米国・代替医療への道 2001

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コンプレックス商品~「バイアグラ」など依然好調な売上げ
米国において、今やテレビ、雑誌、新聞の広告欄の定番の感もある性機能回復剤の 「バイアグラ」、育毛剤の「ロゲイン」「プロペシア」といったコンプレックス商品。全国紙 USトゥデーの統計によると、1999年上半期に取り扱い企業がつぎ込んだ広告料ベスト 5に、「プロペシア」と「バイアグラ」が名前を連ねている。いうまでもなく、その売り上げは、 投資した広告料とほぼ正比例している。高齢化時代の到来とともにこうした「コンプレッ クス商品」の需要が大きく伸びている。米国で、栄養補助食品の売上げが失速傾向に あるにもかかわらず、「バイアグラ」などの「コンプレックス商品」にかぎっては相変わらず 元気がいい。「コンプレックス商品」市場の現況を報告する。

  バイアグラ利用、世界で700万人超え

米国食品医薬品局(FDA)がバイアグラを許可したのは1998年3月。翌4月に発売 され、以降、バイアグラ旋風は止まるところを知らない。売り上げは99年が10億ドル、 昨年はその倍の約20億ドルと、今や製造元ファイザー製薬の押しも押されぬドル箱 商品へと成長した。

同社によると、現在、世界でバイアグラを利用している男性は700万人を超え、発 売されて以来、2200万錠が処方されたという。これまでに服用した患者の中から約50 0人の死亡が報告されているが、いずれもニトログリセリンなどの硝酸薬との併用で 血圧が急に下がったことが原因であると確認されている。

今年3月には、服用前後24時間以内のニトログリセリンの併用さえ避ければ、「安全で、 むしろ心臓によい」という内容の3つの研究報告が、オールランドの学会で発表された。 いずれもバイアグラが冠動脈中の血液の流れをスムーズにすると結論付けており、売 れ行きに追い風をかけるものとなっている。

新たな購買層の開拓、ミドルエイジから若年層までもがターゲットに

ところで、そんなバイアグラの広告にちょっとした変化が起きている。98年から 99年にかけての広告を見ると、いかにも人生をエンジョイしているシルバーグレー で、年のころはおそらく60代後半から70代はじめの男性が、同世代と思われる妻 と仲むつまじく寄り添う写真…。あくまでもターゲットは年配の男性であること が一目瞭然であった。それが2000年になって、どうも様子が変わってきた。

ブラウンヘアーをなびかせたハンサムな30代半ばほどの男性が、若い女性と仲む つまじく寄り添う姿…。ターゲットを若年層へと狙い始めた。発売当初にあった「バ イアグラ=シルバーライフの活性化」という感覚が薄れつつある。ここにきてあえて 薄れさせる戦略を企業が練りはじめたともいえる。

最近、雑誌にのった広告のキャッチフレーズは「Take the First Step」。完璧な 勃起不全とまでいかなくても、マイルドな勃起不全、性機能になんらかの不満を感じた ら、すぐに医者に相談してバイアグラを処方してもらう。つまり、「不満が芽生えた ら、すぐに第一歩を踏出そう」というわけだ。バイアグラの新たな購買層の取り込み に意欲をみせる。

一方、闇マーケットでバイアグラを手にいれた若い人たちが、コカインなどの麻 薬と併用し大きな社会問題になっている。麻薬で精力が落ちるのをバイアグラでカ バー、また精力を強化しマッチョなイメージ作りに役立つなどの理由から、大学構内 やクラブなとでパーティー向け「スリル・ピル」として出回っているという。

ポスト・バイアグラを狙い、各社ED市場に参入

全米で約3000万人の男性が勃起不全(ED)で悩んでいるといわれる。バイア グラの登場で、男性の性機能不全の問題が公然と議論されるようになり、インポテン ス医療が加速。市場の大きさに目をつけて、ポスト・バイアグラを狙えの動きが活発 になってきている。

その先陣を切ったのが、米国のTAP製薬が開発を進めた「Uprima(アパモ ルフィン)」。バイアグラが血液の流れを上げ勃起を促すのに対し、Uprimaは 脳の中枢神経に働きかける。副作用として吐き気などが指摘されていたが、臨床実験 も順調に進み、昨年4月にも販売かと注目されていた。

ところが、服用した男性30人に1人が、急激な血圧の低下で意識を失っていたことから、TAP社は昨年六月、 さらに安全面での研究が必要と、FDAに提出していた販売許可申請を取り下げた。

次なるポスト・バイアグラと注目されたのは、テキサス州の医療技術会社「Zon agen社」のVasomax。しかし、これもどうやら市場にお目見えするのはま だまだ先の話しになりそうだ。

FDAに性機能不全薬として承認申請を提出したのは さかのぼって98年。CNNをはじめマスコミが「バイアグラに最強のライバル出現」など と騒ぎたてたが、FDAは99年、臨床実験の「全面差し止め」を命令、翌年には「一部 差し止め」にアップグレードしたものの、同社は現在、ネズミで実験中。同社の社長兼 最高経営責任者のジョセフ・ポドルスキ氏は「販売許可取得を目指し今後も研究を続 けていく」と話している。

