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口腔ケア、歯周病や生活習慣病との関係
日本人の成人のおよそ80%が歯周病に罹患

2013年9月4日、女性就業支援センターで、「働き世代から始める、健康寿命を延ばす口腔ケア」と題して、松下 健二氏(独立行政法人国立長寿医療研究センター 口腔疾患研究部部長)が「咀嚼機能」の重要性について講演した。口腔ケアを怠ると、健康寿命の低下ばかりかガンリスクも高まるという。 

歯周病による抜歯は42%、虫歯を上回る

口腔ケアは若いうちから十分気をつける必要がある。
加齢とともに歯が欠けや衰えで、咀嚼機能が低下していく。食事の楽しみが半減するばかりか、虫歯で疾患リスクが高まることも指摘されている。歯を1本失うと死亡率が1.01%上がり、ガンでさえ歯が少ない人のほうが、罹患率が高いという疫学データもあると松下氏はいう。

口腔内を常に清潔に保つためには1日3〜4回の歯磨きが必要で、怠ると歯周病を招きかねない。歯磨き前の唾液を採取すると、細菌は約100万個/ml検出されるが、10分の歯磨きで10万個/mlまで減らすことができるという。

近年は歯を抜く主な原因が虫歯よりも「歯周病」にあるといわれている。歯周病は日本人の成人のおよそ80%が罹患しているともいわれる国民病で、実際に、虫歯による抜歯は32%だが、歯周病による抜歯は42%と虫歯を上回る。

歯周病、糖尿病やアルツハイマーの原因に

歯磨きを怠り、口腔内を不潔にしておくことは歯周病だけでなく肺炎の原因になることも分かっている。とくに高齢者にとって肺炎は深刻な疾患で、日本人全体の死因に占める肺炎の割合は10%程度だが、うち95%が65歳以上の高齢者である。

加齢とともに食べ物が喉に詰まる「誤嚥(食べ物を気管内に飲み込むこと)」が起きやすくなる。口腔内が不潔で、歯周病が起きていると、細菌を含んだ分泌物も「誤嚥」してしまう。それが肺に入ると誤嚥性肺炎が誘発される。

歯周病が糖尿病やアルツハイマーの原因になりうるという研究も少しずつなされていると松下氏はいう。明確な因果関係を示す論文こそないが、歯周病菌がさまざまな毒素を出していて、それが血管に入り込み、血液とともに体内組織のそれぞれに付着し、悪影響を及ぼしている可能性が否定できない。とくに糖尿病とアルツハイマーは歯周病菌による毒素との関連が強く指摘されているという。

マウスの実験では歯周病に罹患させたマウスと健常なマウスの認知機能を比較すると、歯周病マウスのほうが、明らかに認知機能が低下している様子を観察することができる。認知症状態になったマウスの脳からは通常口腔内にしか存在しない菌が見つかっているという。ただ、どのようなメカニズムで血中から脳に移行したのか、それとも他のメカニズムがあるのか、詳細はわかっていない。

認知症はある日突然発症するものではない。脳機能の低下は早ければ40代、50代から徐々に始まる。口腔ケアなど若いうちから気をつけ、加齢にともなう疾患を遠ざけたいものだ。

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