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【 米国がん研究協会、「食べる量」の新プレート公表 】

スーパーマーケットにずらり並んだ低脂肪食品のオンパレード。米国では健康のため 太り過ぎに少しでも気を使う人ならば「ローファット」または「ファットフリー」を買うのが今 や常識だ。ソーダなどの飲料水にしても糖分控えめの「ダイエット」もの。心臓病、脳卒 中、糖尿病といった生活習慣病が死因の上位を占めているだけに、「予防は食生活 から」という認識がすっかり定着したからといえるだろう。ところが、なぜか一向に減ら ないのが米国の肥満人口。「ファットフリー」や「ダイエット」という魔法の言葉に安心し、 ついつい食べ過ぎる人が後を断たないからだ。肥満は生活習慣病の素。そこで、 米国がん研究協会(AICR)は「食べる量」に焦点を当てた「新アメリカン・プレート」を 作成、「健康な体重、健康な生活は食生活から」をモットーにキャンペーンに乗りだ した。

常に過食傾向のアメリカ人

AICRの栄養教育ディレクター、メラニン・ポークさんはダイエットブームについてこう 語る。「高プロテイン、糖分控え目、低炭水化物といったいろいろなダイエット情報が 反乱し、いったい何が効果的なのか消費者は戸惑いを見せています。ダイエット方 法にばかりに関心が向けられ、肝心の食べる量が軽視されているのが現状。

ファットフリーだダイエットだといっても、食べ過ぎれば太るのは当たり前。何を食べ るかも大切ですが、痩せる鉄則はまず食べる量を制限することです」ところが、一般 人の思い込みはポークさんの言葉とは正反対。AICRが2月に行った一般消費者の 意識調査によると、78%が「減量で大切なのは、量より何を食べるかである」と答えて いる。この大きな勘違いが、「ダイエット、ダイエット」と騒ぐわりに、アメリカでいっこうに 肥満が減らない理由といえるだろう。

アメリカ人の55%が肥満、4人にひとりが重度肥満

国立衛生研究所(NIH)によると、アメリカの総人口の推定55%が太り過ぎで、4人 に1人が重度の肥満。近年では、運動不足、食べ過ぎが原因で子供の肥満が増え ているほか、太りすぎが原因のひとつといわれているがん、心臓病、卒中、糖尿病、 高血圧、骨関節症といった生活習慣病の罹患率も増えており肥満は深刻な問題と なっている。肥満による年間の医療コストは推定516億ドル、欠勤などによる損失は 476億ドルにものぼるといわれている。

肥満体質改善の「新アメリカン・プレート」登場

そこで全米の肥満体質改善を図ろうと生まれたのが、「新アメリカン・プレート」。健 康的な体重に減らす、またそれを維持するのに献立の「Proportion(バランス、配分)」 そして「portion(一人前の量)」に重きをおいている。摂取カロリーを計算したりといっ た面倒くさいことは一切なし。やることといえば、毎日、いったい自分が何を食べてい るかを意識して、献立の内容と量をちょっと変えるぐらいと、いたってシンプルなヘルシ ーダイエットだ。

◎Proportion(バランス、配分)

健康なひと皿の目安は、少なくとも献立の少なくとも3分の2は、野菜、果物、穀類、 豆類といった植物ベースの食べ物で、残りを肉、魚、チキンといった動物性プロテイン で埋めるのが理想的なダイエット。AICRの専門委員会が、ダイエットとがんの関連を まとめた4000を超える研究報告を検証したところ、報告書の78%が「野菜と果物に がんを予防する働きがある」と結論づけていた。野菜や果物に含まれるビタミン、ミネ ラル、ファイトケミカルに、発がん物質から細胞を守る働きがあると指摘する。

また、AICR専門委員会は、植物ベースの献立は、心臓病、卒中、糖尿病などの生活習 慣病の予防にも効果があるという。前出のポークさんは「最近のダイエットの中には、 非常にバランスの悪い食事を勧めているものもあり、『果物や野菜を控えるように』と 言っているものまである。極端なダイエットによる短期間の減量で、長期的な健康が むしばまれる恐れがある」と警告する。

◎Portion(一人前の量)

「痩せたければ、食べる量を減らす」―これは当たり前。そこで問題になってくるのが 「大きいことはいいことだ」というアメリカのお国柄だ。外国人がアメリカに来てまず面 食らうのが、食事の量の多さ。海外から渡ってきた食べ物、たとえばフランスのクロワ ッサンにしても、アメリカに根付いた途端にそれまでの二倍から三倍の大きさになって します。

大きくなったのは何も外国の食べ物ばかりではない。アメリカ生まれのマフィ ンも、その昔はわずか1・5オンスだったのが今や8オンスに。競争の激しいファースト フード業界は、「お徳用ミール」「スーパーサイズ」と量を増やし、レストランは、皿の スタンダートサイズを10インチから12インチと大きくした。

米国農務省(USDA)によると、過去20年間にアメリカ人の一日のカロリー摂取量は 1854Kカロリーから2002Kカロリーと148カロリーも増えている。おもしろいことに、カ ロリーの摂取は増えているに一方で、脂肪の摂取は40%から33%と減っている。低 脂肪だからと安心して食べ過ぎているアメリカ人像がここでも浮き彫りにされている。

