米国・代替医療への道 2003

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サプリメントの製造、安全性への監視システム強化に本腰
米国におけるダイエタリー・サプリメントの小売産業は大きな変換期を迎えて いる。独立販売店は顧客との関係を密にし、サプリメントや科学知識情報の 提供に力を入れるなど、さまざまな工夫で、売上向上にやっきとなっている。 また、インターネットによるオンライン販売の台頭が競争激化に拍車をかけ、 従来の大量販売店やチェーン店も販売形態の変革を迫られている。とはいえ、 最終的に消費者の心をつかむのは、品質への信頼性だ。「エフェドラ」問題で 揺れる米国ダイエタリー・サプリメント業界は、FDAばかりか、消費者からも サプリメントの安全性についての監視システムの強化を迫られ、正念場に立た されている。
※ダイエタリー・サプリメント:ハーブ、栄養補助食品などの健康食品、米国  では一般的にdietary(食物の) saplimentと呼ぶ。

  小規模小売店、集客にマッサージやヨガ教室など一工夫

米食品医薬品局(FDA)の報告によると、米国のサプリメント市場では現在2万 9千以上の商品が販売され、さらに年間1千件以上の新製品が紹介されていると いう。自然・健康食品産業の売上は150億ドルに到達し、拡大基調にあるが、 製薬産業もダイエタリーサプリメント部門を拡張を図っており、競争激化は 年々激しさを増している。

小規模の販売店や独立小売店においては、大量販売店、チェーン店との戦いに どう挑んでいくかが、大きな課題となる。

例えば、中西部のナチュラル・プロダクツ小売業では大量販売店との差をつけ るため、マッサージ療法、リフレクソロジー、ヨガ教室を開いている。また、 別の販売チャンネルでは顧客の要望に応じたセミナーや講演を開催するなど 工夫を凝らしている。ヨガ教室に参加したり講演を聞いた顧客がその後、大体 は製品を購入していくという。また、顧客などを対象にした指導・教育にも 入れている。

チェーン店や大手販売店などは顧客への情報提供テクノロジーを導入している 一方、小規模店や独立店舗は「ヘルスフード小売業は、大量販売店では対応 しきれない顧客の信頼感を勝ち得ることが大切」として顧客との一対一のサー ビスに努めている。

リアル(店舗)とバーチャル(ネット)との融合で売上アップ図る

サプリメントの売上げを確保するには、サプリメントの配置が重要といわれる。 例えばWal-Martは、ストア内ストアというコンセプトの元、店内にニュートリ ション・センターを設置し、サプリメント製品、ヘルススナック、ホメオパシー 療法剤、さらにナチュラルヘルス関連の書籍や雑誌、パンフレットなどを集中的 に取り扱っている。

また、CVSやWalgreensのようなチェーン店でも、処方箋剤を調合するファーマ シー・コーナーの前あるいは近くに商品棚を設け、いつでも専門家に相談、 あるいは質問できる状況を整えている。独立店では、サプリメント販売コーナー に隣接してコンピューターセンターを設置。参照サイトや健康相談のできるサイト へアクセスできるようにしている。

すでに多くのファーマシーがサプリメントのオンライン販売を導入しているが、 例えばEckerd’sやWalgreensなどがオンラインストアを持ち、販売のみならず、 ヘルシーリビングやニュートリションニュースなどの情報も提供している。 最近、CVSファーマシーとIntramedicineが提携してオンライン販売事業を開始 し、ナチュラル・メディスンの売上増強を図っている。

FDA、サプリメントの優良製造基準求める提案

ところで、サプリメントの売上げに大きく影響を与えるのが、サプリメントの 有効性に関するネガティブ報道。昨年、日本でも一部中国製ダイエット用健康 食品による健康被害の報道によりダイエット製品の売上が失速したが、この3月 米国でも、ダイエット成分として人気のある「エフェドラ」配合のサプリメン トを服用し、メジャーリーグの選手が死亡するという事件が発生し、サプリメン トの品質管理に対するFDAへの監視体制を求める声が高まっていた。

「エフェドラ」に関しては、全米で12万人以上が服用しているといわれるほどの 人気商材であったが、'94年以降、心臓発作、脳卒中、高血圧など800件以上の エフェドラ関連の健康被害が報告され、使用の際の警告が行われていた。

こうした経緯もあり、このほど米食品医薬品局(FDA)では、ダイエタリーサプ リメントのラベル表示で正しい情報を顧客に提供するための新しい規定として、 ダイエタリーサプリメントにも医薬品の優良製造基準である current good manufacturing practices(CGMP)を求める提案をまとめた。

ラベル表示と違う欠陥商品が市場に存在

この提案ではCGMPを確立することによって、ダイエタリーサプリメント製品や 同成分が汚染されていない、あるいは不純物が混じらない、活性成分がラベル 表示通りに配合されている、ラベルに表示されている以外の成分が配合されて いないか、などを明らかにすることを目的としている。

前述の「エフェドラ」以外にも、サプリメントの品質劣化を問う声が米国で 挙がっているが、最近民間の研究所が市場に出回っているサプリメント製品を 分析したところ、様々な欠陥商品が見つかった。

例えば、検査した大豆あるいはレッドクローバー製品18件のうち5件で、イソフ ラボンの含有量が表示されている数字の50-80%しか含まれていなかった。 また、検査が行なわれたプロビオティック製品25件のうち8件については、配合 成分が1%未満だった。

さらにFDAは、有害物質汚染という点にも注目している。例えば、ある企業に対 しては、多くの利用者、特に子どもや妊娠適齢の女性に健康被害を与える可能性 のある量の鉛が含まれており、そのサプリメント製品にリコール措置をとった。 また、あるナイアシン(ビタミンB3)製品は、その利用が吐き気、嘔吐、肝臓傷 害、心臓発作の発症に関連するとして同じくリコール措置がとられている。

完全な監視システムで、製品の安全性が確保

同提案の最終承認が得られれば、まず消費者にとっては、常に品質が標準を クリアした製品を手にできること。その品質とは、純正であり、有効性が水準を 満たしていることを示す。

一方製造業者は、サプリメント配合成分の安全性、有効性を立証する責任を有する ようになる。さらに、採用従業員の資格や身元保証を明確にし、原料から製造段階、 箱詰めなどのパッケージング、そして配送にいたるまで完全な監視システムを確立 し、製品の安全を確保することが求められる。

また、各製品の品質に対する消費者からの苦情記録を保管、原料やサプリメント 製品に関する記録を製造日から3年間は保管することが求められることとなる。