米国・代替医療への道 1997

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米国代替医療の現状<蜂毒>療法

  アスピリンの代わりに蜂毒が用いられるケースも

「蜂の一刺し」は時として致命的なものとなる。だが、この「一刺し」を使った治療法が確立されている。これは、主にミツバチの毒を使用するもの。リュウマチ、神経痛などの炎症性疾患に作用すると言われる。
養蜂家のスタンフォード・ブラウン氏(77)は、極度のリュウマチ痛に悩まされている。この治療を始めて25年。

「全身がねじ切れるような痛みだった。痙攣を起こし体が硬直して、ベッドから落ちることなど何度もあった。痛み止めにアスピリンを1週間に100錠も飲んでいた。今はアスピリンの代わりに蜂の毒」。ミツバチを引っ張り出し、肌に当て針を刺す。週に3回ほど、その症状により回数は増減する。

蜂の分泌物などを治療に使うApitherapy(蜂治療)は、中近東や中国では23千年前から取り上げられていた形跡がある。現在では蜂蜜、ろう、プロポリス、ロイヤルゼリーなど幅広く活用されているが、ミツバチの毒を使った治療法(BVT)が行われているところは今のところ、中国、韓国、ルーマニア、ブルガリア、ロシアなど限られた地域のみ。米国でも蜂の毒使用は、公式には脱感作や減感に限定されている。しかし、蜂の毒に関する科学的文献は世界で1500以上にも上り、現在でも研究調査に乗り出す機関は増えている。

米国では4,000人が蜂治療を経験

「American Apitherapy Society」のテオドール・チェルブリエス博士によると、蜂の毒は40ほどの要素から成り立っている。主なところで、11ペプチド、5酵素、3活性アミン、炭水化物、脂質、アミン酸。代表的なペプチドは、ハイドロコーチゾル(炎症疾患に使用)の100倍以上の作用が期待できるというメリチン、強力な抗炎症物質アドラピン、神経伝達系統強化物質アパミンなど。相互に刺激し合い、抗炎症、抗菌、解熱作用を引き出す。また、全体として免疫機能を強化する。

こうしたことから、同治療は慢性的な痛みを伴う、腱炎、繊維筋炎、神経炎、神経痛、リュウマチ、多発硬化症(MS)などに使われる。米国ではMS患者の推定4千人がこのBVTを受けたことがある、または受けているという。

ブラジルでは喘息治療にも応用。その他にも更年期障害で起こる様々な症状、帯状ほう疹、皮膚腫瘍、慢性疲労症候群(CFS)、性的不能などにも作用するといわれる。

長期的な追跡調査の欠如を懸念する声も

BVTにあたるのは、主に養蜂家。または、患者本人や付き添いでも蜂の取り扱いかたを習得すれば治療はできるという。巣箱などからピンセットで蜂をつまみだし、肌にあてる。蜂が針を出し、一刺しするという具合。刺す場所や回数、治療を受ける期間などは患者の疾患や状態により変わってくる。例を挙げると、関節炎のような慢性的疾患では1回に45針で、1週間に23回。期間は13ヶ月間程続けるという。

同治療の一般的副作用は、はれ、かゆみといったもの。しかし、全身痙攣を起こし死にいたるアナフィキラー・アレルギー反応を起こす危険性があることも事実。だが、主にスズメバチ科の毒で反応を起こしやすいと言われ、幾つかの調査でもミツバチによる反作用は5%以下であることが報告されている。

しかし、医療関係者の中には、この蜂治療を危険として警告を発する者も多い。医学的に綿密な研究調査が行われていないこと、既に治療を受けている患者の長期的で大規模な追跡調査がなされていないことなどを理由に挙げている。だが、ユタ大学の元教授、オースティン・ハウ氏の「花粉症と蜂治療」研究を始めとし、ジョージタウン大学が蜂の毒エキスに関する研究を開始、また「多発硬化症協会」が同様の研究に資金提供を発表したことなど、科学者の目がミツバチの毒に集まりつつある。