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【 医療界で急がれる、薬剤とサプリメントの相互作用の検証 】

米国では、「健康と持続可能な社会に配慮したライフスタイル」を目指す「LOHAS (ロハス)」志向の消費者が増えている。エネルギー、医療、食品、思想といった 人の生存に関わる領域の健全化を目指すもので、アメリカ人の約30%にあたる6300 万人がロハス消費者といわれる。ロハス市場の全体規模は2270億ドルを超え、うち 健康関連商材(自然食品やオーガニック商品、栄養補助食品、ナチュラルパー ソナルケア商品など)はおよそ300億ドル市場といわれる。ロハス志向の消費者に 最も身近なサプリメントについて懸念されているのが薬剤と併用した際の相互作用。 不十分で未解決な領域であるため、今後の検証が望まれている。

外科手術の際、使用すると危険なハーブ

今年に入ってすぐ、USC School of Pharmacy研究グループが、外科手術の前に ハーブサプリメントを使用することは危険であると指摘した。 一部のサプリメントは薬剤と相互作用を起こし、多量出血や呼吸困難など危険な 症状を併発する恐れがあるという。

具体的に、ガーリックやギンコ(イチョウ葉)、ジンセンなどは手術前に飲むと、 深刻な出血を起こす危険性があると指摘している。また、ヴァレリアン、カバは 麻酔剤と相互作用を起こし、呼吸に問題が生じる恐れがあるという。

手術前に、こうした一部ハーブの使用によるリスクが懸念されている。 では、がん治療などの際、ハーブサプリメントを併用することで何か問題は生じて いないだろうか---。

American Journal of Clinical Nutrition'04/6月号によると、ニューヨークの研究 グループが、子供の急性白血病患者103人を対象に抗酸化ビタミンと化学療法の 副作用を調査した。

6ヶ月の期間中、被験者はビタミンE、総カロチノイド、ベータ カロチン、ビタミンAをそれぞれ、1日の推薦摂取量の66%、30%、59%、29%与え、 さらに、ビタミンCを多く与えたところ、副作用や入院期間が減少することが分かっ たという。むしろ、副作用の緩和に好ましい影響が報告されている。

吸収、分布、代謝、排泄過程で影響

ところで、薬剤との相互作用に関する書簡は1974年に初めて発行されている。以来、 このテーマに関する論文が続々と発表されてきた。3万点以上の市販および処方箋薬品 が流通し、さらにその数が増加する今、ハーブ製品と薬剤の相互作用は永遠に続く問題 である。今のところ、相互作用で確認されているのは、薬物動態的なものと薬効学的な ものである。

薬物動態的な相互作用というのは、吸収、分布、代謝、排泄過程でハーブおよび薬剤 分子の生物利用能に影響が出ることである。まず吸収の場合。アメリカオオバコ、 亜麻種、ダイオウ、アロエなどは水溶性だが吸収されにくい。こうしたハーブは他の 薬剤と結合しやすくなる。例えばアメリカオオバコはリチウムの吸収を妨げる。 ダイオウやアロエは下痢を引き起こし、digoxinやワルファリン(血液凝固防止薬) の作用を減じると考えられている。

また、亜麻種は腸で胆汁と結合し、脂肪の再吸収を妨げるという。粘着性を持ち、 他の薬剤、特に強心配糖体と結合して、吸収しにくくすることが指摘されている。 分布では、鎮痛作用を行うサリチル酸を含むシモツケやブラックウィローは、 ワルファリンやcarbamazepineのようなプロテイン結合剤を置換し、その結果薬剤の 副作用を増大するという。

代謝の場合、例えばリコリスはコルチコステロイドの代謝を減じ、その蓄積によって 毒性を引き出すと考えられる。セント・ジョンズ・ワートは最近、肝臓のチトク ロームP450システムで肝臓ミクロソーム酵素を誘発することが指摘された。

従って、このシステムで代謝する薬剤、disoxin、theophyline、cyclosporineなどの代謝を 増大させる。この他、セント・ジョンズ・ワートは選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (SSRI)との相互作用も指摘されている。

セント・ジョンズ・ワートについては、リラックスハーブとして競争社会の米国では ニーズが高く、高い売り上げを誇っていたため、薬剤との相互作用の検証が真っ先に 行われたが、避妊薬や抗HIV薬をはじめとして多くの薬剤の効果を半減させることが 報告されている。

相互作用の重篤な被害はみられず

では、実際に相互作用の被害はどうなのか。実際に、重篤な被害がもたらされるもの なのか。 2004年4月のArchives of Internal Medicine誌では、米国で人気の主なサプリメント と処方箋薬の併用による相互作用で、現在のところ重篤なものはないと報じている。

ピッツバーグ大学の研究グループによるもので、米国で市販されているサプリメント と処方箋薬との相互作用の発生状況と重篤度を調べたところ、相互作用の94%は重篤 なものではないという結果が出ているという。

調査の対象サプリメントは、コンドロイチン、補酵素Q10、エキナセア、ガーリック、 ギンコ、ジンセン、グルコサミン、ソーパルメット(ノコギリヤシ)、セント・ジョ ンズ・ワート、ビタミンなど。サプリメント使用者の対象として、東部から1都市と してピッツバーグ、西部からロサンゼルスを選んだ。

処方箋薬使用の患者458人のうち、ピッツバーグでは平均して1患者あたり7処方箋薬を、ロサンゼルスでは1患者 あたり6処方箋薬を使用、全体の43%がサプリメントを併用していた。 薬剤とサプリメントとの相互作用については、今後もさらにサプリメント使用者が 増加することを考え合わせると、さらなる検証が必要とされる。

クランベリーやジンジャー(生姜)、ワルファリンとの併用に注意

今のところ、とくに重篤な相互作用は報告されていないとは言え、薬剤とサプリメント との併用はやはり留意する必要がある。

これまでに報告されているハーブサプリメントと薬剤との相互作用については、女性 が罹りやすいといわれる尿路感染症に有効性を発揮するといわれ、日本でも認知度が 高まっているクランベリーについても、クランベリージュースがワルファリン (血液凝固防止薬)と相互作用を起こすことが指摘さている。ワルファリン分解に 使われる酵素、P450の活動を阻害することが報告されている。

また、HIV感染患者が薬剤療法中にガーリックを摂取すると、薬剤の効き目を半減する ことも指摘されている。 Clinical Infections Diseases誌によると、メリーランドの研究グループが、HIV 感染患者10人のプロテーゼ阻害剤であるsaquinavirの血中濃度を調べ、被験者に プロテーゼ阻害剤を39日与え、その間、1日2回ガーリックタブレットを与えたところ、 ガーリックを与えている間、血中のsaquinavir濃度は50%に落ちたことが分かったと いう。

この他、ジンジャー(生姜)のトロンボキサン合成酵素阻害作用が知られており、 出血時間を延ばすという。そのため、ワルファリンなどを常用している場合、ジン ジャーとの併用は避けるよう忠告されている。

また、リラックスハーブとして知られるカバはドーパミン拮抗作用を果たすため、 併用するとパーキンソン病患者の薬剤療法を無効にしてしまうと考えられている。 また、アルコール飲料、トランキライザー、抗うつ剤などの作用を高めるため、 これらと同時に使用はしてはならないとされている。

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