自分にとっての適量を知ることが大切

新アメリカン・プレーが強調するのは、「食べ過ぎ厳禁。自分の体に必要な量だけ食 べれば十分」という点だ。そこで、USDAの「スタンダード・サービングサイズ」を基に 「目安メソッド」を取り入れている。たとえば、シリアルなら、だいたい1カップが「スタン ダード」。

その量を頭に入れておけば、食べる際の目安になる。「スタンダード」の何倍が適量 かは、もちろん個人差がある。運動習慣のある人や、成長期の子供や妊婦ならば 「2、3カップ」、減量したいなら「1カップ」という具合だ。ポークさんは「たとえばレスト ランで3カップのパスタが出てきて、1カップ食べて後を残せば約300カロリー、セーブ したことになる。自分にとっての適量が分かれば、体重維持は簡単。あくまでも食べる 量に気を付けながら食生活を楽しんで、健康な体重を保ちましょうというのが新アメリ カンプレートの狙いです」と話す。

アメリカ在住のアジア系人種の間で糖尿病が増加

こうした肥満がもたらす代表的な疾患として糖尿病が挙げられる。文明諸国の悩み の一つだが、米国の現状を報告する。

食生活の欧米化、運動不足、新しい環境によるストレスなどが原因で、アメリカ在住 のアジア系人種の間で糖尿病患者が増えていることが、ロサンゼルス市内で今年 11月30日に開かれたアジア系対象の「糖尿病フォーラム」で明らかにされた。

パネリストとして参加した糖尿病専門の医療関係者らは、黒人やヒスパニック系の罹 患率上昇が問題視される影に隠れ、アジア系でも増え続けている現状を指摘、さら に将来、糖尿病の治療薬として使われている「インスリン」の吸引式投薬機器市販 の可能性にも触れた。

グッドサマリタン病院のメディカルディレクター、ジョセフ・ワンスキー氏は「過去15年 にわたり黒人、ヒスパニック系を中心に糖尿病のセミナーを開いているが、アジア系 対象は非常に珍しい」と指摘。正看護婦でアジア系の糖尿病認識を高めようと活動 するクローディア・スー・ウエイ・アン氏も「毎月、アジア系を対象に勉強会を開いて いるが参加者は極めて少ない」と言う。

特に移民の場合、英語が大きな壁になっているほか、病気に対する認識不足、さら に糖尿病であることを人にあまり知られたくないという文化的な背景も手伝い、アジア 系コミュニティーにおける情報不足は深刻な問題になっているという。

また、日本食をはじめアジアの食習慣は健康的というイメージが生んだ「アジア系=健康」という ステレオタイプから糖尿病の調査対象から外れてしまい研究データが極端に少ない ことも問題として指摘されている。

アジア系で糖尿病が多いのは白米を多く食べるため

現在、全米の総患者数は約1600万人。自覚症状があまりないといった理由から病 気に気付いていない人は推定540万人くらいともいわれる。うち、アジア系の患者は 推定75万人。医療費および欠勤など経済に与えるインパクトは、毎年、約982億ド ルと膨大だ。

「全米アジア女性健康団体(NAWHO)」の資料によると、糖尿病は全米における 死因の六位で、毎年、約19万1千人の命を奪っている。アジア系だけでみると、45 歳から64歳の死因五位で、白人に比べ女性は2.4%とほぼ同じだが、男性は白人 2.5%に対しアジア系は3.4%と高い。中でも日系の罹患率は高く、シアトルで行っ た44歳から74歳の日系二世を対象にした調査では、男女とも5人に1人が糖尿病 だった。アン氏は「アジア系で糖尿病が多いのは白米の消費が多いこともひとつの 理由。玄米をもっと食べたほうがいい」と強調。また「食べ物の種類も大切だが、そ れよりも食べる量が肝心」との指摘もあった。

「早期発見」と「治療の継続」が重要な鍵

糖尿病は、肥満、喫煙、遺伝などが主な原因といわれ、「適量・バランスのとれた食 事」「運動習慣」に加え、「早期発見」「治療の継続」の大切さが強調された。カリフォ ルニア糖尿病コントロール事業に携わるメリールー・ビビアン・アルバレアス氏は「ノド の乾き、頻尿、疲労といった糖尿病の症状は、往々にして『ノドが乾くのは暑いから』 『頻繁にトイレに行くのは水分の取り過ぎ』『疲れは働き過ぎて』というようにほかに理 由をつけて、ついつい見落とされてしまう」と警告する。

医療機器や薬も進歩し、早期発見できちんと治療を続ければ慢性病としてつきあっ ていける病気。しかし、ほおっておけば、視覚を失うほか、腎臓疾患を起こし透析し なければならないといった最悪の事態を招く。

医学の進歩で、糖尿病をマネージすることは可能になってきたものの、治癒面では それほど進歩していない。それだけに、「早期発見、治療の継続が重要な鍵を握っ ている」とパネリストらは強調した。

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