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コロナストレスによるうつ、不眠対策とは
〜朝日を浴びて、うつや不眠を解消する

昨年からのほぼ1年におよぶコロナ自粛で人々のストレスも蔓延化しつつある。消毒やマスクの常時着用が逆に私たちの本来の免疫を弱める結果になっているとの専門家らの声も一方で挙がっている。コロナストレスが招くうつや睡眠障害の対処法とはどのようなものか。

うつ人口、コロナ以降3倍以上に

2021年3月17日(水)、web配信にてウェルネスフード推進協会セミナー「睡眠の質とメンタルパフォーマンスの関係性、対応する食品開発のトレンド」が開催された。

この中で、武田猛氏(株式会社グローバルニュートリショングループ)は、COVID-19によるうつ病が米国で感染前より3倍以上増え、どの国でも似たような状況にあると指摘。

昨年2月以降、コロナにより外出自粛、ソーシャルデイスタンス、マスク装着が叫ばれているが、こうしたことから生じるストレスで、うつや睡眠障害を併発する人々が増えているという。

長引く「自粛ストレス」は「免疫力の低下」を引き起こすことにもなりかねない。人々の健康意識や食への関心はより強まる傾向にあるようだ。

例えば、オメガ3やナッツ、アボカドなど体に良い脂質は積極的に摂取したいと考えるようになっている。

また、砂糖はうつ病や不安症などの引き金になることやタンパク質を減少させるため、低糖・高タンパクの製品を求めている。腸の健康がストレスや免疫、精神面にどのような影響を与えるかを十分理解しているため発酵食品への意識も高い。

酸化から細胞や免疫を守るため、野菜や果物を摂取する意識も高まっている。良い睡眠を促進させる機能性成分やハーブティーなども人気がある、と武田氏。

十分な睡眠でストレス解消、免疫力を高める

また、裏出良博氏(第一薬科大学薬学部教授 東京大学アイソトープ総合センター特任研究員)は「睡眠と脳機能について」と題して講演。

ストレスの蓄積は、うつのような精神的疾患の原因になる。免疫力が低下することで感染症のリスクが高まることを指摘。さらに近年は生活習慣病(糖尿病や肥満、高血圧症)や認知症の原因にもなることもわかっている、とした。

例えば、睡眠中は、成長ホルモンが分泌される。これは健康維持には欠かせないが、十分な睡眠はストレス対策にも有益だ。

また、とくに重要なのが「老廃物の排泄」。睡眠中は脳脊髄液の流量が著しく増加し、認知症に関与することで知られるアミロイドβなどの脳の老廃物の排泄が亢進する。

コロナストレスによる不眠対策に役立つサプリとしては、バーベナに含まれるハスタトシド、しじみに含まれるオルニチン、サフランに含まれるクロシン、朴の木(ほおのき)に含まれるホノキオールなどが有用であることを裏出氏は紹介。

また、ここ数年の機能性表示食品では「ぐっすり感」や「目覚め」をサポートする成分としてグリシン・亜鉛酵母・清酒酵母などに人気が集まっている、とした。

メラトニンの分泌を高め、不眠を克服する

とはいえ、できれば人は本来の眠りのサイクルで自然に就寝できるようになることが望ましい。本来人は、夕方から夜にかけて、自然に眠くなるが、この「眠りを誘う」のに重要な役割を果たすのが「メラトニン」というホルモンである。

メラトニンは1日の「体内時計」を調整するホルモンで、体内で自然に合成される。朝日を浴びると分泌が抑制されるが、15〜16時間後には再び分泌が始まり、自然に眠くなる。

これが私たちの体に備わった本来のシステムで、午前0時を目安にメラトニンが十分に分泌されていれば、睡眠の質は高まり「ぐっすり」眠れるということになる。

このメラトニンを十分に分泌させるには、1,朝日を浴びる、2,メラトニンの原料となるセロトニンを増やす、という方法がある。

「2,メラトニンの原料となるセロトニンを増やす」については、メラトニンを微量に含む食品もあるが、基本的に食品からの摂取は難しい。

体内で自然にメラトニンを合成するには、メラトニンの元となる神経伝達物質のセロトニンを分泌させることが必要となる。このセロトニンの原料となるのが必須アミノ酸のトリプトファンである。

トリプトファンを多く含む食品には、納豆や味噌、醤油などの大豆加工食品、わかめ、胡麻、牛乳、チーズ、かつお節、卵黄、バナナなどがある。

このトリプトファンを1日に500〜600mg日摂ると不眠に有用とされるが、上記のような食品をふだんの食事の中に取り入れることで十分補給ができる。

メラトニンは不眠対策だけではなく、その抗酸化作用から、ビタミンC・Eと同様にアンチエイジングにも役立つ。さらに約30%程度寿命が伸びることやボケ防止作用、がん予防作用などがあることもマウス実験で報告されている。

不眠やうつ、朝日を浴びることで解消

このように睡眠障害の克服にはまずメラトニン分泌のリズムを正常化する必要がある。そのためには、まず朝起きたらまず太陽の光を十分に浴びることである。

メラトニンの元となるセロトニンは睡眠中には生成されず朝の太陽の光を浴びることで徐々に脳内で生成されていく。

実は、うつは脳内でのセロトニンの放出量が少ないことが原因とされている。そのため、朝日を浴びることはうつの改善にも繋がる。

また朝日に限らず、日中に陽光を浴びるとビタミンDが体内生成され、免疫調整が行われる。これにより、がんや生活習慣病といった疾患対策に有益であることも分かっている。

他にも、日を浴びることの効用は様々ある。1週間に14時間(1日2時間)屋外で遊んでいる子どもは近視になりにくい。太陽光の中のバイオレットライト(虹の紫色)に近視抑制作用があることも分かっている。

バイオレットライトを浴びると、EGR1という近視を抑制する遺伝子が増大するため近視が起こりにくくなる。

バイオレットライトは、ガラスを透過できないため、屋内には存在しない。屋外にいなければ浴びることができない。

このように日を浴びることの効用は数多くあるが、最近では、日光浴により体内生成されるビタミンDがコロナ対策にも有益であることも海外で数多く報告されている。


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