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日本学術会議公開講演会「食の安全と安心をめざして」開催

10月22日、日本学術会議講堂(東京都港区)で公開講演会「食の安全と安心をめざして」(主催:日本学術会議)が開催された。一昨年のBSE(狂牛病)問題以降、残留農薬や偽装表示など消費者の食品の安全性への関心が高まっているが、当日、食品安全委員会の寺田雅昭委員長らが講演し、政府の取り組みやマスコミ報道の問題点など指摘した。

マスコミのセンセーショナルな報道を戒める発言も

昨今、食の安全性に関するさまざまな情報が伝播する中、マスコミによってもたらされる風評被害が懸念されている。
村上氏(女子栄養大学教授)は、「リスク情報とマスメディア」と題した講演で、魚類に含まれる水銀、狂牛病やダイオキシンなど、最近のマスコミ報道に触れ、マスメディアは不安を煽りたて注意を喚起しようとする癖があり、時に正確さに欠ける場合があると指摘。

「BSE問題に関する調査検討委員会報告」(平成14年4月)での第U部6項を挙げ、「マスコミの報道については、センセーショナルで集中豪雨的という批判がある。たしかに興味本位で不正確な一部メディアが存在するのは事実で、BSE問題でも誤解を招く報道があった。正確で科学的で分かり易い解説記事の充実が今後の課題といえよう。とくに日本のマスコミには食の安全についての専門家がほとんどいない上、掲載の頻度も欧米に比べて少ない。BSE発生前の欧米における対応の報道も不十分であった」とした。

また「食の安全と安心」のリスクコミュニケーションのために、マスメディアに、さまざまな立場の人びとが共に意見を交換し合う「フォーラム」の場としての役割を提案した。

食品安全委員会、全国470名の食品安全モニターによるアンケート調査実施

また、今年7月1日に食品の安全性確保に向けて食品安全基本法*注1が施行され、内閣府に食品安全委員会*注2が設置されたが、委員長である寺田雅昭氏は、「国民の健康の保護を最優先に、科学的知見に基づいた国民に信頼される食品安全行政が必要」とし、この3ケ月間の委員会の取り組みについて紹介。

厚労省、農水省から要請のあったものの中から、
1)延ベ15件について食品健康影響評価、
2)食品の安全性に関係する消費者、食品関連事業者、関係行政機関との意見交換、
3)全国470名の食品安全モニターによるアンケート調査、[PDF] 
4)国民からの食の安全に対する疑問に答える「食の安全ダイヤル」の設置
などを行ったことを述べた。

また、今後の活動方針として、食の安全に関する内外の情報収集体制の構築や緊急時対応マニュアルの作成、延ベ200名に及ぶ専門委員を選び、リスクコミュニケーションや緊急時対応などの専門調査会の活動を開始したことを報告。これらの活動内容は、厚労省HPの食品安全情報コーナーにおいて随時公開するとした。

食品の安全性の情報伝達に科学者とマスコミの協力欠かせない

また、小林氏(日本学術会議第7部会員、杏林大学医学部長)は、感染性食中毒について講演。発生の届け出件数は1990年の700件、2000年には2500件と増加し、最近では発生件数が増加しているが、患者数の増加はみられないとし、「衛生管理の向上、情報収集の効率化」を一要因として挙げた。

この他、唐木氏(日本学術会議廣6部副部長、東京大学名誉教授)は「安全・安心と科学者の役割」と題した講演で、危険な食べ物を見分けるためにうわさ話に敏感に反応する傾向があるが、錯綜する情報の中から、食品の安全を確信するために、リスク分析手法で食品の安全を科学的に確保すること、食品には情報を表示し選択できるようにすること、などを挙げた。


*注1食品安全基本法:国民の健康の保護を最優先に、農林水産物の生産から食品の販売に至る供給工程の各段階において、科学的知見に基づいた適切な処置がとられるよう、関係者の責務や役割を明らかにし、施策の策定に係る基本的な方針を定めることにより、今後の食品安全行政を総合的に推進しようというもの。
*
注2食品安全委員会:国会の同意を得て内閣総理大臣に任命された7名の委員によって構成。下部に16の専門委員会が設置。

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