米国・代替医療への道 2002

米国マスコミの健康関連報道の裏側 / 狂牛病で、代替ミートに熱い視線 / チルドレン向けサプリが順調な伸び / NIH、サプリ研究報告トップ25を公表 / 性機能や更年期対策サプリで活性 / 健康的な「食」の新ガイドライン発表 / 堅調に推移、米国ダイエット産業 / サプリVS医薬品の相互作用② / 中国産ダイエット食品、医薬成分配合 / サプリVS医薬品の相互作用① / 信頼回復の基盤作り進む / 肉から魚へ、進む”魚食”化 / 認知される穀類の有用性 / 「食」が代替医療の中核に / 2002年度「がん現状・統計」報告 / NATURAL PRODUCTS EXPO2002 / 高齢化で、アンチエイジングが好調 / 栄養療法でがんを撲滅できるのか

米国健康産業、性機能や更年期対策サプリメントで活性
ここ数年、米国で吹き荒れたサプリメント旋風もおさまり、多少停滞感のある 米国健康産業界。ハーブをめぐるネガティブ報道がかなり前面に出てきたこと もあり、活路を求めての攻防が続いている。その一方で、性機能改善や更年期 障害症状緩和を謳ったサプリメントのニーズが高まっている。米国健康産業の ニッチ市場の動きを追った。

  売り上げ急増の精力増強サプリメント

グローバル市場で昨年、約150億ドル相当のバイアグラが売れた。このバイ アグラ・フィーバーの副産物としていま、注目されているのが精力増強サプリ メント。ヨヒンベ、マカ、ホーニー・ゴート・ウィードといったハーブを主 成分とするいわば「天然版バイアグラ」だ。

ハーブへのネガティブ報道で、売れ筋ハーブの売り上げが軒並み下降線をたど る中、業界の救世主として精力増強サプリメントに大きな期待が寄せられてい る。

バイアグラが1998年に登場したことで、男性の性機能不全が大きく取り上 げられた。それにつられ、ここ数年、女性の性への問題も公然と論じられるよ うになり、この手の悩みを抱える人がいかに多いかが浮き彫りになった。アメ リカだけでも性機能不全に悩む男性は推定3千万人。女性にいたっては、それ をはるかに上回る。アメリカン・メディカル・アソシエーション誌(JAM A)によると、全米の女性総人口の41%にあたる4千万人が、性に対する 欲求や不満で悩んでいるという。

そういった需要にこたえバイアグラが飛ぶように売れるなか、「天然もの」へ の関心が高まってくるのは当然の成り行きだ。健康産業業界紙「ニュートリ ション・ビジネス・ジャーナル」によると、2001年の売上伸び率は、マカ が300%、ホーニー・ゴート・ウィードが67%、ヨヒンベが40%。

同年、売れ筋ハーブはいずれも、エキナセアが-20%、ギンコ-35%、ジンセン -33%とマイナス成長を記録したものの、ハーブの総売り上げそのものは 前年比1.4%伸びている。精力増強ハーブが大きく貢献しているといえるだ ろう。
そこでホットアイテムを取り上げてみると―。

○ヨヒンベ

  日本でもお馴染みのハーブ。ヨヒンベはアフリカ原産のヨヒンベの樹皮から 抽出したエキスで、中枢神経を刺激し、抹消の血管を拡張させることで、男性 の性機能不全を改善する。しかし、血圧や心拍を上昇させる恐れがあるため、 高血圧、糖尿病、緑内障、精神障害、および抗鬱薬・血圧降下薬「モノアミン 酸化酵素阻害薬(MAOI)」を服用している患者は、使用を控えること。

○マカ

ペルーの高地原産。ペールでは長年にわたり男性の性機能不全治療に使われて いる。プロテイン、鉄分などの必須ミネラルが豊富に含まれ、栄養価が高く、 アンデスで生活する人々にとって、日々の生活に欠かせない植物。

