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キャベツなどの緑葉色野菜、肺がん予防に有用性
自然のベータカロチン、肺がん促進の危険性ナシ

緑葉色野菜の摂取は肺がん予防に有用であることが、Nutrition誌08/3月号に掲載されている。Galician Public Foundation for Health Emergencies研究者グループが、被験者617人に、食品頻度調査(FFQ)を実施した。過去に緑黄色野菜に含まれるカロチノイド色素のベータカロチンが肺がんを促進すると槍玉にあげられたこともあったが。

ベータカロチン、「肺がん促進」説とは

記事によると、被験者617人(肺がん患者295人、健康体322人)に、食品頻度調査(FFQ)を行ったところ、緑葉色野菜を1日最低1回摂食するグループは1週間に5回未満のグループに比べ、肺がんに罹るリスクが5%低いことが分かったという。
ちなみに、多量に摂ると予防効果が大きいのは、じゃがいも、キャベツ、かぶら菜、レタス。予防効果は見られるが、それほど大きなものではないのはトマト、インゲン。果物では大きな影響は見られなかったという。

米国では、'90年代に入って、がん撲滅を目指して、野菜・果物の機能性研究が盛んに行われる。キャベツやブロッコリーなどのアブラナ科(十字架)野菜のがん予防の有用性も「デザイナーフーズ」プロジェクトで明らかにされる。
また、米国立がん研究所を中心に、低脂肪・高食物繊維食を食習慣に定着させるために、野菜・果物を1日に5皿分以上摂ることを目指す「5 A DAY(ファイブ・ア・デイ)」運動を展開する。

そうした中、緑葉色野菜に含まれるカロチノイド色素、ベータカロチンの栄養介入試験が行われるが、中国リンシャン地区で行われた試験では、ベータカロチン、ビタミンE、セレンサプリメントの投与で胃がんの予防効果が報告された。
続くフィンランドの試験でも、有効性が期待されたが、逆に、肺がんを促進することが判明し、「ベータカロチン肺がん促進説」がメディアで喧伝された。

その後の試験も、肺がん促進説を裏付けるものとなった。1996年に発表された米国のBeta-Carotene and Retinol Efficacy Trial(CARET)研究では、喫煙者あるいは以前タバコを吸っていた被験者および職場環境にアスベストがある労働者18,000人以上を対象に、半数に偽薬を、残り半数に合成ベータカロチン30mgとビタミンA(25000IU)を与えたところ、ビタミン投与グループは偽薬グループに比べ、肺がん罹患率が28%、死亡率が17%も高くなるという結果が出た。
喫煙とベータカロチン(合成)との組み合わせは、逆に肺がんを促進しかねないとの結論に至り、試験は満了前で中止となった。

CARET研究で用いられたのは合成ベータカロチンで、「煙草の煙に含まれる発がん性物質との相互作用を行う酵素の生成を合成ベータカロチンが高めている」との指摘がなされた。

さらに、その後の研究では、ベータカロチンに限らず、ビタミンCやEといった抗酸化ビタミンについても、喫煙との相性が悪く、死亡率を高めるという研究報告も出ている。

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ベータカロチン、心臓発作の危険性を低下

ところで上記の栄養素介入試験に用いられたのはいずれも合成のベータカロチンだが、専門家の一致する見解は、「自然な食材からのベータカロチン摂取は推奨されるものであり、緑黄色野菜ががん予防に有効なのはベータカロチン単体の作用によるものではなく、野菜に含まれるさまざまな酵素との複合作用によるもの」というもの。

自然の食材に含まれるベータカロチンについては肺がんを起こす危険性はないという研究報告もある(Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention'04/1月号)。 国際研究チームが、北米およびヨーロッパで行われた総計399,765人の研究データを分析。
7〜16年間の調査で3,155件の肺がんが診断されたが、自然の食材からのベータカロチン摂取では肺がんの危険性となんら関連性がなく、ルテイン、ゼアキサンチン、リコペンなどのカロチノイドについても危険性と関連がないことが判ったという。

ベータカロチンの有用性については他にも報告されている。
American Journal of Clinical Nutrition誌'99/2月号によると、オランダの研究者グループが、55歳から95歳までのドイツ人4千802人の食生活と病歴を調べたところ、ベータカロチンを多く摂る食生活を送った被験者は低摂取の被験者と比べ、心臓発作の危険性が45%低いことが分かったという。


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