米国・代替医療への道 2001

増加する若年性アルツハイマー / ホメオパシー療法の最新研究 / 遺伝子組み換え、栄養強化など開発 / 一般食品の機能性食品化に拍車 / ネットビジネス、監視体制強化 / アロマセラピー市場、成長株に / 急伸するオーガニック市場 / 「代替医療」への抵抗勢力 / サプリメント、虚偽広告規制へ / コンプレックス商品、好調な売上げ / 米国代替医療~①ハーブ・サプリ編 / アンチエイジング市場に活路 / ビタミンEなど、有効性が論議の的に / サプリメント、妊娠中摂取の問題点 / 拡大するオーガニック市場 / ビタミンなど1日の標準推薦量報告 / 「ニューエイジ・ドリンク」がブーム

米国代替医療~①ハーブ・サプリメント編
現在米国のハーブ・サプリメント市場の伸びが鈍化している。1994に施行されたDSHEA(栄養補助食品健康教育)法と90年代に入って米国で巻き起こった代替医療ブームで、米国栄養補助食品業界はまさに我が世の春を謳歌したが、1998年に米国NIH(国立衛生研究所)が代替医療の研究推進を目的とした機関、NCCAMを設立し、大幅に予算を投入し、ハーブ・サプリメントの徹底検証を始めたあたりから少しづつ状況が変わってきた。セント・ジョンズ・ワートなど研究途上の報告とはいえ、マスコミが取り上げるたびに、国民の間にハーブ・サプリメントへの信頼感が揺らぎ、マーケットが反応した。今回より、米国における代替医療の近況を数回に分けて報告する。今号では、代替医療の中核ともいえるハーブ・サプリメントについてこれまでの流れと、NCCAM(National Center Complymentary and Medicine)の取り組みなど総括する。

  ハーブによる代替医療の利用者は1999年で13%に

米国Kaiser Permanente社が健康保険HMOの加入者6万人以上を対象に代替医療の利用についての調査を行ったところ、1996年に6%だったハーブ療法の利用者が、1999年では13%に増加したことが分かった。中でも、65歳以上の女性の場合、1.2%から9.6%へと大きな増加率を示した。この間、ハーブ・サプリメントの売上げもこれを裏付けるかのように2桁成長が続いていた。しかし、2000年の売上げについてみると前年比の1.2%増にとどまり、業界関係者の間で動揺が広がった。

DSHEA法施行以降、米国サプリメント産業は160億ドルに急成長
こうしたハーブが代表する代替治療の急成長は、1994年のDietary Supplement Health and Education Act(栄養補助食品健康教育法=DSHEA)施行から始まったといえる。ビタミン、ミネラル、ハーブ類などの栄養補助食品は医薬品ではなく全て食品扱いとなり、製造会社は製品の安全性、有効性を裏付ける大規模な研究資料を米食品医薬品局(FDA)に提出し、厳しい審査を受けることなく市場で販売できるようになった。

このため、ドラッグストアばかりでなくスーパーマーケットでもハーブ製品の数は増え、次々とヒット商品が生れた。以来7年、サプリメント産業は毎年2桁台の伸びを示し、160億ドルを売り上げる巨大マーケットへと成長していった。

思いもよらぬ急成長、政府機関の支援と検証のメス

1994年にDSHEA法を成立させた議会も、サプリメント産業がこれほどまで急激に成長するとは思いもよらなかったであろう。政府自体も急成長を遂げる代替治療に関心を示した。1993年に米国立衛生研究所(NIH)内に発足したThe Office of Alternative Medicine(OAM)で、少しずつハーブなど代替治療の研究への支援に取り掛かった。しかし、それまでの研究内容に対する不信感など、代替医療の批判派、支持派双方からも疑問が噴出するようになる。

その後1998年に膨張する代替治療への国民の関心に対応するためOAMは規模を拡張し、新たにNational Center for Complementary and Alternative Medicine(NCCAM)として業務を開始した。(この間の経緯については「Health Net Media/ヘルスネットメディア」(代替医療はどの程度有効なのか~米国で徹底検証開始)を参照。
http://www.health-station.com/topic108.html

エフェドラ、コンフリー、ヨヒンベなどに副作用報告

こうした政府機関がハーブ・サプリメントの検証に乗り出したことで、成分の安全性の問題などもクローズアップされてきた。また、DSHEA法の問題点もささやかれるようになった。DSHEA法により、製造業者はサプリメント販売前に医薬品のような厳しい検査を受けなくてもいいことやハーブ使用では歴史の浅い米国で研究も始まったばかりで消費者がまだ正しい使用知識を得ていないことなど、問題点が指摘されるようになった。

