ある日当然、ろれつが回らなくなり・・・
ある日突然、ろれつが回らなくなり、知り合いの顔を見ても誰か思い出せなくなる。判断力や認識力が低下してくる。手足の自由がきかなくなる。心臓に激しい痛みを感じるようになる。
物言わぬ病気。「動脈硬化」が進行した結果の症状だ。
現在、日本人の死亡原因で一番多いのががん。次いで心疾患、脳血管疾患となっているが、この2つは、動脈硬化が原因で起きる。
動脈硬化の恐さは、「極めて静かに進行し、何の症状もない。ある日、突然血管が詰まって一気に臓器障害を起こす」(山田教授)ことだ。
60歳以降の病気と思われていたが・・・
動脈硬化は、重篤な疾患を招くまで、自覚症状がない。
なぜか---。
「私たちが食事から摂っている栄養成分は全て血管を通して全身に送り込まれる。血液の流れは、1分間に心臓から送
り出す血液は5から6リットル。50秒から60秒で血液が全身を巡り、また心臓から送り出される」(板倉教授)。
ところが、「知らず知らずのうちに動脈硬化が進んで、血管の壁が厚くなり、内腔が狭まっても、血管にはほぼ100%近い必要な血液が送り込まれる。そのため、私達は不自由さを感じない」(同)。
つまり、動脈硬化が進んでも自覚症状がない---。
だが、ある日突然、急激なストレスや喫煙などが加わると、脳梗塞、動脈瘤破裂といった動脈硬化性疾患が起きる。これは、「60歳以降、70歳、80歳の年寄りの病気と思っていたが、実はたまたま歳をとってから現れたということで、病気の始まりはすでに20歳代から始まっている」(同)。
この10年間に、30〜40歳代の高コレステロール血症が増加
ところで、動脈硬化は血管内のコレステロールの堆積と密接に関係している。このコレステロール値が、この10年間、とくに男性にかぎって増えている。
この6月に、厚生労働省が10年ごとに行っている循環器疾患基礎調査(昨年11月、全国5千世帯30歳以上の8,369人を対象)を発表したが、これによると男性の高コレステロール血症罹患は、この10年間に50〜70歳代は減っているものの、30〜40歳代は逆に増えている。
これに関連して、田中氏は次のように指摘する。「日本はこの50年間、食生活が大変ぜいたくになった。寿命も延びているが、一方で生活習慣病が増えている。昔、貧しい食生活の頃は日本人は長生きできなかったが、長生きできるようになると同時にコレステロールもだんだん高くなってきている。今や米国と同じくらいのレベルになっている」。また、日本人は生活習慣病になりやすい体質を持っているともいう。
ただし、コレステロールが全て「悪」というわけではない。「コレステロールはこれまで、悪者扱いされてきたが、その後、必ずしも悪者ではないことが判ってきた。血管に溜まるのは一部のLDL(悪玉)コレステロールで、むしろHDL(善玉)コレステロールは多いほうがいい、少なすぎてもダメ。すなわちコレステロール全体をみると少なすぎてもよくない、ある程度なければいけないということが明らかになってきた」(板倉教授)。
コレステロール値、「高さ」以上にLDL(悪玉)コレステロールの酸化が問題
現在の日本人のコレステロール値の基準値は、97年に設定されたものだが、高コレステロール血症については、総コレステロール値が220mg、200〜220mgの間を要注意とされている。これに対し、8日に開かれた「第33回日本動脈硬化学会総会」では、全国5万人の患者を対象にした6年間の追跡調査に基づき、総コレステロール値を220mgから240mgに引き上げるという緩和案が提示された。また、LDL(悪玉)コレステロールについても、従来120〜140mgを要注意としていたが、これを160mgに引き上げた。
これに関して板倉氏は次のようにいう。