米国・代替医療への道 2000

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遺伝子組換え食品、米国で安全性論争再燃
9月18日付のABCニュース・ウェブ版は、メキシカン・ファーストフード店「Taco Bell」で使っているタコシェルの原料に、飼料だけにしか使用が許可されていない遺 伝子組替えコーンが含まれていることを伝えた。このコーンは、アレルギー反応を引 き起こす恐れがあるとして、食料への使用は認められていない。この報告を受け、米 食品医薬品局(FDA)はこのコーンの混入経路などについて既に調査に乗り出した。 検査されたコーンはメキシコでTaco Bell用として製造されたもので、販売元はKraft Foods社。Kraft社は回収作業を開始していた。穀物農家に動揺が広がり、ここにきて 再び遺伝子組換え(GE)食品の是非を問う論議が白熱している。米国における最新 状況を報告する。

  Aventis社の遺伝子組み換えコーン、アレルギー反応を引き起こす恐れ

問題のコーンは、Aventis社が製造した遺伝子組み換えコーンのStarLinkで、害虫 に対して効力のあるバクテリア遺伝子を持つというもの。また、ヒトの消化器官では分 解に時間がかかる特殊プロテインCry9Cを含んでいるという。

このCry9Cが長く器官にあると、抗原と認識され人によってはアレルギー反応を引き起こす恐れがあると考えら れた。Aventis社は1997年、動物並びに人の食料への使用許可を申請したが、1998 年、FDAは家畜飼料に限定して使用を許可している。

Cry9Cプロテインの安全性あるいは危険性を裏付ける研究報告はこれまで行われていない。Aventis社研究グループ は、「StarLinkは抗原にはなりえない。また、そうだとしても食物連鎖の中にとどまるの はきわめて短時間で、しかもごく少量のためアレルギー反応を引き起こすことはない」 と主張している。

FDA、遺伝子組換えコーンの疑わしき食品など300製品をリストアップ

StarLink自体の生産量は通常、コーン全体の約1%だといわれる。EPAはStarLinkのト レースを行ったが、StarLinkコーンは、今年収穫し食品産業に販売したコーンの約 0.14%。そのうちの1.5%については行く先がつかめないでいるというが、EPAは「消 費者の口に入る危険性はきわめて低い」との見解を示した。

また、米食品産業はStarLinkに関する新しい科学的データを政府機関に提出、人への食料含有物としての 安全許可を勝ち取ろうという動きに出ている。さらに、食品製造業者は、FDAに 「StarLinkは食料品業界の中で『避けるべき汚染物』ではないとの言明」を求めるロ ビー活動を強めている。

一方、Taco Bellのコーンシェルを食べた後副作用が出たとの報告が14件入ったが、FDA並びに疾病予防センター(CDC)などが調べたところ、 StarLinkとの証明はできなかった。FDAは11月初め、StarLinkコーンが含まれると疑 われる食品など300製品のリストをまとめているが、大手レストランからは殆ど回収 されている。またEPAは、11月28日に公聴会を、また12月1日のパネル開催を予定し た。

今後議会で、ラベル表示の義務付けを再び話し合う予定

今回の騒動で、GE食品に対する風当たりは強くなっている。議会はGE食品に対する 圧力を強化しようという動きに出ているが、その動きはFDAにも及びそうだ。今後議会 では、GE食品についてのラベル表示義務付けを再び話し合う予定。ラベル表示に関 しては、「GE食品であることをわざわざ明示することは、食品に不都合があるという悪い イメージを持たせる」として不必要と食品会社からの強硬な反対にあっている。

こうしたことから、Greenpeaceは10月、独自にGE技術によるコーン、大豆、カノーラなど穀類 を原料にした製品のリスト「Shopping List」を発表した。これでは、食品をベビーフード、 シリアル、冷凍食品、スナックなど20項目に分類。それぞれを、完全にGE食品、段階 的にGE原料を除去している食品、GE原料を使っていない食品の3つに分けている。 Greenpeaceは「消費者は、自分たちが何を食べているのか知る権利がある」と述べて いる。

一方で開発企業は、多大な予算をかけ「安全」CMをTVで放映

さらに、議会はFDAにもGE食品に関する綿密な検査を要請していく構えを見せている。 FDAは12月に、GE食品に関する新しいガイドラインを発表する予定だが、これでは、 食品製造会社はGE食品を市場に出す最低4ヶ月前にFDAにその旨通知することを求 めている。

1992年に施行された現行のFDAポリシーによると、製造会社はGE食品の新 製品販売の意向だけをFDAに打診すればいいことになっている。また議会は、GE食品 に対する独立した考えを示す州法ではなく、姿勢を一本化した政府条例をまとめあげ ることを目標にしている。一方、Monsanto社など開発者側は5千万ドルまでの予算をか け、「GE食品は安全」というメッセージをテレビコマーシャルで流していくことにしている。

日本からStarLinkコーンの出荷拒否申し入れ

StarLinkコーン騒動は世界にも波及している。穀類輸出の超得意先の日本からもGEへ の反発がさらに高まっている。日本政府は、消費者団体からの反発に答えて、アメリカ 側にStarLinkコーンを日本へ出荷しないよう申し入れた。

これを受け、アメリカ側は日本に向け出荷するコーンの検査を始めた。さらに、アメリカと日本は11月21日、日本向け に出荷されるコーンに食品使用が許可されていないGE原料が含まれないことを確認す るモニターシステムを設けることで合意した。

GE食品に対しアメリカの世論は厳しさを増す

遺伝子組み替え(GE)食品に関しては、その安全性、ラベル表示、輸出入などの問 題が世界的に議論されるようになりかなり経つ。GE食品とは、例えば厳しい天候や害 虫などに強い穀物を作るため、そうした遺伝子を持つ素材から遺伝子をもらったもの をいう。

このようにして、害虫に強い作物が出来上がったら、殺虫剤を使用すること なく作物を豊富に収穫でき、世界の食糧難を回避、さらには疾患に強い食料で様々な 難病も予防できると考える。

だがその一方で、そうした遺伝子操作された食品はヒトの健康に悪影響を及ぼすことが 懸念されている。例えば、ピーナツなどにアレルギー反応を示す人が、何らかの理由で ピーナツの遺伝子が組み込まれた食品を知らずに食べた場合、致命的な反応を起こす ことも考えられる。

こうしたことから、ヨーロッパなどでは反対意見が優勢を占め、かなり 厳しいチェックが行われる。この一方で、アメリカはGE食品に対して寛容で、FDAは「 既に自然界にある素材を別のモノに混入することは安全」という見解を示し、GE食品に 対する厳しい規制は行われていない。

調べによると、1999年、GE穀類はアメリカ穀類生産の25%を占め、その中にコーン35 %、大豆55%が含まれている。だが、最近では、GE食品に対しアメリカの世論は厳し さを増している。USA WEEKENDが行った最新調査によると、「ラベル表示の無いGE食 品の販売は合法か」との質問に79%が「ノー」と答えている。

また、ロイターなどが行った世論調査では、1千210人の回答者の3分の1がGE作物の生産を許すべきではない と回答。こうした世論に押され、Frito-Lay社は2000年初め、全製品にGEコーンの使 用を中止する意向を示した。ベビーフードのGerber社やHeinzも離乳食製品に関し同 様の姿勢を既に示している。