骨太の未病
〜待ったなしの医療構造改革の中で

2002年1月12日、金沢市文化ホールで「第8回日本未病システム学会」が開催された。この中で、(財)博慈会 老人病研究所所長の福生吉裕氏は、「未病」について述べ、従来の医療と代替医療との連携の必要性を説いた。

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○医療の主軸、流動化へ

福生:2002年となり高齢少子化と共に包括医療の具体化案、老人医療費給付の75歳以上が検討され始め、医療の主軸が流動化をなす時代に入ってきた。医療構造改革は大きなうねりをみせ押し寄せてくるかに見える。この時未病は2000年の眠りから覚め大きなベクトルを持った21世紀の医療としてその実体を現してくるのではなかろうか。
では未病による医療社会とは何を指すのであろうか。もう一度未病の原点から考えてみる事にする。

未病という言葉は2000年前の中国の古典である黄帝内経素門に登場する。黄帝内経素門で提唱された「未病」は総じて病気以前の状態をさし、医師としてこの未病をみきわめるをもって名医と位置づけている。検査の無かった後漢の時代、未病は自覚症状に立脚し、重篤な病気になる前の予備状態として創設された。

その後、この未病は陰陽五行説と血、気、水を中心とする漢方医学の中では陰になり陽になり中心的思想として潜行し、養生の学としての位置を占める。「息、食、動、想」の基本要素が未病としての養生となった。そして養生は吉田兼好や貝原益軒にその思想は受け継がれてきた。

○「健康か病気」しかなかった世界に未病が加わる

それが今日の日本は世界で最長寿国となり急速な高齢化社会を迎えていた。いかに医療の質を落とすことなく医療福祉を継続させるかが今日の大きな課題として登場してきた。それを解決する一手段として未病が注目されてきたのである。これまで東洋医学のいう「自覚症状はあるが検査では異常が発見されない状態」という漠然とした状態と、「自覚症状はないが、検査値では異常があり放置すれば重症化する状態」を「未病」に加え明確に数値で判明する西洋医学的アプローチからの未病を取り入れた。

すなわち未病には東洋医学と西洋医学からの二つの未病ゾーンがある事が分かる。後者の未病には例えば軽症高血圧、境界域糖尿、高脂血症、高尿酸血症、肥満、脂肪肝、シンドロームXなどが入る。そのほか、B型肝炎キャリアーや無症候性脳梗塞、さらに遺伝子診断で証明される異常なども入り、その範疇はまだまだ広がりを見せる。
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. そして重要なのは「病の気」というのは自覚症状があり、かつ検査で異常が見られるものとし、身体を健康、未病、病気と連続して捉える考え方となる。「健康か病気」しかなかった世界に未病が加わるのである。

この三者の関連を明確にしていくのがこの学会の役割でもある。そしてここに未病を確立する事でこの未病をケアーする職種が創設されることになる。すなわち未病は医師ばかりでなく、看護職、薬剤師、栄養士、臨床検査技師、鍼灸師などこれまで医療周辺業務として携わってきたものが主役となりネットワークを組んで対応することが重要となる。国民皆保険制度のシステムの創設に繋がると信じる。


○適切な食品と運動により、自分の身体は自分で守る〜21世紀版「ヒポクラテスの誓い」

○21世紀はセルフプリベンション(自己予防)の時代

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