南米を征服したスペイン人が、高地の環境に順応できず生殖機能が落ちたタネ馬に、原 住民の勧めでマカを与えたところ効果があった、と当時のスペインの記録に 残っている。ほかにも動物実験でマカの効果が立証されているものの、薬物や 治療法を調べる際に使う二重盲式の臨床実験の研究報告はない。 

○ホーニー・ゴート・ウィード

中国で長年にわたり使用されている薬草。性ホルモン「テストステロン」の 分泌を促し、前立腺と生殖器周辺の筋肉を活性化し、生殖器の感覚を敏感に する働きがある。今のところ、ホーニー・ゴート・ウィードだけを使った臨床 実験のデータはない。

しかし、ニューヨークで実施された、同ハーブの抽出液 を主成分としたフォーミュラを使った臨床実験では、男女ともに60%近く の効果が報告されている。加えて、心臓および腎臓疾患にも効果がある可能性 があるとして注目されている。

生殖能力改善サプリも初登場

性機能改善に加え、新たなホットマーケットとして注目されているのが、生殖 能力改善サプリメントだ。アメリカで子供ができないで悩んでいるカップルは、 全体の15%を超える。不妊の三分の一は男性の生殖不能、別の三分の一は 夫婦ともに問題があるといわれている。しかし、多くの場合、不妊は治療可能 だ。

そんなところに目をつけて、カリフォルニア州マウンテンビューに拠点を置く デイリー・ウェルス社が、アメリカ初の生殖能力改善サプリメント 「FertilityBlend」を開発した。今のところ唯一の生殖サプリメント。精力 増強サプリメント「ArginMax」のメーカーとしても有名な同社によると、アメ リカだけでも毎年、約38億ドルが不妊治療に使われているという。

スタンフォード大学医学部が女性29人を対象に二重盲式の臨床実験を行った。 15人に偽薬、14人にFertilityBlendを投与したところ、三カ月後、偽薬組 の妊娠がゼロだったのに対し、FertilityBlend組は4人が妊娠している。

ところで気になる成分だが、女性向けFertilityBlendには、ホルモンのバラン スを整え、排卵を誘発する働きのあるハーブ「Vitex(chasteberry)」、生殖器 周辺の血行をよくするアミノ酸、L-arginine、抗酸化作用のある緑茶、ビタミ ンE、セレン、先天性欠損症の危険を抑える葉酸、生殖能力を向上させるビタミ ンB6とB12、ミネラル、鉄、亜鉛、マグネシウムが含まれている。

また、男性向けFertilityBlendには、健康な精子作りに役立つといわれる アミノ酸、L―カルニチン、抗酸化作用で精子の数および質を向上させるビタ ミンCとE、緑茶、セレン、同じく質を向上に効き目があるフェルラ酸、ホルモ ン代謝など男性の生殖機能に大切な栄養素、亜鉛、ビタミンB群が含まれてい る。 同商品は現在、全米1万1千店で販売されている。

活気づく更年期サプリメント市場

更年期障害をターゲットにしたサプリメント市場もにわかに活気づいている。 というのも、今年7月に、長期にわたるホルモン療法は乳がんなどの罹患率 を高める恐れがあるとう研究報告が発表されたからだ。更年期サプリメント への関心を高めようと、各社がこぞって激しい広告合戦を展開している。

ほてりや情緒不安定といった更年期の症状を緩和することからホルモン療法 を受けている女性は現在、全米で約600万人。北米更年期障害協会による と、ハーブや鍼療法などの代替医療を受けているのは、症状に悩む女性の 30%というから、業界としてはまだまだ市場拡大が狙えるホット市場だ。

ニュートリション・ビジネス・ジャーナルによると、更年期症状緩和サプリ メントの売り上げは昨年、約2億4800万ドルで、前年比5%増。成分と しては、ブラック・コホッシュ、大豆、カルシウム、複合ビタミン、複合 ハーブ、大豆などが売れ筋。

ベビーブーマー世代の女性が次々に更年期に突入している今、ホルモン 療法のネガティブ報道と、サプリメント業界のアグレッシブな広告が、 今後の売れ行きにどう影響するか注目されている。