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ビフィズス菌・オリゴ糖が0-157対策に有効

'97/7月13日、徳間ホール(東京都港区)で腸内細菌研究の第一人者として知られる光岡知足氏(東京大学名誉教授)が、「0-157の対策」について講演した。その中で、氏は各国の0-157の発生経緯について語るとともに、対応策としてビフィズス菌などの腸内有用菌の積極的な摂取を心がけるよう語った。

腸内大腸菌の一つが突然変異

一昨年の夏、日本中を震え上がらせた0-157。悪夢は今だに続いている。この際限のない悪夢、1975年に米国ペンシルバニアの50歳の女性が急性の血清の下痢を起こした。それが始まりだった。

それがなぜ、今世界中にはびこり始めたのか。「もともと腹内にいる大腸菌は病原性がゼロというわけではない。腸内大腸菌の一つである0-157は毒素を作る能力を突然身につけてしまった」と光岡氏。またたく間に広がりをみせてしまったというわけだ。1982年2月には米国オレゴン州とミシガン州で異常な下痢症の流行があった。

発症した40数名の約7割が血液性の下痢を起こした。発熱はなかった。その時、原因食として言われたのがハンバーガー。牛のひき肉が問題視された。 だが、汚染源は牛のひき肉ばかりではなかった。その後、飲料水からも0−157禍はもたらされた。
日本では1984年に東京都内の小学生が0-157に発症した。その後、1990年10月に埼玉県の幼稚園で井戸水による集団発生があった。この時、園児182人中の罹患率は81.9%、20%は罹らなかった。なぜ罹らなかったか。

腸内細菌叢を整え、免疫力を高めることが先決

その前に、氏は0-157の感染経路と対策について述べた。日本の0-157の感染状況を見るとカイワレ犯人説が定着してしまったかのようだが、氏は「感染原としては牛肉が多い。0-157は牛の腸内に常在しており、牛をと殺し、腸を切ったりした時に肉が汚染される。特にレバーなどは問題」という。カイワレやサラダからの感染はむしろ二次感染の疑いが濃い。

厚生省を始め、感染源の特定を急いでいるが、身体に菌が入ってきてもそれを抑えてしまうような免疫力を身体につけることが大切。そのために、まず腸内細菌叢を整えることが先決という。「これが健全だと0-157が入ってきても0-157を棲まわせない」(同氏)。また、0-157の特異な症状で下痢症状が見られるが、氏は下痢止め薬キノホルムで過去にスモン病を招いたことを引き合いに出し、「0-157で下痢を起こした時は、下痢止めや抗生物質などは使わないほうがいい。0-157が腸内で死滅・分解し、毒素がばらまかれてしまう。下痢を止めようとせず、下痢でまず全部出すことが大事。それから治療すべきです」と警告した。

また感染防止策として、1)衛生管理、2)肉は低温保存する。肉の生食を避ける。3)暴飲暴食を止める、など挙げた。暴飲暴食をすると、胃酸が薄まる。普通胃酸で0-157は死滅するという。

0-157感染を免れた児童、腸内の善玉菌保有率が高い可能性

それでは、なぜ埼玉県の幼稚園児の2割が感染を免れたのか。あるいは一昨年、堺市で罹患しなかった子供たちがいたのか。これを、「腸内のビフィズス菌による影響ではなかったのか」と、氏は指摘した。腸内には100種類、100兆個のバクテリアがいて、善玉の悪玉に分かれており、そのバランスの上で健康状態が保たれる。ビフィズス菌は善玉菌の代表格で腸内の有害物質を体外に排出し、免疫力を高めることが知られている。

堺市で0-157の罹患者と非罹患者との比較アンケートを行ったところ、罹患者は共通して、下痢も便秘もよくするという結果が出た。一方非罹患者は便秘だけ、下痢だけというものであった。「どちらもよく罹るというのは腸内細菌が非常に不安定だといえます。不安定ということはビフィズス菌が少ないということです」(同氏)。そのため、ビフィズス菌やビフィズス菌を増やすオリゴ糖の積極的な摂取が0-157対策として効果的であるとした。

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