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ボーダレス時代、「食」の安全管理は万全か

9月4日、新宿文化センターで「安全・安心な食生活」をテーマに食品科学広報センター主任研究員の瀬古博子氏が講演を行った。一昨年、BSE(狂牛病)問題が発生し、その後偽装表示の発覚や中国産冷凍ホウレン草の残留農薬問題で国民の食品への信頼が大きく揺らいだ。輸入食品が年々増加傾向にある中、個々人が自衛意識を高めていかなければいけないような状況が生じている。ボーダレス時代の「食」の安全管理とは・・・

「食品をバランスよく食べることで、リスク分散」

無登録農薬や未指定添加物の使用、加えて表示も偽装となると国民は何を判断材料に食品を選べばいいのかわからない。
「これさえ食べれば安全だとか、これさえ避ければ安全だとかそういったものはないと考えていいと思う。食品のリスクというのは非常に広範囲に散らばっている。残留農薬とか食品添加物だけがリスクではない」。講演のまとめとして、瀬古氏はそのように述べた。

そして、現状考えられ得る対策として----、「食品をバランス良く食べるということが大事。いろいろな種類のものを食べるということで安全を確保できるのではないかと考える」と提案した。食品の偏りを避け、リスク分散を図るという考え方だ。ただし、あくまでもリスク回避のための一手段であり、根本的な解決策とはいえない。

2000年6月に加工乳牛に黄色ブドウ球菌混入による大型食中毒の発生、2000年10月に遺伝子組み換えトウモロコシ(スターリンク)混入、2001年9月のBSE(狂牛病)感染問題とそれに絡む偽装表示、2002年には中国産冷凍ホウレン草の残留農薬の問題、未指定添加物や無登録農薬の使用など、ここ数年国民の食への信頼を損ねる事件が縦続けに起きた。

一般食材ばかりではなく、ダイエット用に製造された中国産のヤセ薬に医薬品成分が混入され健康被害が生じたことから、健食素材についても不信感を抱かせる結果となった。

大豆の自給率は5%

輸入食品は年々増加傾向にあり、平成13年度をみると、160万件を超える届出件数となっている。 我が国の食料自給率が最も低い作物を挙げると、大豆が5%と最も低く、以下、小麦11%、砂糖類32%、果物44%、肉類53%、魚介類61%、牛乳・乳製品68%と続く。(農林水産省資料より)

相次ぐ食品関連の不祥事が引き金となり、食品衛生法の改正(平成15年5月30日公布)が行われることとなるが、その中では残留農薬基準の拡充、農薬などの残留規制の強化、輸入食品の監視体制の強化を明確にしている。また、内閣府に食品安全委員会を設置し、消費者と食品のリスク情報を相互に交わすことで、食品の安全行政を推進していくとしている。

この他、講演の中で、瀬古氏は国民の健康管理の指標として「健康日本21」運動を例に、野菜や果物の摂取量の増加を挙げた。「健康日本21」では、成人1日当たりの野菜の平均摂取量を現在の292gから350gに増加することを目標としている。また果物類については現在国民の3割弱が摂取を好むが、これを6割以上に引き上げることを目標としている。

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