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味噌や納豆などの発酵食品、小腸刺激で免疫を活性
〜小腸環境が免疫機能の質に関与、味噌は小腸の樹状細胞を増強

2025年3月24日(月)、オンラインセミナー「免疫研究フロンティアと機能性食品ビジネスの未来〜」(アイメックRD主催)が開催された。この中から、内藤裕二氏(京都府立医科大学大学院医学研究科 生体免疫栄養学講座 教授)の講演「免疫老化研究の最前線?食による健康長寿へのアプローチ」を取り上げる。

加齢とともに免疫が低下、原因は未だ解明されていない

一般的に、加齢とともに免疫が低下することがよく知られている。しかしながら、なぜ加齢で免疫が低下するのか、その原因は未だに解明されていない、と内藤氏はいう。

ただ、食事と免疫との関わり、特に腸内細菌叢(腸内フローラ)を整える食事と免疫との関係性は明らかになりつつある。加齢とともに腸内細菌叢は乱れ、ビフィズス菌などの善玉菌が減少しやすくなる。そうしたことが免疫の低下を招く大きな要因となっていると考えられる。

腸内環境の劣化、このことが免疫の低下と繋がるのであれば、「食」内容を変えることで免疫を高めることは可能であろう。

では、どのような食事が腸内細菌叢を整え、免疫を高めるのか。
例えば、京都府京丹後市は健康長寿の地域として知られるが、多目的コホート研究によると、同地域の住民のインフルエンザや肺炎の罹患率はわずか1.6%で免疫が高いといわれている。


健康長寿地域の人々、魚介類や海藻、発酵食品を多く摂る

この京都府京丹後市に住む多くの人々は伝統的な日本食を摂っていることで知られる。日本海に面していることから魚介類や海藻を多食する。また、動物性タンパク質よりも豆腐や納豆などの植物性タンパク質を多く摂るという、食事内容である。

特に、サバを糠漬けにした発酵食品の「へしこ」は京丹後市の代表的な郷土料理として知られるが、こうした糠漬けや味噌といった発酵食品を日々摂取している。

近年、腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が免疫機能の維持に寄与していることが示唆されている。また、特に酪酸産生菌が多い人は感染症の罹患率が低いことも分かってきている。

現在、糖尿病からのがんや感染症による死亡が増えているが、これも免疫力の低下と密接に関係していると、と内藤氏はいう。特に糖尿病患者の40%ががんで死亡しており、男性では糖尿病による免疫低下からの肺がんリスクが特に高いことがわかっているという。

こうした糖尿病や腎臓病の予防には腸内細菌叢を整える食事が有効であり、免疫力を高めることにもつながる。


免疫は「食」と関係、腸管が大きく関与

2025年3月17日(月)、第26回国際おやつ研究会オンラインセミナーが開催され、、辻典子氏(十文字学園女子大学 食品開発学科 教授)が「ガストロノミー(美食医)の中の食品免疫〜美食が健康をつくる〜」と題して講演。

この中で、辻氏は免疫は食事内容と関係している、特に腸管が大きく関与している、と指摘。 辻氏によると、加齢とともに老化する「免疫老化」の抑制のカギは「食」にあり、人はさまざまな栄養素を摂取すると、まず小腸のあたりで免疫機能が刺激され、選ばれた腸内細菌が大腸に達すると非常に多様な腸内フローラのコミュニティを作るという。

ちなみに、私たちの体の免疫は大きく「自然免疫」と「獲得免疫」に分けられる。それらの免疫を正常に機能させるためには、免疫細胞であるマクロファージの働きを高める「糖質類(リポポリサッカライド)」を含む食品を積極的に摂ることが有効とされている。

こうした食品成分は小腸で免疫システムに対して作用する。小腸の主な常在菌は乳酸菌だが、日本人に馴染みの発酵食品には乳酸菌や微生物が豊富に含まれ、小腸において抗炎症作用を発揮する、という。


味噌や納豆などの発酵食品、免疫機能を高める

食事からどのような成分や菌を摂取するかによって、免疫機能の主軸とも言える小腸の環境は左右される。この小腸の環境が直接「免疫機能の質」に関係する。

日本の伝統的な発酵食品である味噌を摂取すると、小腸では樹状細胞が増強されることがわかっている。味噌には乳酸菌・酵母・麹菌なども含まれるが、豊富な核酸・多糖が共闘して免疫細胞を活性化していることも分かっている。

また、同様に納豆菌にも樹状細胞からのサイトカイン産生活性が確認されている。このように、一部の食品により小腸で免疫増強スイッチがオンになり、免疫機能の成熟に貢献している、と辻氏はいう。

他にも、水溶性食物繊維は、大腸ではなく小腸で自然免疫を活性することが分っている。小腸における免疫システムの発現に、日本の伝統食である、穀類に魚介類に海藻類、味噌や納豆のような発酵食品が有効であり、人々から生活習慣病や感染症を遠ざけるということがいえそうだ。


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