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魚に含まれるω-3系脂肪酸、アルツハイマー症予防に有用
脳へのアミロイドβ蛋白質の凝集が低下

Journal of Neuroscience誌4月18日号で、魚に含まれるω-3系脂肪酸がアルツハイマー症の予防に有用であることを報じている。アルツハイマー症を誘発させたマウスの実験で、ω-3系脂肪酸を添加したエサを与えたところ、アルツハイマー症の要因として有力視されているアミロイドβ蛋白質の脳への凝集が低いことが分かったという。

マウス実験で、アミロイドβ蛋白質の凝集抑制が判明

超高齢化社会の到来とともにアルツハイマー症の増加が懸念されている。現在、症状改善の決定打が見出せないものの、発症要因としてはアミロイドβ蛋白質が有力視されている。

脳の神経細胞で作られる蛋白質(アミロイド前駆体蛋白質)は蛋白質分解酵素で切断され、アミロイドβ蛋白質となる。この物質は、加齢とともに脳内に蓄積され、脳のシミにも例えられるが、毒性が強く、神経細胞にダメージを与え、アルツハイマー病を発症させるといわれている。この物質の凝集抑制に、魚に含まれるω-3系脂肪酸が関与していることが分った。

Journal of Neuroscience誌によると、University of Californiaアーバイン校研究者グループが、アルツハイマー症を誘発させたマウスを3グループにわけ、(1)一般的な食事(ω-3系脂肪酸が少なく、ω-6系脂肪酸が多い)、(2)ω-3系脂肪酸のみ添加、(3)ω-3系脂肪酸+ω-6系脂肪酸を添加、でそれぞれに9ヶ月間与えたところ、(2)は他に比べ、アミロイドβ蛋白質の凝集が低かったことが分かったという。
また、アミロイドβ蛋白質の生成に関与する酵素のレベルも低かったという。

ω-3系脂肪酸はサケ、マグロ、ニシン、タラ、サバなど寒冷海域の魚に多く含まれる必須脂肪酸で、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(イコサペンタエン酸)などがある。

ω-3系脂肪酸が知力を高め、脳機能の健全化に貢献するという研究報告は数多い。脳細胞の発達などにおいて、胎児から生後18週くらいまでの期間にω-3系脂肪酸が必要とされ、胎児の間は母体から、生後も母乳を通して補給される。

この他、アルツハイマー症に関する最近の研究報告では、果物・野菜ジュースが予防に有用であることが、The American Journal of Medicine誌06/9号で報じられている。
Vanderbilt University Medical Center研究者グループが、認知症の徴候がないシアトル在住の日系アメリカ人1,836人(平均年齢72歳)を対象に、果物・野菜ジュースの摂取状況を調べ、認知力テストを2年毎、計10年行ったところ、ジュースを週に3回以上飲むグループは1回のグループに比べ、アルツハイマー病発症のリスクが76%低いことが分かったという。

他にも、ザクロジュースがアルツハイマー病予防に有用であることが、Neurobiology of Disease誌06/10号で報じられている。
Loma Linda University研究者グループが、アルツハイマー症を発症するよう操作したマウスに普通の水か、またはザクロジュース(1:160、1:80に希釈)を与え、認知力を測るため水中迷路テストを行ったところ、ザクログループでは約35%早く迷路を認識、直線で泳いだ(平均3,750cm短く)ことが分かったという。


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