米国・代替医療への道 2002
米国マスコミの健康関連報道の裏側 / 狂牛病で、代替ミートに熱い視線 / チルドレン向けサプリが順調な伸び / NIH、サプリ研究報告トップ25を公表 / 性機能や更年期対策サプリで活性 / 健康的な「食」の新ガイドライン発表 / 堅調に推移、米国ダイエット産業 / サプリVS医薬品の相互作用② / 中国産ダイエット食品、医薬成分配合 / サプリVS医薬品の相互作用① / 信頼回復の基盤作り進む / 肉から魚へ、進む”魚食”化 / 認知される穀類の有用性 / 「食」が代替医療の中核に / 2002年度「がん現状・統計」報告 / NATURAL PRODUCTS EXPO2002 / 高齢化で、アンチエイジングが好調 / 栄養療法でがんを撲滅できるのか子供向けサプリメントの売れ行きが順調に伸びている。店内にチルドレン・セ クションを設ける健康食品専門店も出てきたほどだ。錠剤の苦手な子供たちで も摂りやすいようにと、ジェリーやリキッドに加工して、さらに味にも工夫を こらしたサプリメントを買い求める親が増えている。小さいころから親しめば、 一生涯通じてサプリメント愛好家になる可能性大―と、業界関係者はチルドレ ン市場に熱い視線を注いでいる。
チルドレン市場は5億1千万ドル
業界紙「ニュートリション・ビジネス・ジャーナル」によると、子供向けサプ リメントの売り上げは昨年、推定5億1千万ドルで、サプリメント総売り上げ 178億ドルの2.9%を占めた。
サンフランシスコに拠点を置くマーケット・ リサーチ会社「SPINS」も、子供向け商品の中でも最も売れているビタミ ン・ミネラル複合サプリメントは、2000年5月から2001年同月にかけ 21.5%の売上増を記録したと報告している。市場全体でみたビタミン・ミ ネラルの売り上げ上昇率は7.3%とあまりパッとしない中、チルドレンズ市 場がやたらに元気がいいのが分かる。
なぜチルドレンズ市場が伸びているのか
ブームがおさまって安定期に入ったかにみえるサプリメント市場で、なぜチル ドレンズを狙った商品が活況を呈しているのか?答えは簡単。需要が高まって いるからだ。
時間に追われる現代社会でゆっくり料理など作っている時間などない。 そこでジャンクフードが氾濫し、栄養のバランスなどおかまいなしのお手軽料 理、添加のたっぷり入ったレディーメイド・フードが主流となり子供たちの食 生活はいまや危機に瀕している。そのうえ、汚染がますます進む環境下で育っ ていれば、昔に比べ免疫力が落ち、アレルギーになりやすく、神経系も弱って いるという。
国立衛生研究所(NIH)の2000―2001年調査報告によると、ここ 10年間に、耳の炎症に苦しむ子供の数は136%増、喘息が200%増、 注意欠陥・多動性障害(ADHD)が500%増となっている。全米でも大気 汚染ナンバーワンのカリフォルニア州では、喘息は300%も増えている。
子供向けサプリメントは期待の星
また、全米の子供の約16%がなんらかのアレルギーを持っているという。 連邦農務省のこんな報告もある。12歳から19歳の子供のうち、カルシウム と鉄分の推奨摂取量を毎日きちんと摂っているのは、男子で36%、女子では なんと14%だった。カルシウムと鉄分不足は真剣な問題になっている。
そこで、不足した栄養素を補い、弱った免疫力を高めようとサプリメントが 注目された。ただし、子供と大人では推奨摂取量が異なるため、「子供専用」 の必需性が高まったというわけだ。米国毒物管理センター協会は1986年か ら1997年にかけ、約11万件にのぼる子供の鉄サプリメント過剰摂取によ る被害報告を受けている。鉄分過剰摂取で死亡した子供の17%は、ほかの人 のピルを飲んでいたという。「医薬品じゃなくてサプリメントだから子供が大 人用を飲んでも大丈夫」と思ったら大間違いだ。
そんな背景から、子供用のサプリメントの必要性が高まっており、ニッチマー ケットの期待の星となっている。また、業界関係者の中からは、「これまでサ プリメントを摂り始める年代といったらだいたい30代ごろから。それが、子 供のころからとなれば、生涯通じてサプリメントを利用する人が増えるわけだ」 と、子供にかける期待は大きい。
そこで気になる売れ筋カテゴリーは、複合ビタミン・ミネラル、免疫強化サプ リ、ブレインサプリに、ニュートリション・バー。それぞれをちょっと詳しく 見てみてみよう。
* 複合ビタミンとミネラルのコンビネーション
子供用サプリメントの人気ナンバーワン。グミベアーのように噛めるタイプと リキッドタイプが主流。とくに、リキッドタイプはジュースなどに混ぜて飲め ることから4歳以下と小さな子供に人気だ。両タイプとも1日のビタミン・ミ ネラル推奨摂取量を含んでいる。リキッドタイプの中に安息香酸ナトリウム、 またソルビン酸カリウムを含んでいる商品があるため、服用の際には注意が必要。 いくつかの研究報告で、いずれの添加物も多動性障害との関係が指摘されている。
* 免疫強化サプリメント
ビタミンC、エキナセア、亜鉛、エルダーベリーなど、種類豊富。ただし、ハー ブに関して子供の適量を示すデータが不足していることから、安全面を危惧す る声もあがっている。
* ブレインサプリメント
ブレイン・サプリメントといえばまず思い浮かぶのが、シニア向けに「記憶力 向上」「ボケ防止」。しかし、子供となると用途はまったく異なり「ADHD」 となる。疫病予防センターによると、ADHDと診断されている小学生は現在、 少なくとも160万人。薬で治療するほか、食事療法とサプリメントの組み合 わせで症状の改善が行われている。ビタミンB複合サプリメント、DHA、ビ タミンCとぶどうの種抽出液に含まれるproanthocyanidinsの組み合わせ、亜鉛 とマグネシウムの組み合わせ―などの効果が報告されている。
* ニュートリション・バー
こちらも大人に必要な栄養量を含んだものを子供が食べても安全?―という 発想から生まれた商品。スナック感覚で食べるため、おいしさ作りが売れ行き の決め手と各社こぞってフレーバー作りに力を入れている。リサーチ会社 「ミンテル」によると、1999年のススナックバー市場は10億ドル、その 半分をニュートリション・バーが占めている。女性と子供をターゲットにした 商品の開発が盛んになっているという。
一方で「必要ない」との声も
サプリメントで摂るよりもできれば食品から―というアドバイスは大人も子供 も同じ。サプリメントはあくまでもサプリメントで、食品のリプレイスメント にはならないと声を大にする人は多い。医者の中からは「子供がサプリメント を摂る必要はないし、場合によっては危険だ」という指摘も。
というのも、子供の場合、特に鉄、葉酸、カルシウムは、年齢によって摂取量
がかなり異なってくるからだ。また、腎臓や肝臓に障害のある子供は、サプリ
メントを摂取する前に必ず医者に相談するよう呼びかけている医療関係者は多い。