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問われる健康情報報道の信憑性、「健康食品」における適切な報道とは

1月27日、東京医科大学病院(東京都新宿区)で、シンポジウム「健康食品の安全性評価の方法論の現状と今後の展開」(主催:日本健康科学学会)が開催された。当日、健康食品の安全性基準、安全性評価の具体例など健康食品の現状と課題について講演が行なわれた。

TV健康情報番組で捏造データが発覚、問われる健康情報報道のあり方

先頃、TVの健康情報番組で、「納豆で減量」など捏造データの放映が発覚し、メディアにおける健康情報報道の信憑性が揺らぐ状況が生じた。
主催の日本健康科学学会では、「いわゆる健康食品の情報は、TV、雑誌等により提供されているが、科学的根拠、安全性等の情報が不十分。不適切な表示や摂取方法等により健康を損なう恐れもある」と見解を示した。

当日は、「健康食品の現状と課題および評価方法」、「健康食品の安全性の基準に関する提言」、「健康食品の安全性評価の具体例--コエンザイムQ10の場合--」、「諸外国における栄養評価と健康強調表示」、「東京都における健康食品の安全確保に向けた取り組み」などの講演が行なわれた。

健康食品の安全性評価については、現在、大豆イソフラボンとともに、コエンザイムQ10の1日の摂取上限量が議論されているが、(財)日本健康・栄養食品協会の担当者が、「コエンザイムQ10の1日摂取目安量の上限を300mg」とする見解をあらためて示した。健康食品としてのコエンザイムQ10の摂取上限量については、医薬品として承認されているコエンザイムQ10剤の承認用量(30mg/日)を上回ることが指摘されていた。

「健康食品」における適切な報道とは

東京都では、消費者向けパンフレット「健康食品ウソ?ホント?」を昨年12月に東京都福祉保健局で作成。HPによると、12月20日より都内保健所、消費者センターの他、都内美容所(約5,300施設)、公衆浴場(約1,100施設)、献血ルーム(13施設)、公立図書館(約400施設)、フィットネスクラブ(約170施設)に閲覧用資料として配布しているという。

20頁の小冊子で、「健康食品を正しく理解する」、「健康食品を利用する前に」、「特定保健用食品・栄養機能食品について」、「契約にかかわるトラブルは?」などの項目を掲げている。

「健康食品を正しく理解する」では、1)健康食品は生活習慣病やがんなどの病気の治療に効果がある、2)野菜をまったく食べなくても、健康食品で手軽に栄養補給して健康になれる、といった問いに「×」「ウソ」表記で、イラストをまじえ、簡単な説明を加えている。つまり、全ての健康食品にそのような事例はないと、完全否定している。
また、「健康食品を利用している方は」では、1)治療を受けている人が健康食品を利用すると、病気が悪化したり、治療薬が効かなくなることがある、という問いに「○」「ホント」と表記している。

パンフにある「健康食品」とは、全ての「健康食品(サプリメント含む)」を指すのかどうか。いわゆる「健康食品」と称されるものを、このようにひとくくりにしてきめつける報道のあり方ははたしてどうなのか、疑問が残る。「×」「ウソ」表記で一括否定するからには、全ての「健康食品」がそうしたものであるという根拠を明確に示すべきであろうし、そうでなければ、断定調を避け、具体的に「○○社製の○○製品については〜」と示すべきであろう。こうした不適切な報道は、国民をミスリードしかねない。

先述の「いわゆる健康食品の情報は〜科学的根拠、安全性等の情報が不十分」の指摘にしても、健康食品に関する表現には薬事法の縛りがあり、製品の販売が絡めば、情報が不十分になるのも当然で、それではと、効果・効能に関する詳細なデータをつまびらかにすれば、今度は薬事法、健康増進法に抵触するといさめられる。

効果・効能を詳細に正確に表現したくともできない。一方で、TVや行政までもが不正確な情報を垂れ流す。こうした中で、健食業界は今後ますます増える高齢者や生活習慣病予備軍に対し、予防医療の役割を担っていかなければならない。健食業界にあって真摯に製品開発に取組む企業は常にジレンマをかかえ、困惑の極みに立たされている。

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