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「環境ホルモン」は67種だけではなかった。6万種徹底解明へ


6月7日、国民生活センターで井口泰泉教授(横浜市立大学理学部機能科学科)を迎え、講座「命の存続をおびやかす環境ホルモン」(主催:家庭栄養研究会)が開催された。その中で、井口氏は「現在リスト化されている67種の化学物質以外にも「環境ホルモン」は存在する」ことを示唆。19日には、米環境保護局(EPA)も6万種の化学物質を分析する必要があると発表したが、全て洗い出し、特定するまでに5年ほどの年月を要するという。果して、生殖機能に障害をもたらす化学物質の全容が明らかになるのは一体いつなのか。一刻も早い解明が待たれる。

現在67種といわれる「環境ホルモン」は論文に出ていたものを使用、どれほどあるかは誰にもわからない。

連日、マスコミ報道で繰り返されるダイオキシン毒性。発がんのリスクもさることながら、「環境ホルモン」としての影響も懸念されるが、どの程度なのかは不明なまま。この点、井口氏は講演の中で、「ダイオキシンが今騒がれているが、作用機構は未だわかっていない。調べる方法がない」と述べた。 また現在「環境ホルモン」としてリスト化されている化学物質67種についても次のように語った。
「現在環境ホルモンとして挙げられている67〜70の化学物質は研究を行なった暁に作ったリストではない。たまたま論文に出ていたものを使っている。我々の身近には5万から10万の化学物質がある。全部調査した結果、67種しかないのであればそれをターゲットにすればいいが、それが誰にもわからない。米国で1万5千種の化学物質にホルモン作用があるのかないのか調べようとしている」。

米環境保護局(EPA)で、まず1万5千種の化学物質を分析

こうした井口氏の指摘を裏付けるかのような記事が6月20日付けの毎日新聞に掲載された。記事によると、米国では、「環境ホルモン」作用のある化学物質の洗い出しに今夏より入る方針を米環境保護局(EPA)の諮問委員会でまとめたという。

調査については、まず生産量の多い1万5千種の分析から入り、最終的には6万種の割り出しを行うが、「環境ホルモン」様の化学物質が全て特定されるのは2003年以降になるという。 また6月7日の講演で、井口氏は「環境ホルモン」ビスフェノールAの溶出が疑われている学校給食器の問題にも触れ、「代わりのものにしてもそれが安全かどうか確かめなければならない。フロンにしても代替フロンが果たして安全だったかということがある。だからいたちごっこのようなもの。どこを基準に考えたらいいのか」と述べた。

「環境ホルモン」の生殖機能への影響は何度もマスコミで繰り返し論じられてきた。しかしながら、これまで言われてきた67種の化学物質というのは氷山の一角で、全体像には及んでいなかったということだ。文明の進歩とともに生み出されてきた化学物質。顕在化してきたと文明のひずみと、いよいよ人類の存亡をかけ、本格的に向き合わなければならなくなった。

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