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魚の摂食、オメガ3系脂肪酸の有益性と水銀懸念
〜厚労省「魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」

6月1日、厚労省による「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項について」の改訂が公表された。魚は、DHAやEPAといったオメガ3系脂肪酸を多く含み、健康への有益性が数多く報告されている。一方で、妊婦においては、魚の摂食で取り込まれる水銀の胎児への影響が懸念されている。

体内に取り込まれた水銀、2ケ月で半減

魚は健康に有益な成分を多く含むが、とかく問題視されるのが女性の妊娠時の摂食。
ダイオキシンの摂取経路の90%は魚食からといわれている。脂肪に蓄積しやすいことから、母乳を通して胎児に浸透し、乳幼児のアトピー・アレルギーの原因ともみられている。

さらに、魚介類に含まれる水銀の問題もある。とくに、食物連鎖によりマグロやクジラなど大型魚に蓄積しやすい。

6月1日に、厚労省の「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項について」(以下略、「注意事項))が改訂された。

この中で、「授乳中の母親が、魚介類の摂食で注意すべきこと」については、「食品健康影響評価では、母乳を介して乳児が摂取する水銀量は低いことが示されている。授乳中の母親は注意事項において、対象としていない」としている。
体内に取り込まれた水銀は代謝、排泄される。水銀量が半分にまで減少する期間は約2ヶ月という。

また、ふだんの食事からの水銀の取り込みについては、「平成11年〜平成20年の1日摂取量調査における水銀の摂取量は、食品安全委員会が設定した妊婦を対象としたメチル水銀の耐容量の57%で、胎児に与える影響を十分保護できる量」とし、平均的な食生活では、健康への影響が懸念されるレベルではないという。

乳がんや心不全のリスク低下に貢献

米国では、魚に含まれるオメガ3系脂肪酸の健康への有益性を評価しており、「2005年度版栄養ガイドライン」では、1日8オンスの魚の摂食を推奨している。

フィッシュオイルがもたらす健康効果についての研究も盛んに行われ、有用性報告も相次いでいる。

最近の報告で、とくに女性に関わるものを挙げると、フィッシュオイルが乳がん予防に有用であることが、Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌'10/7月号に掲載されている。

Fred Hutchinson Cancer Research Center研究者グループが、ワシントン州在住で乳がんの兆候が見られない閉経期後の女性35,016人、50歳-76歳を対象に、ビタミン・ミネラル以外のサプリメント、ブラックコホシュ、大豆、セントジョンズワートなどに関するヒアリング調査を実施。

結果、オメガ3脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)の摂取は、乳がんリスクを32%下げることが分かったという。

また、オメガ3脂肪酸は女性の心不全予防に役立つことが、European Journal of Clinical Nutrition'10/4月号に掲載されている。 米国およびスウェーデンの研究者グループが、Swedish Mammography Cohortに参加した女性被験者36,234人、48歳-83歳を対象に、96項目の食品頻度調査を実施。18年の調査期間中、651人に心不全が認められた。

調査の結果、魚を1人分/週食べる場合と全く食べない場合と比べ、前者のほうが心不全リスクが14%低下することが分った。さらに2人分/週の場合は、リスク低下率が30%になったという。


参考:平成22年6月1日改訂「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項について」 >

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