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ヒトは活性酸素で毎日(最低でも)200mSv相当のDNA損傷
放射能問題最終章:放射能ノイローゼの棲む世界(1)

2011年3月12日、福島原発の水素爆発で立ち昇る噴煙は広島・長崎の原爆投下を想起させ、日本中が恐怖で騒然となった。あの日々から1年以上が過ぎ、次第に放射能の正体が明らかになっていったが、いまだ大マスコミによる放射能の偏向報道に国民の多くが汚染されたまま、放射能ノイローゼが癒えないでいる。

「放射能雲の通った地域、奇形発生率がドーンと上がる」

8月30日付けの朝日新聞によると、公益財団法人・日本生態系協会の池谷奉文会長が7月に行った福島原発事故に関わる講演の中で、福島以外に放射能汚染を受けた関東地方の県名を挙げ、「放射能雲の通った地域にいた方々は極力結婚しないほうがいいだろう」「結婚して子どもを産むと、奇形発生率がドーンと上がる」などと話したという。

後日、池谷氏は「一般論として私の見解を話した。差別する意図はなかった」としたが、福島市議会の佐藤一好議員らは「福島を特定した強烈な錯誤と差別だ」と池谷氏に修正を求める確認書を提出。これに対し、池谷氏は「4人の市議が私の発言をねじ曲げており、名誉棄損にあたる」と反論したという。

この顛末について、9月8付けの朝日新聞では、池谷氏より「誤解を生じさせる表現があり、誠に遺憾に思う」と福島市議らに説明文が送られてきたと報じている。

池谷氏のいう「奇形発生率がドーンと上がる」とは、はたしてどのような疫学データに基づいたものなのか。詳細なデータがあるのならそれを明示すべきであろう。

何ら検証に基づかない、根拠なき憶測による物言いは、多くの人々を不安に陥れ、傷つける。いたずらに恐怖心を煽り、福島や関東近県の人々への差別や偏見をもたらす極めて稚拙な発言と指弾されても仕方あるまい。

3.11から1年以上経過しても、いまだにこの手の不用意な発言が跡を絶たない。はては、こうした話に尾ひれが付いたデマがネット上を駆け巡り、リテラシー(分析力)の無い人々が放射能恐怖に駆り立てられている。

ヒトは活性酸素で毎日(最低でも)200mSv相当のDNA損傷

一体、放射線被曝による生体影響は、どの程度でもたらされるものなのか。
被爆後、数日〜30日程度である程度以上の線量を被曝した時に現れる影響を「確定的影響」というが、これにはしきい値(影響が現れない境界線)があり、高線量域(250mSv以上)でしか起こらないことが分かっている。例えば、一度に3Sv以上の放射線を浴びると、およそ30日程度で脱毛や皮膚障害が生じる。一度に2Sv以上の放射線を浴びると、およそ1年程度で白内障の症状が現れるとされる。

では、池谷氏の指摘する「結婚して子どもを生むと奇形発生率がドーンと上がる」とはどの程度の被曝量をいうのだろうか。胎児への「確定的影響」については、妊娠4〜10週では、100mSv以上で身体的発育障害が起き、妊娠10〜17週では、300mSv以上で精神・知能の発達障害が起こるといわれている。

昨年12月半ば、福島県立医科大と放射線医学総合研究所による福島県民を対象にした外部被曝線量の調査では、空間線量が比較的高い、飯館村、川俣町、浪江町の3地域の住民2万9千人のうちの1730人の推計値は、自然放射線(年間1.5mSv)を除いたもので、約半数が1mSv未満、残りの大半が1〜5mSv、10mSv以上が約40人、最高は37mSvであった。

こうした低線量被曝で「奇形発生率がドーンと上がる」などという具体的な実例があれば示していただきたいものである。このような配慮を欠いた軽率な妄言が世間の良識派から誹りを受けるのも当然である。

放射線に安全な被曝線量はなく(しきい値なし)、年間1mSvでもリスクがあると、福島原発事故後、マスコミにかつがれた原子炉研究家の小出裕章、武田邦彦らが煽り、とくに内部被曝が危険であると肥田舜太郎らが説き、日本中に放射能ノイローゼを増殖させたが、医療の専門家でもない彼らは、後述するが、ヒトは放射線とは関係なく活性酸素で毎日(最低でも)200mSv相当のDNA損傷が起きていることを知るはずもない。

ヒトは呼吸で酸素を取り込むが、そのうち2,3%がミトコンドリアで処理しきれず活性酸素となって体中を駆け巡る。また、紫外線を浴びると一重項酸素という活性酸素が発生する。ただ呼吸し、太陽を浴びているだけで日々200mSvの被曝レベルのDNA損傷が生じるのである。この活性酸素によるDNA損傷は大人も子供も同じである。

