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【 ハーブ・サプリメントのラベル表示、安全性へ監視強化〜米国食品医薬品局(FDA)の役割 】

米国民の衛生、健康を統括する代表的政府機関といえば食品医薬品局(FDA)。 その使命として挙げられるのが、食品や医薬品の臨床研究を迅速かつ効率的に 分析し、適当な処置を講じること。また、食品の安全、衛生を図るため、適切 なラベル表示を指導することで、公衆衛生を確保することなどである。90年代 後半、DSHEA(栄養補助食品健康教育法)によるダイエタリーサプリメント (栄養補助食品)の規制緩和や代替医療ブームで、米国栄養補助食品市場は 毎年2ケタ台の拡大を辿るが、一方で粗製濫造品に対するFDAの監視強化を求め る声も消費者の間で挙がっていた。最近では、ダイエット素材エフェドラの使用 でメジャーリーガーが死亡したことにより、サプリメント製品の安全性・ラベル 表示でさらに監視強化が望まれている。FDAの役割と最近の動向など報告する。

1992年の新法で認可製品が一気に40%アップ

FDAでは科学者、研究者が医薬品、食品などの基準を設定し、条例により、 規制している。市場に出される新製品は全て、FDAの厳正な審査を受けなけれ ばならない。そのため、米国民はFDAの食品や医薬品の監視体制の下、健康的 で安全な生活を享受できる。

1992年、医薬品の処方箋に関する新たな法律、Prescription Drug User Fee Actが成立するまで、スタッフと資金不足に悩まされていたFDAでは、新製品 の認可までに平均で30ヶ月を要していた。同法成立後は、審査期間が短縮され 早いものでは6ヶ月で認可が受けられるようになった。これにより、市場に出回 る新製品の数は年間で40%アップしたといわれている。

食品ではラベル表示、食品の安全性の監視が管轄

FDAの管轄下にあって監視を受ける分野は、
(1)バイオロジック(製品、献血用血液、食品基準設定のための研究や試験方法の改善、移植用組織など)
(2)コスメチック(安全性、ラベル表示)
(3)医薬品(製品認可、市販薬および処方箋薬のラベル表示、医薬品製造基準、ワクチン)
(4)水(水道水は環境保護局の管轄、FDAは市販のボトル水を監視する)。 (5)食品(ラベル表示、食品の安全性)
(6)医療機器(新製品認可、製造基準、機器の故障や副作用報告の追調査)
(7)放射線を発する電気製品(電子レンジやTV、無線機などの放射線安全基準、レントゲン機器、超音波治療機器など)
(8)動物用製品。

一方、FDAの担当ではないジャンルは、
(1)広告(米取引委員会/FTCが、処方箋薬と医療機器を除いた製品の広告を 規制する)
(2)アルコール(アルコール、タバコ、火器局が担当)。

その他に、薬物中毒、健康保険、肉類(米農務省の管轄。FDAは鹿、ダチョウ、 蛇を担当)、殺虫剤(FDAと環境保護局が協同で規制)、レストラン・食料品店 などがある。

DSHEA成立以降、食品としての位置付けでダイエタリーサプリメントが広く流通

米国民の健康を見守るというFDAの使命から、微妙なスタンスをFDA自身が取ら ざるを得なくなったものがダイエタリーサプリメント。予防医学への関心が 高まり、ビタミンやミネラル、ハーブ製品の位置付けを明確にさせた法律、 栄養補助食品教育法(DSHEA)が1994年に成立すると、以後、米国民はこれまで よりずっと自由に多くのビタミンやハーブ製品を購入できるようになった。

DSHEA施行以後、ビタミン・ミネラル、ハーブなどは食品としての位置付けで、 製造元は新製品を上市する際、新製品は安全であるということを裏付けるものを 最低75日前にFDAに提出しなければいけないが、「ラベル表示や宣伝文句に治療 や治癒の言葉を使わない、特定の疾患への効能をうたわない」などの条件の下、 医薬品や食品添加物に課される厳しい審査を受けることなく市場に出回るように なる。

この安全という意味は、製品ラベルに記載されている説明通りに使用すれば、 重篤な疾患や障害を生じないということである。そして、いったん販売された 後は、製品に問題が生じた場合、今度はFDAが製品の危険性を研究によって裏付 けなければならなくなった。

一例として、今ダイエット関連で問題になっているエフェドラ製品が挙げられる。 死亡事故を含む傷害報告は増加しているが、FDAはその危険性を研究によって証明 しなければならない。

ダイエタリーサプリメント製品のラベル表示を規制

とはいえ、政府もダイエタリーサプリメントを野放しにしているわけではない。 1997年にはダイエタリーサプリメントの製造基準としてのGMPの設置権限をFDA に与えている。

