米国・代替医療への道 2002
米国マスコミの健康関連報道の裏側 / 狂牛病で、代替ミートに熱い視線 / チルドレン向けサプリが順調な伸び / NIH、サプリ研究報告トップ25を公表 / 性機能や更年期対策サプリで活性 / 健康的な「食」の新ガイドライン発表 / 堅調に推移、米国ダイエット産業 / サプリVS医薬品の相互作用② / 中国産ダイエット食品、医薬成分配合 / サプリVS医薬品の相互作用① / 信頼回復の基盤作り進む / 肉から魚へ、進む”魚食”化 / 認知される穀類の有用性 / 「食」が代替医療の中核に / 2002年度「がん現状・統計」報告 / NATURAL PRODUCTS EXPO2002 / 高齢化で、アンチエイジングが好調 / 栄養療法でがんを撲滅できるのかアメリカでは今年、がん患者の5年生存率は62%に達し、前年を2%上 回ると予想される――全米がん協会(ACS)はこのほど、各種データをもと に作製した2002年度版「がん現状・統計」の中で、そんな朗報を伝えた。 国をあげての禁煙キャンペーン、食事改善、運動推進、そして定期検診などの 予防対策が効を奏したものと見られている。がん種類別の今年の罹患・死亡・ 生存率と、アメリカにおける「がんとの闘い」のあゆみをまとめた。
注目株は前年同様、大豆たんぱくとオーガニック
健康フリークともいえるアメリカでどんな新商品が登場するかは、今や世界の 関心事となっている。今回の出展ブースは2,400。全米はもとより世界73カ国 から訪れたバイヤーをはじめ入場者は29,000人を数えた。
同展示会の主催団体「ニューホープ・ナチュラル・メディア」のトレードショー・ カンファレンス部門ヴァイス・プレジデント、ケイ・ガザウェイさんは、今年の 傾向を次のように語る。
「昨年に引き続き、大豆とオーガニックもの、機能性食品がホットなアイテムで す。ほかにドリンクやスナックバーの新商品も多い。錠剤よりも食品でビタミン、 ミネラルを摂りたいという傾向が強くなっています。こらからもこれは続くと思 われます」
サプリメント市場、経済減速とネガティブ報道で停滞
主催団体の統計によると、アメリカのハーブ、ビタミン、ミネラルといったサプ リメント市場は170億ドル、パーソナルケア市場は38億ドル、オーガニック食品 市場は110億ドル。
サプリメント市場は、経済減速さらにメディアのネガティブ報道を受けて、ここ 1、2年横ばい状態が続いている。サプリメントの中でも特に下火になっている ような印象を受けたのがハーブ。ガザウェイさんは言う。
「ここ2年ほどハーブがらみのネガティブな報道が確かに目立ちます。ですが、 ハーブはまだまだ強力な市場といえるでしょう。問題は消費者の誤解を招くような報道が多い。たとえば、セントジョンズウオート を例にあげると、『重度の鬱状態にまったく効果なし』という研究報告が発表され たとたん、マスコミは効き目を疑問視する切り口でいっせいに書きたてました。 でも、セントジョンズウオートはもともと、マイルドな鬱状態を改善するハーブ であって、最初からシビアなものに効くとはいっていないはずです。そこのところ をきちんと説明しないから、消費者はまるで効かないと思い込んでしまう。誤報が 誤解を招く。業界にとって商品の開発だけでなく、正しい知識を広めていくことも 今後の大きな課題といえる」
「噛めること」がトレンドに
アメリカでは最近、噛んで食べられるサプリメントに関心が集まっている。子供の おやつに大人気、小熊の形をしたジェリー「ガミーベア」。会場では、そのサプリ メント版が注目を集めていた。フルーツフレーバーのガミーベアに、ビタミン、 ミネラル、カルシウム、エキナセアといった素材を組み合わせたニュートゥリシ ョン・ナウ社の商品(www.nutritionnow.com)。
これなら、錠剤を飲み込むのが苦手な子供でも容易に栄養素を吸収できる。同社のキャラメル感覚で食べられる カルシウム「カルシウム・ソフト・チュウズ」も売れ筋だ。 噛めるカルシウムといえば、最も有名な「Viactiv」は、発売からわずか1、2年で 1000万ドルの売り上げを記録したほど。
サプリメントは大きくて飲みにくい、薬みたいでイヤ―そんな消費者心理を狙った 「噛めるサプリメント」ブームの到来を予感する業界アナリストは少なくない。 業界紙「ニュートリション・ビジネスジャーナル」の中で、ジェネシス・リサーチ グループのマーケティングディレクター、ビル・フロエスさんは、「アメリカの関節 炎治療薬市場は医薬品、サプリメント合わせて100から200億ドルといわれている。 『噛めるグルコサミン』でわずか1%でも市場に食い込めれば売り上げは大きい。 ビジネスの可能性は大きい」という。
水に溶かすタブレット型サプリメントも注目
「噛む」ほかに、ブースには水に溶かして飲めるタブレット型サプリメント 「Vitazings」(www.vitazings.com)も登場。かぜや疲れに効くマルチビタミン、 ストレス、二日酔い、マイルドな鬱状態に効くビタミンBコンプレックスとCの混合、 体の痛み、こむら返り、精神的不安の緩和に効くカルシウムとマグネシウムの混合 のほか、必要に応じてビタミンやミネラルを組み合わせたタブレットを作るという。 メリットは、錠剤よりも飲みやすく、吸収力が高いこと。
できれば錠剤よりも食べ物で栄養素は摂りたい―という消費者心理は、機能性食品 のブームですでに立証済みだ。そこでサプリメントも「噛める」「飲める」の時代 になってきたといえるだろう。食品に近づいた分、味という新たな課題を背負って、 食品感覚のサプリメントがどこまで伸びるか興味深いところだ。
ストレス社会米国に新たなブレインフード「NADH」登場
ブレインフードのスパースターといえばギンコ(イチョウ葉)。ところが、ここ 最近、別の素材に新たな関心が寄せられている。それが「NADH」。体内で作られる 補酵素で、アメリカではすでに「ENADA」、「ENADAlert」の商品名で、健康食品店 などで販売されている。時差ぼけによる疲労感や慢性疲労症の症状を和らげるほか、 寝不足でボートした頭をスッキリさせ思考力を高める、またアルツハイマー病など の脳の老化を防ぐ―などの効き目があるという。
ブースでNADHを紹介しているmenuco社のマーケティング・セールス・バイスプレジデ ント、オクタビアン・ぺシャーさんは「NADHの効き目は科学的に裏付けられて いる。消費者の信用を得るためにも、サプリメントの効果を科学的に立証することは 重要だ」と強調する。
ニューヨーク・プレスバイタリアン病院附属ウエイル医科大学で、健康な中年層25人 の被験者に対し、NADHの効き目を調査しているが、24時間まったく寝ていない被験者 を2グループに分け、NADH20mgと偽薬をそれぞれ与え、認識力テストを行なったと ころ、明らかにNDAH組の方が好成績を上げたことが分かったという。
これまでのところ、NDAHについての副作用は報告されていない。全米睡眠協会によると、
アメリカ人の69%が「よく眠れずに頭がボートしていることが多い」と訴えている。
NADHについては、昨年12月、ニューズウイークが取り上げたほか、他のメディアも熱
い視線を注いでいる。