ICRP(国際放射線防護委員会)は、平時の放射線被曝の安全基準値を年間1mSv未満と勧告しているが、1日でその200年分に相当するDNA損傷が生じていることになる。

なぜ、こうした活性酸素によるDNA損傷を政府やマスコミが表沙汰にしないのか。おそらく、何も知らない、ということなのであろう。仮に、知ったとしても当然「隠蔽」しなくてはならないことである。なぜ、ひた隠しにしなければならないのか。その前に、ICRPの金看板である年間1mSvがどのような経緯で採択されたものなのか、振り返ってみる。

LNT仮説、ヒトのDNA修復機能を無視した未開人的発想

ICRPの年間1mSv未満という放射線の安全基準値の策定については、「直線的無閾値仮説」、いわゆる、しきい値無し直線仮説(Linear Non-Threshold:LNT仮説)に基づいている。放射線はたとえ微量でも有害で、直線的な比例関係にあり、脱毛や白血球の減少、白内障などはしきい値があるものの、発ガンや遺伝子的影響についてはしきい値はないものと仮定する、としている。いわゆる、安全な線量域はない、とみなすということである。

このLNT仮説は、1927年にJ.H.マラーが雄のショウジョウバエに放射線を当て、雌のショウジョウバエと一緒にして出来た2代目、3代目に障害が生じたとし、線量に比例して有害性が増すとしたものである。

この仮説が1958年にICRPに採択され、以降50余年、放射線の安全基準値策定の根拠として放射線医学の指導書に載り、放射線従事者の資格試験では、このマラーの実験をもって、どれほど微量の放射線でも安全なしきい値はなく、有害とされ、LNT仮説はもはや定説かのごとく位置付で、ゆるぎないものとなっていった。

しかしながら、後に、マラーの実験で用いたショウジョウバエはDNA修復機能のない成熟した特殊なハエの精子細胞を用いたものであることが明らかになっている。当然、ヒトにはDNA修復機能がある。しきい値なし直線仮説は当たらない。マラーのヒトをハエと同様とみなした、この未開人的発想の仮説が放射線医学の世界で金科玉条のごとく大手を振っていることを、良識派の専門家らは、「20世紀最大の科学的スキャンダル」と揶揄している。

この、いまだに多くの放射線従事者が信奉するLNT仮説を、電力中央研究所 放射線安全研究センターでは未成熟のショウジョウバエによる実験で追試しているが、DNA修復機能のあるハエの細胞では、しきい値が存在することを確認している。

さらに同所でのセシウム137を線源としたマウスの長期照射実験では、放射線の有害性が直線的に高まるどころか、200日を超える1.2mSv/時照射では、マウスの免疫系が理想的に整い、ガン抑制という結果にまで至っている。さらに寿命延長や糖尿病抑制などの効果も示されている。

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    放射線被曝の線量管理にLNT仮説は重宝

    LNT仮説はまだヒトのDNA修復機能もよく分かっていない、今から80年以上も前に打ち立てられたものだが、その後、さまざまな科学的検証で、人体影響に則したものでないことが次第に明らかになっている。

    それでもICRPがLNT仮説を押し通してきたのはどういう理由からなのか。実は、1947年から広島・長崎の被曝二世に対し、「寿命調査」と呼ばれる遺伝学調査が行われている。10万9千人の対象のうち、8万2千人が被曝者で、調査結果が1980年頃までにほぼ出揃う。この調査期間中の1977年、国連科学委員会(UNSCERA)は報告書で、被曝二世の親が受けた平均合計線量は400mSvだが、この線量レベルでも被曝二世に影響がみられていないことから、放射線によってヒトに遺伝的影響が生じたという科学的証拠は得られなかったとしている。

    マラーのショウジョウバエの実験は遺伝的影響をみたものだが、ヒトでは400mSvでも遺伝的影響がみられなかった。ヒトにはDNA修復機能がある。当然、DNA修復機能の無い特殊なショウジョウバエとは違う。では、それでICRPがLNT仮説を放棄したかというと、「遺伝的影響は重要だが、飛びぬけて重要ではない」とし、今度はガンも遺伝的障害と同様に「遺伝子の病気」であるからと、代わりにガンの「確率的影響」という概念を導入し、これをLNT仮説の主目的とした。

