといったオメガ3系脂肪酸を多く含み、躁鬱、精神分裂などの精神障害、心臓疾患の防止などに関与することがこれまでに報告されている。

米国では、「2005年版アメリカ人の栄養ガイドライン」で、1週間に8オンスの魚の摂食を薦めており、FDA(米食品医薬品局)でも魚の摂食が心臓病予防に有用であることを認めている。

心臓疾患の防止については、ハーバード大学の研究者らが行った調査で、40歳から84歳までの男性医師2万551人を対象に調べたところ、週に少なくとも1回魚を食べている者は心臓発作などの突然死の危険性が52%低下したという報告もある(Journal of the American Medical Association誌'98/1月号)。

また、オメガ3系脂肪酸については、胎児や新生児の成長・発達、特に認識力や視覚発達への重要な関連性が挙げられる。脳細胞の70%は胎児のうちに発達すると考えられており、胎児から生後18週くらいまでの期間にオメガ3系脂肪酸の供給が重要とされている。

オメガ3系脂肪酸は胎児の間は母体を通して、そして生後は母乳から得られる。オメガ3系脂肪酸であるDHA濃度が低いと視覚機能不全が見られることから、WHO(世界保健機構)でも人工栄養ミルクへのDHA添加を承認している。

こうしたことから、妊婦はオメガ3系脂肪酸の摂取が必要とされるが、一方で問題視されているのが、魚に含まれる水銀。特に妊婦は留意することが指摘されている。

厚生労働省(医薬食品局食品安全部基準審査課)の報告によると、日本の水銀の摂取は、魚介類によるものが全体の約85%を占めており、低濃度の水銀摂取等が胎児の神経発達に影響を与える可能性を懸念する報告もあるという。

最近の研究では、ビタミンEとセレンの併用は水銀の毒性の低減に貢献するという報告が、Neurotoxicity and Teratology最新号に掲載されている。
McGill Universityの研究者グループによるもので、メスのラット75匹を5グループにわけ、通常のエサに(1)メチル水銀、(2)メチル水銀+セレン、(3)メチル水銀+ビタミンE、(4)メチル水銀+ビタミンE+セレン、(5)何も入れない――をそれぞれ与えたところ、(4)のビタミンEとセレンの併用グループでは、水銀毒性の影響を軽減したことが分かったという。

この報告によると、ビタミンE+セレンが水銀の毒性軽減に関与することが報告されているが、とくにセレンについては、薬剤、アルコール、喫煙などで溜まる毒素や水銀などの重金属の解毒に有用であることがこれまでにも報告されている。
ただ、セレンの弊害としては、摂り過ぎると歯や爪のエナメル質の厚質化や脱毛、吐き気、疲労感、皮膚の不快感、ニンニクに似た口臭などを引き起こすことなども報告されている。


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