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歪められる食品表示、弁護士らが表示改正を求める申し出を提出
〜「国内製造」という紛らわしい表示、2022年より完全施行

2025年9月25日、衆議院第1議員会館 第1会議室にて、講演会「歪められる食品表示」(共催:食品表示申出有志代理人、食品表示問題ネットワーク)が開催された。 「小麦粉(国内製造)」など消費者に誤解を与えかねない表示に対し、弁護士らが食品表示基準の改正を求め消費者庁長官に申し出を行う予定という。

「小麦粉(国内製造)」のラベル表示、原料生産地が不明

戦後、高度経済成長とともに食の欧米化が進み、パン食が急速に家庭に普及した。それにともない、日本人一人当たりの米の年間消費量は、1962年(昭和37年)の118.3kgをピークに以降減少し、近年は約50kg台で推移している。

一方、パン食は学校給食や手軽さから全国的に浸透し、2011年には総務省の家計調査(二人以上の世帯)で、年間支出額が米の支出額を上回るまでに至っている。

日本における、小麦の自給率は15%程度(令和4年度概算)とされ、その多くをアメリカやカナダ、オーストラリアなどからの輸入に頼っている。

輸入小麦については、輸入時に厳格な検査が行われているとはいえ、過去に発がん性のあるグリホサート(除草剤)やポストハーベストの残留が指摘されていた。

この輸入小麦について、商品パッケージに原産地表示がされてないことが現在問題視されている。スーパーなどの売り場では一部商品を除き、ほぼ商品パッケージは「小麦粉(国内製造)」との表示で、原料生産地が示されず、消費者に誤解されやすいことが指摘されている。



「小麦粉(国内製造)」という表記は、小麦粉を製粉した場所(国内)を示したもので、原料である小麦自体の原産地(採取地)を示したものではない。そのため原料の小麦の原産地は不明である。

現在、日本国内で消費する約90%の輸入小麦は主に米国、カナダ、オーストラリア産が占める。近年、消費者の食品表示への関心は高まりをみせているが、この「国内製造」という表記について同団体が、原宿と阿佐ヶ谷で消費者の意識調査を行ったところ、約3分の1が「国内製造」を「国産原料」と誤解していたという。

この表記について、実は15年前の食品表示法では原則「原料原産表示」だった。それが今では「国内製造」という表示に変わり、さらに消費者庁は「国産」の表示をやめるよう指導しているとの話もあるという。


「国内製造」という紛らわしい表示、2022年より完全施行

この「国内製造」という消費者に誤解されやすい食品表示、2022年より完全施行された日本の原料原産地表示制度に基づいている。

発端は、2000年頃に農産漬物などの原産地偽装問題が発生したことによる。当初、農産物や一部の加工食品への原料原産地の表示義務付けが始まり、後に、農水省・厚労省の共同会議や消費者庁に設置された検討会を経て、2022年度に完全施行という形で、食品表示基準に組み込まれた。

小麦粉以外にも紛らわしい表示例として、なたねや大豆、とうもろこしなどがある。これらは、種子をカナダなどから輸入し、国内で絞っている場合が多いが、原材料が「食用なたね油」と記載され、製造地表示が行われているケースがある。
こうしたことは、JASの品質表示基準にも関連し、明らかに不適切な表示だと指摘されている。

本来の表示基準は主要原料の原産国を遡って示すべきだが、現行制度では製造地を示す代替表示が主流で、消費者の「国産原料を選びたい」というニーズや消費者基本法に明記された選ぶ権利にも反している。

実際に、2016年に行われた消費者調査では、当時中国産の野菜などが問題視され、多くの消費者が国産の原料を選びたいという意向を示していた。


弁護士ら、基準の改正を求める申し出を消費者庁長官へ提出

こうした中、弁護士グループと一般消費者約1,100名が原告として、食品表示法第12条に基づき、内閣総理大臣や消費者庁長官に対し、現行の基準を是正するよう適切な措置を求めている。

「国内製造」という表示は、国内で使われた(作られた)と解釈するのが自然であり、消費者に「国産」であるという誤認を生じさせる。そのため、弁護士グループは現行の食品表示基準の改正を求め食品表示法第12条に基づく申し出を消費者庁長官に提出するという。

食品表示法は、一般消費者の利益の増進を図ることを目的としている。その基本理念の一つとして、消費者に必要な情報が提供されることが消費者の権利であることが尊重されることが掲げられている。


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