    それともうひとつ、ICRPがLNT仮説を手放せなかった理由。それが放射線作業従事者の線量管理に重宝であったということだ。「放射線管理に便利であった。放射線被曝の総量管理のために単純な足し算が使えた」 (岩波新書 舘野之男著『放射線と健康』)。

    科学的に根拠のないLNT仮説だが、放射線のリスク回避のため、線量管理という名目で使える。つまり、放射線管理の都合の良い方便として用いたわけである。後述するが、「ヒトの細胞では、1個の細胞あたり毎日100万件のDNA修復活動」が行われている。日々の被曝線量を貯金のように加算し、年間の被曝線量がいくらと算出する積算被曝には何の意味もない。ましてや、呼吸や紫外線で毎日200mSvからのDNA損傷が生じているのである。ヒトがDNA修復機能のない、ヒト科ハエ属という種でもあるというのならLNT仮説の積算被曝も通用するかも知れないが。

    ヒトの細胞、1個の細胞あたり毎日100万件のDNA修復活動

    当然、こうしたLNT仮説に基づく放射線の医療体系を猛然と批判する学者も出てくる。「DNA修復機能のないショウジョウバエの実験によるLNT仮説。何がノーベル賞だ。ヒトのDNA修復機能を全く無視しているICRP、こんなものを放置できるか」。そういって非難したのが米国DNA研究核医学会の大御所でカリフォルニア大学名誉教授のマイロン・ポリコーブ博士である。

    1995年、マイロン・ポリコーブ博士は放射線分子生物学の創設者であるルードヴィッヒ・ファイネンデーゲン博士(ドイツユーリッヒ研究所長)とともにワシントンD.Cに移住し、論文作成で共同研究にとりかかる。

    翌1996年、2人が発表した論文は、ヒトのDNA修復についての新たな論戦を提起するものとなった。内容は、「ヒトの細胞は活性酸素との戦いで、1個の細胞あたり毎日100万件のDNA修復活動を行っており、活性酸素との戦いは自然放射線の1000万倍のレベルでなされている」というものであった。 この衝撃的な内容により、翌1997年秋、スペインのセビリアで急遽、会議が開かれることになる。会議(WHO/IAEA共催)には、ICRP委員長以下650名が参加、1週間に及び、DNA修復についての問題提起がICRPに対し行われた。

    ヒトは日々活性酸素により1SvレベルのDNA損傷

    マイロン・ポリコーブ博士とルードビッヒ・ファイネンデーゲン博士が明らかにした、「活性酸素の攻撃力は自然放射線の1000万倍」という脅威。
    ここでいう自然放射線はいわゆる人工放射性核種がもたらす放射線と同意である。便宜上、自然放射線という表現を用いている。ヒトが日々受ける自然放射線(0.1〜0.2マイクロシーベルト)の1000万倍というと、1000,000〜2000,000マイクロシーベルト(μSv)=1000〜2000ミリシーベルト(mSv)=1〜2シーベルト(Sv)になる。つまり、日々、活性酸素によりヒトは1〜2シーベルト相当の攻撃を受けDNA損傷が生じているということである。

    活性酸素の発生源は酸素、紫外線、ストレス、薬剤、農薬や食品添加物などの化学物質、排気ガスなど日常の生活空間に多く潜んでいる。例えば、タバコは100種類以上の発ガン物質を含むといわれるが、その有害性は主に活性酸素の大量発生によるものである。1〜9本で3シーベルトに相当する内部被爆が生じると元ICRP委員で大阪大学名誉教授の中村仁信氏も指摘する。

    ヒトは地球に誕生以来、酸素や紫外線で1SvレベルのDNA損傷を受け続けてきた

    活性酸素とはどのようなものか。
    活性酸素とはいわゆるフリーラジカルと呼ばれるものである。体内でのさまざまな化学反応の過程で瞬間的に発生しては消えていく、対になっていない電子(不対電子)を持つ原子や分子のことである。電子は通常2個がペアになって安定しているが、フリーラジカルは不対のため、他の分子から電子を1個奪い、常に安定しようとする。この電子が奪われる現象が「酸化」である。電子を奪われた分子はフリーラジカルとなり、他から電子を奪い、さらに奪われた分子はまた他から奪おうとする。こうしたことが連鎖的に生じ、過酸化により老化が引き起こされる。

    ヒトは呼吸で酸素を取り込み、ミトコンドリアでエネルギーを作り出すが、2,3%がフリーラジカルになる。このフリーラジカルはミトコンドリアの外に漏れ出し、細胞膜や遺伝子DNAを損傷させる。酸素由来のフリーラジカルにはスーパーオキシド・ラジカルやヒドロキシル・ラジカルがあるが、とくにヒドロキシル・ラジカルは反応性が高い。細胞を酸化させる力が非常に強く、DNA損傷をも引き起こす。酸素はヒトの生存に不可欠なものだが、一方で活性酸素という毒性を有する諸刃の剣でもある、ということだ。