バイアグラの女性版に傾注も、未だ決定打は現れず

バイアグラの登場で男性の勃起不全薬の開発に拍車がかかったおかげで、女性の性 機能不全もクローズアップされはじめた。「バイアグラの副作用は離婚」などという 記事が飛び出し、このままでは男性と女性のミスマッチが広がるばかりと心配された からだ。

ある統計によると、米国女性の64%が性機能でなんらかの問題を感じたこ とがあるという。さらに、閉経後の女性に限った問題ではないことも明らかとなっ た。ただし、男性のインポテンスほど問題は深刻ではないといわれている。

これまで女性の性欲、性感の減退などの治療法といえば、精神科のカウンセリング やホルモン療法だった。それが、バイアグラの出現で、「女性の治療も飲み薬ででき ないものか」ということがいわれ始めた。

まず、試されたのが、ともかく「バイアグラ」。男性のペニスの血流量が増えるならば、 女性にだって―と、女性の患者に服用させた結果が幾つか報告された。しかし、「女 性の性器の血流量が増え、性感が改善された」と「偽薬とほぼ同じで効果なし」の賛 否両論。いまのところ、決着つかずの状態だ。

そこで今、盛んに騒がれているのが、「バイアクリーム」。メンソール USP,L-arginine UPS、アミノ酸などが成分だから、処方箋なしで購入できる。クリ トリスの下部に塗ると、血流量を増やし性的反応を高めるという。

また、Procter&Gamble社が、ホルモン「Testosteron」のスキンパッチ(皮膚にはるパッチ)を開発 中。子宮などで分泌される同ホルモンは性機能に大きく働きかけることから、閉経後 や子宮摘出でホルモンが減少すると、性欲や性感にネガティブな影響を与えるといわ れている。そこで、同社のスキンパッチは、Testosteronのレベルを引き上げるとい うもの。しかし、残念ながら今のところ、「バイアグラ」ほどセンセーショナルな女性向け 治療薬は姿を現していない。

米国「育毛剤」市場は今

米国で「バイアグラ」と同様、センセーショナルを巻き起こしているのが「ロゲイン」 「プロペシア」などの育毛剤。

髪が薄くなってきた、どうしよう―。日本と同じように米国でも、そんな悩みを抱 えている人は多い。男性で5000万人、女性で2000万人ともいわれ、育毛剤の 市場は年間ざっと1億2500万ドル。現在、米国で開発されたFDA承認の育毛剤 は、Pharmacia & Upjohn社のロゲイン(1996年許可)と処方箋のいるMerck社の プロペシア(97年許可)だけ。

利用者ひとり当たりの出費は月に約100ドル、しかも効き目を維持したいならば永久使用が必須ときているから、まさにドル箱市場で ある。ちなみに、ロゲインの今年第1四半期の売り上げは2600万ドルと、前年同 時期の2400万ドルを上回った。

ビタミンやハーブなどのサプリメント、また針療法が育毛に効果ありと一時は注目され たが、栄養補助食品では「特に認められない」、針は「効く効かないと議論が分か れ決着付かず」の状態。しかし、既存医療の医者も東洋医学の専門家も 「髪が薄くなってきたと気づいたらすぐ手をうって」と、早期発見・即対応が鍵とい う点では意見が一致している。

というわけで、今のところ、育毛剤の代表選手は「ロゲイン」か「プロペシア」。いずれ も初期の段階で効き目が高く、副作用はほとんどないといわれている。ここ最近、性 機能回復剤と同じように「女性だって悩んでいます」と、女性向けの育毛剤の開発も 進み、女性専用ロゲインも発売されたが、妊娠中は胎児に悪影響ができため使用を 避けるよう警告している。

「プロペシアの5倍の効き目」があるという育養剤も登場

ある統計によると、「プロペシア」利用者の10人に8人、「ロゲイン」利用者の半数近 くが、髪の薄くなるのが止まった、あるいはゆっくりになったと報告しているという。しか し、以前のように髪がふさふさになったと回答したのは、「ロゲイン」で10%、「プロペ シア」で30~40%だった。併用による効果アップの可能性を示唆する医者もいるが、 結論は出ていない。

現在、「ロゲイン」、「プロペシア」に続けと新しい育毛剤が開発されている。その中で期 待の星は、「プロペシア」の効き目を上回るというGlaxo社のDutasteride(GI198745)。 同社は昨年末、FDAに新薬として承認申請を提出しており、今年末にも発売が予定 されている。

Dutasterideはもともと良性の前立腺増殖の薬で、使用しているうちに副作用とし て育毛効果が発見されたというもの。「プロペシア」が育毛剤として姿を現すのと同じ経 由を辿っている。

つい最近発表された臨床実験の結果によると、「プロペシア」が髪の 薄くなるのを止め、その状態を維持する点で効果がある一方、Dutasterideは「また 毛がはえてくる」という「プロペシア」の果たせなかった役割もカバーし、髪の悩みを抱 える人には嬉しい「プロペシアの5倍の効き目」があるという。

また、血管を作るプロテインのVEGFに育毛の働きがあることがマウスの実験で 立証され、育毛剤への活用に関心が寄せられてはいるが、商品化までの道のりはまだ まだ遠いといわれている。