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健康寿命延伸へ、機能性表示食品に期待
〜薬業健康食品研究会「令和元年度シンポジウム」

2019年6月11日(火)、主婦会館プラザエフにて「薬業健康食品研究会 令和元年度シンポジウム」が開催された。同シンポジウムより森下竜一氏(大阪大学大学院医学系研究科教授 内閣府規制改革会議委員)の講演「機能性表示食品の役割と期待〜健康寿命延伸に役立つモノにするために」を取り上げる。

トクホと異なり、中小企業も参加しやすい

開始から4年が経過した「機能性表示食品制度」。よくいわれるように未だ「未完」で、毎年バージョンアップを繰り返している。

今後も改正がなされるであろう。現行のものは施行時と比べ幾分違ったものになっている。すでに受理経験がある事業者も常にアップデートをしていく必要があり、不満や戸惑いの声があがっている。

健康食品が私たちの健康寿命の延伸に役立つものになるために、今後も制度の見直しや改正、こまめな話し合いが必要ではないか、と森下氏。

「受理までの手続きが大変」との声も多いが、現在(2019年6月)1946件の商品が受理され、トクホの1081件を大きく上回っている。

制度施行時の目的の一つに「トクホ制度とは異なり、中小企業や小規模事業所でも参加しやすいこと」があったが、届出企業の56%が中小企業、12%が小規模企業で、その目的は達成できているという。

日本発のグローバル制度になる可能性も

また、当初は受理までに時間がかかることが指摘されていた。しかし、消費者庁は平成28年12月に「初回不備指摘までの日数が55日を上回らないことを目標とする」とし、それ以降は平均で48〜50日で初回返答が戻る状況となっている。

最近では、韓国やASEAN諸国もこの制度を取り入れたいとし、省庁関係者が各国に赴いている。この制度が日本発のグローバル制度になる可能性も出てきた。

また、消費者庁ホームページの「機能性表示食品データベース」も常にバージョンアップされ、使い勝手も良くなり、「骨」や「脂肪」といったキーワード入力で関連商品が容易に閲覧できるようになっている。

事業者もオンラインでの申請が可能となり、資料提出に関わるケアレスミスもデータベースによる自動チェックで激減している。QRコードによるデータベースへのリンク機能も追加され、利便性も向上している。

トクホ、扱い件数が減少

機能性表示食品の目玉ともいえるのが「生鮮食品における機能性表示」。全体の中での割合は少ないが、すでに36品目が受理されている。

中でも今年3月に受理された「アローマメロン」「クラウンメロン」(機能性関与成分はいずれもGABA)に、「精神的ストレス緩和作用」が表示された。

これにより、これまでの健康の維持増進目的とは違う、「贈答」などに最適な「高級メロン」として人気が出そうだ。

また、同じく「内臓脂肪を減らす りんご」も、他のりんごとの差別化や高級志向の人向けに話題となりそうだ。

機能性表示食品が盛り上がる一方で、トクホについては扱い件数が減少している。そのため「疾病リスク低減型トクホに関する調査事業」というのが今年検討されている。この事業では「今後の制度設計や新たに加える関与成分の候補に関する基礎的な調査」を行う。

米国ではビタミンD、EUでは植物ステロールなどが、疾病リスク低減表示が可能とされているが、日本ではカルシウムと葉酸のみしか疾病リスク低減表示が認められていない。

機能性表示と違い、疾病リスク低減表示が可能なトクホ成分として、ビタミンDや植物ステロールなども検討していこうという流れだ。

業界団体が事前チェックを推奨

機能性表示食品については、消費者に役立つ製品も多いが、制度開始から最大の課題となっているのが「広告表現」。

ほとんどの事業者が薬機法や景表法の遵守を心掛けるものの、受理が撤回されたケースが複数件生じている。

これは、「薬機法」「景表法」「食品表示法」「健康増進法」と食品表示に関わる4つの法律が、複数の異なる省庁によって管理されているためで、受理後に不備指摘ということも起こり得る。

そこで、消費者庁は業界団体との連携を強化し、業界団体による事前チェックを推奨している。現時点で事前チェックを行っている団体は「日本抗加齢協会」と「日本健康・栄養食品協会」の2つ。

こうした団体の事前チェックについては事業者の自由だが、スムーズな届出受理やあとで不備指摘されないために有効活用するのも一つである。また、今後、消費者庁でも事後チェックに関するガイドラインの作成を検討する予定もあるという。

健康長寿の実現の重要なパーツに

ここまで盛り上がってきた機能性表示制度だが、この制度によって万一健康被害や消費者団体からの訴訟などのエラーが生じれば、制度そのものが揺らいでしまう。

消費者や各団体から不満の声が上がらないよう、そしてこの制度が消費者だけでなく食品業界や健康産業、各関連事業者に本当に役に立つようにするために、この「未完」の制度が今後も進化していく必要がある、と森下氏。

今オリンピックで盛り上がっているが、2025年には大阪万博の開催が決まっている。そのサブテーマが「多様で心身ともに健康な生き方」「持続可能な社会・経済システム」。

そこでも日本の健康食品が多数取り上げられ、世界に発信される予定である。この制度が引き続き進化し、健康長寿の実現の重要なパーツとなれば、とまとめた。

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