    呼吸だけではない。紫外線を浴びることでも、一重項酸素という活性酸素が発生する。つまり、ヒトは呼吸や紫外線で、常に活性酸素が発生し、DNA損傷が生じるという宿命をもって生まれてきているというわけである。

    マイロン・ポリコーブ博士とルードビッヒ・ファイネンデーゲン博士は活性酸素の脅威を「活性酸素の攻撃力は自然放射線の1000万倍」という。しかし、同時にこうもいえる。ヒトは地球上に誕生以来、常に酸素や紫外線で活性酸素にさらされてきた。活性酸素で日々1〜2SvレベルのDNA損傷が起きる環境の中で生きてきた。そのため、当然それに対する耐性を培っている。

    政府やマスコミが「隠蔽」する科学的検証事実

    これに関連して、『Radiology(放射線医学)April2009』に、モーリス・チュビアーナ博士、ルードビッヒ・ファイネンデーゲン博士らの連名による「直線仮説は放射線生物学実験データに合わない」という論文が掲載されている。

    論文(詳細)の冒頭で、毎日、活性酸素により200ミリシーベルトと同様のDNAの二重鎖切断が発生するとしている。この日々200mSv相当の活性酸素によるDNA損傷については、「最低でも」ということである。さらにいうと、毎日細胞あたりで発生する活性酸素による被害は二重連鎖切断8個。これは放射線による損傷の場合の1日あたり200ミリシーベルト、1時間あたり8.4ミリシーベルトの線量率に類似するという。

    余談だが、例えば、ガイガーカウンターを手に、10マイクロシーベルト/時をホットスポットで恐ろしいと怯えている時、体の中では放射能とは関係なくただ呼吸をし紫外線を浴びているだけで8.4ミリシーベルト/時(8400マイクロシーベルト/時)のDNA損傷が起きているということになる。

    おそらく、街頭をデモ行進している時に、放射能とは関係なく体内で1日に最低でも200,000マイクロシーベルトに匹敵するDNA損傷が起きていることなど誰ひとりとして知らないであろう。呼吸や紫外線だけではない。排気ガス、さらには過度のストレスで途方もない活性酸素が発生し、DSB(二重連鎖切断)が生じているのである。

    ちなみに、モーリス・チュビアーナ博士は、フランス医科学アカデミー代表で、1998年に、EUの科学者らと、ヒトの細胞に対し、さまざまな線量率でガンマ線照射実験を試み、その結果を2001年6月にダブリン(アイルランド)で次のように発表している。

    「10mSv/時以下の放射線照射で人体細胞のガン化はあり得ない。さらにガン抑制遺伝子p53の活性化によるアポトーシス(異常細胞の除去)もあり、10mSv/時以下の照射を長時間受けても、ヒトの体の細胞はパーフェクトで、発ガンなど考える必要はない。このことは100mSv/時以下でもいえるかも知れない」。
    モーリス・チュビアーナ博士には、2007年に低レベル放射線の専門家らから功績が評価され、マリー・キュリー賞が贈られている。

    放射能ノイローゼの棲む世界

    活性酸素で、大人も赤ちゃんも日々(最低でも)200mSv相当のDNA損傷が生じている。それも今に始まったことではない。地球に人類が誕生して以来、延々とこうしたことが続いている。

    この事実を政府もマスコミも知らない。たとえ、知ったとしても当然表沙汰にはしないだろう。まさか、呼吸で酸素を取り込むな。一切、日に当たるな、ともいえない。 放射能とは関係なく、呼吸や紫外線で1日200mSv相当のDNA損傷が起きているとは、NHK、朝日といった大マスコミも今さら恥ずかしくて報道もできない。

    セシウム137によるマウス実験でのガン抑制や寿命延長効果も「隠蔽」、活性酸素により日々200mSvのDNA損傷という、世界の放射線医学の最高峰が検証した科学的事実もひたすら「隠蔽」である。

    呼吸や紫外線で毎日200mSvのDNA損傷が起きているというのに、年間1mSv以内に食品や飲料を規制せよと声高に叫ぶ。こうした人々の住む世界を、「放射能ノイローゼの棲む」世界、とでもいうのだろうか。


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    電中研レビュー53:低線量放射線生体影響の評価」

    『Radiology(放射線医学)April 2009』
    活性酸素により日々200mSv相当のDNA損傷
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