まず、最初にハーブで問題視されたのが、ダイエット製品などに配合されていたエフェドラ。このハーブが原因で卒中を起こしたとする提訴で、今年初め、裁判所は被害者に1,330万ドルの賠償を認める裁定を下している。エフェドラの副作用は卒中のほかに、心臓発作、高血圧なども挙げられている。

またエフェドラ以外にも、中国薬草のAristolochia fangchi(ウマノスズクサ科)が腎不全や尿道がんなどに関連することが指摘されている。現在、FDAはこのハーブの輸入を差し止め、市場からの回収を命じている。英国、ドイツ、オーストラリア、カナダなどでもこのハーブの使用を禁じている。

この他、コンフリー、ヨヒンベなども副作用が懸念されている。FDAは、副作用が心配される製品の回収に関する権限はもっているが、その前に安全ではないということを大規模な研究で実証してみせなければならない。これは、FDAにとっても重荷になっている。

FDA、法整備に具体的な動き

こうしたことから徐々に、「消費者を守るものではない」としてDSHEA法への風当たりは強まり、さらなる政府の規制強化を求める声が高まっていった。DSHEA法の批判派は「一番の問題は、商品が市場に出回る前にFDAが消費者の安全を守れるようなステップを取れないこと」と指摘する。サプリメント産業自体も独自の安全コントロールシステムを設置する動きを取っている。また、多くの専門家は、ドイツのコミッションEに似たシステムを持ち、サプリメントの安全性と有効性を再審査できる独立したパネルの登場を心待ちしている。

FDAは2000年1月、DSHEA法の完全施行と安全面で消費者に安心を与えるための10年計画「ダイエタリーサプリメント・ストラテジー」を明らかにしている。その一環として、FDAは昨年秋、米科学アカデミーがハーブ評価のプロトコルを確立する支援として100万ドルを援助した。また、FDAとは別に、処方箋や市販薬の安全基準を設定する米薬局方(USP)も、サプリメントの全国的な資格認定システムを形成するためのパイロットプログラムを開始した。このプログラムは、USPの基準に合格したサプリメントに、ラベル表示通りに配合されていることを証明するマークが貼付される。

セント・ジョンズ・ワート、グルコサミン、サメ軟骨などの大規模研究が進行中

ヨーロッパなどに比べ米国のハーブ研究は遅れをとっているが、それでもNIHのNCCAMなどを中心に現在、これまでにない規模でサプリメント研究が進んでいる。

例えば、
(1)鬱症状に対するセントジョンズ・ワートの有効性
12ヵ所で、軽度の鬱病患者300人以上を対象にセントジョンズ・ワートと偽薬の比較研究が行われている(予算430万ドル)。すでに、研究途上のものが出ているが、大筋は今年後半の見込み。

(2)関節炎に対するグルコサミンとコンドロイチンの有効性
13センターで患者約1千600人を対象に偽薬との比較研究を行っている。最終結果は2005年3月に出る予定(1千400万ドル)。

(4)痴呆症の予防にギンコビロバの有効性
75歳以上の1千500人に対し痴呆症とアルツハイマー疾患の危険性低下の有効性を偽薬と比較している。2005年に終了の予定(1千500万ドル)。

(5)前立腺肥大に対するノコギリパルメットの有効性
中度から重度の前立腺肥大患者224人に対し、1日2回の投与で偽薬との比較研究が行
われる。現在、被験者募集中(170万ドル)。

(6)がんに対するサメの軟骨の有効性
Mayo Clinicの乳がん、結腸がん患者600人を対象にした研究、テキサス大学の肺がん患者500人が参加した研究。この両グループは現在、化学療法ならびに放射線療法を受けている。終了は2002年夏の予定――など。

NIHは、この他、パーデュー大学のBotanical Center for Age-Related Diseas、イリノイ大学のBotanical Dietary Supplements for Women’s Health、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のCenter for Dietary Supplement Research、アリゾナ大学のCenter for Phytomedical Researchの4つの大学センターでの研究にも支援を行っている。

疾病予防のために、「心と身体の相関」が注目

また最近、神経科学、微生物学、心理学、社会科学分野から専門家がNIHに集結し、身体と心の相互作用を話し合うコンファレンスが開かれた。そこでのテーマは主に、人の精神状態が身体の健康に関わる際の生理学的メカニズムであった。現在、米国ではこうしたマインド&ボディ、つまり感情と疾患の相関について関心が集まっている。

医師たちは、ストレスや鬱症状が免疫システムを傷つけるといった、精神状態が疾患を招くことに昔から気づいており、この現象は既に10年程前から始まってはいたが、現在新たな時代に入ったといわれる。研究者たちは、今、疾患と感情のコントロールの関係についての研究に本腰を入れ始めている。