新型コロナ、肥満度が高いほど重症化しやすい
新型コロナという新たな感染症の流行が世界的に拡大し、収束の目処が立たない中で「免疫力」という言葉がキーワードになっている。
食事で免疫力を高めることは可能なのか。個別の栄養素と感染症の関係をひも解く前に、個々の体型や体質と免疫について考えておく必要がある、と酒井氏はいう。
そもそも「肥満(日本だとBMI 25以上)」や「痩せ(BMI18以下)」は健康に良くないとされる。肥満は心血管疾患や高血圧・糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まる。痩せは骨粗鬆症やサルコペニアなどのリスクが上がる。
肥満とCOVID19の感染について、2020年の海外の論文によると、BMI25以上の人が罹患率が高く、さらに重症者(人工呼吸器を使用した人)はBMI30以上の人が多いという結果も出ている。
他にも、糖尿病や高血圧症状などの基礎疾患を持っている人は、そうでない人に比べ3倍ほど感染リスクが高くなっている。
また加えて、肥満度が高いほど重症化しやすいことも間違いなさそうだ、と酒井氏。
コロナ感染者、栄養不良の人が多い
なぜ肥満傾向にある人が感染や重症化リスクが高くなるのか。
まず、肥満や過剰な異所性脂肪によって、肺の機能が低下しやすく循環器系機能全般が低下する。
さらに代謝機能の低下に伴い、免疫の過剰や異常応答が起こり、ウイルスが体内で拡大しやすくなるからではないか。
また肥満も痩せも栄養不良によって生じていることが多い。栄養不良はそもそも免疫力を低下させ、体のさまざまなバリア機能も低下させるためCOVID19に限らず感染症にかかりやすく、罹った場合に重篤化しやすい傾向にある。
中国でCOVID19に感染した人の栄養状態を調査したところ、栄養状態を普通レベル・不良・良好の人で調べたところ、やはり不良の人が最も多かった。
ビタミンEやDに風邪対策の有用性報告
個別の栄養素についてはどのような研究結果が報告されているのか。いずれもメタアナリシス研究によるもの。
ビタミンAと感染症については、8つの研究の統合により「ビタミンAの補給で麻疹感染による死亡を39%ほど低下させる」「5歳以下の小児において麻疹感染、下痢、夜盲症のリスクを低下させる」などの報告がある。
ビタミンDと呼吸器感染症については、25の研究の統合の結果「ビタミンDの補給は感染リスクを12%低下させる」と報告されている。
ビタミンDが欠乏している人がインフルエンザにかかりやすいということもあるが、年齢など調整すると有意差が認められないという報告もある。
ビタミンEについては風邪症状の発症リスクを46%低下させる(ただし72歳以上、1日5〜14本のタバコ、都市部に住んでいる人限定)、肺炎発症のリスクを35%低下させる、ベータカロテンの補給はリスクを42%上昇させるといった報告もあるが、条件が一般的とはいえない。
これらの栄養素の中ではビタミンDが最も有用性が高そうだ、と酒井氏。
亜鉛については65歳以上の高齢者725人を対象とした無作為化対照試験で、「亜鉛投与群において呼吸器感染症にかからない人の数が非投与群に比べて多かった」ことが報告されている。
小児を対象とした亜鉛補給に関するメタアナリシス研究では「亜鉛の補給は下痢や呼吸器感染症の低下、呼吸器感染症および肺炎を低下させる」とされているが、研究対象数が少ないため結果の解釈には注意が必要となる。
やはり、普段の食事を大切にするのが最も効果的なのではないか、と酒井氏。
「ごはんと味噌汁を中心とした一汁三菜」で健康寿命が伸びるという疫学調査結果もある。45〜47歳の男女9万人以上を18.9年追跡調査したところ、日本食パターンが高いほど、そうでないグループに比べ全死亡リスクが14%減少し、循環器疾患死亡率が11%低下したという調査報告もある、とした。