また、FDAの権限としてあるのがダイエタリーサプリメント製品のラベル表示の 規制。記載が必要とされる項目については、製品のアイデンティティ(例えば、 ジンセンなど)、内容量(60カプセル入りなど)、“この記載はFDAの評価を受 けるものではありません。本製品はいかなる疾患の診断、治療、予防を意図した ものではありません”といった記載、使用法(1日1回1カプセルなど)、製造・ 発売元の社名、住所など。

また、DSHEAでは1999年、成分表の記載も義務付けている。広告を担当するFTC とともにFDAが監視を強化しているのが、パッケージなどに記載される健康関連 の強調表示。

ダイエタリーサプリメントの製造元に許可されている表示、栄養成分の内容量、 疾患に関するもの、栄養素のサポートなどがある。

例えば、カルシウムの栄養成分内容量の場合、1回分に最低200mg配合されている なら、“カルシウム多め”などと記載できる。疾患関連では、現在研究によって 裏付けができている有効性に限って認められる。

例えば、ビタミンの葉酸は、適切な量が配合されている場合、“神経管欠損児の 出産確率を低下する”と記載できる。また、“カルシウムは強い骨を作る”、 “抗酸化剤は細胞を無傷な状態に維持する”などの構造機能的記載も認められて いる。

副作用を挙げず利点ばかりを述べることは違法

しかし、これ以外、特定の疾患名やその症状に対する製品の影響、治療の代用、 “マジカル、ミラクル・キュア(治療)”といった言葉の記載など、また、 副作用を挙げず利点ばかりを述べるなども違法とみなされる。

これまでに、ラベル表示の違法をめぐっては、サメの軟骨製品に不適切な宣伝 文句をつけて売り出したLane Labs-USA社に対し、FDAおよびFTCは1997年同社 に対し警告を発している。しかし、その後も同社は撤回せず、1999年司法省が 訴追に乗り出し、ようやく和解に応じることとなる。

エフェドラ訴訟で2社が高額の和解金

ダイエタリーサプリメントについては、ラベル表示の違法や製品自体の安全性に 関して現在様々な問題が噴出している。その代表格が前述したエフェドラ関連 製品。同製品に関しては、司法省がMetabolifeに対し刑事訴追を起こすため捜査 に着手している。

FDAでは、1997年ごろから同社エフェドラ製品での副作用報告の提出を求めて きたが、同社はこれまで全てそれを拒否している。7月24日付のAP通信では、 エフェドラ製品対策の選択肢として販売禁止も視野に入れているというFDAコミ ッショナーの話を伝えた。

2日間にわたるヒアリングが開かれ、議員らは研究者、医療関係者、エフェドラ 製品で死亡事故を起こした被害者の親、さらに最近、エフェドラ製品使用で メジャーリーガーが死亡したが、野球選手組合の代表者などから事情を聴取した。 選手組合は、政府が販売禁止などの措置をとらない限り、選手の使用を認めると の見解を明らかにしている。

ちなみに、エフェドラ配合のダイエタリーサプリメントを販売していた会社2社 は、購買客に対し37万ドルを返還することで合意している。

アリゾナ州に本拠地を置くHealth Laboratories of North America社は、 ダイエット用サプリメント製品2品目に対し「8週間で安全に70ポンドやせる」 などと宣伝を流していた。

また、USA Pharmacal Sales社も、エフェドラを配合 したダイエット用および男性の性機能回復用サプリメントをダイレクトメールや 新聞にて宣伝、販売していた。米連邦取引委員会(FTC)は両社への訴訟を進め ていたが、Health Laboratories社は19万5千ドル、USA Pharmacal社は17万 5千ドルをFTCに支払うことを条件で和解に応じている。

ハーブでは、コンフリー、ロベリアなど注意喚起

ところで、エフェドラ関連製品以外に、FDAがこれまで消費者や業者へ注意を 発したハーブ、サプリメント製品は数々ある。

以下がその例――
チャパラル(肝臓疾患)、コンフリー(肝臓への血流障害)、ニガクサ(肝臓疾患)、 ロベリア(呼吸器系障害、血圧低下、心拍上昇)、ウィローバーク(アレルギー反応) など。

また、こうしたハーブ・サプリメント以外に精力剤などにもFDAは使用の際の注意を 喚起している。最近では、一般消費者に対して6種類の“性活力剤”として販売されて いるダイエタリーサプリメントの購入、使用をやめるよう警告を発令している。

FDAが警告している6種類は、Sigra、Stamina Rx、Stamina Rx for Women、Y-Y、 Spontane ES、Uroprin。インターネット上の広告では、オールナチュラルとして販売 しているが、これらには、Eli Lily社が販売する処方箋薬Cialisに含まれる tadalafilが入っているとしている。

Cialisは性的不能を治療する薬剤であり、ヨー ロッパでは販売が認可されているが、FDAは認めていない。心臓病患者でニトログリ セリンなどの薬剤治療を受けている場合、これらのダイエタリーサプリメントを併用 すると危険な副作用を引き起こす恐れがあると警告している。

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