米国・代替医療への道 1997

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米国の健康関連機関・PAHO

  ワシントンを拠点に北、中、南米諸国の保健衛生に寄与

すべての人びとに可能な限り高い水準の健康をもたらすことを目標とする世界保健機関(WHO)。世界6地域に置かれたその地域機関のひとつ、ワシントンDCを拠点に、カナダ、アメリカ、メキシコなど北・中・南米諸国の保健衛生向上を推進しているのがパン・アメリカン保健機関(PAHO)だ。PAHOに属している国々の政治、経済、環境、保健衛生などの現状を踏まえ、4年計画(1995―98年)を打ち出すなど、積極的な活動を行っている。

PAHOは、「すべての国で60歳以上の平均寿命を達成」などを盛り込んだWHOの第9次総合計画(96―2001年)をもとに、北・中・南米諸国の保健衛生の現状を考慮したうえで、次のようなゴールをかかげている。

(1)生活水準に関係なく、すべての人が健康的な生活をより長くおくれるようにする。
(2)ある一定の基準に達した基本的な保健衛生サービスをだれもが受けられるよう目指す。
(3)子供および青少年の健康向上をはかる。
(4)ターゲットとする人口層の健康向上をはかる。
(5)健康な人口を増やす。
(6)地域の健康上の問題となる主な病気の排除と抑制を行う。
(7)安全で健康的な生活環境を整える。
(8)すべての人が健康的な生活を受け入れ、維持できるようにする。
(PAHO Strategic and Programmatic Orientations95-98より) 

鉄分不足の貧血症患者9,400万人の救済に乗り出す

こういったゴール達成に向けPAHOは、さまざまな方策を立てており、中でも(1)加盟諸国が問題を解決するうえで必要なリソース収集の援助(2)情報の提供(3 )加盟諸国間で自由に情報交換できるよう情報システムの強化(4)地域のトレーニング施設の充実推進や奨学制度による各国技術者の海外研修への助成(5)リサーチ奨励(6)加盟諸国独自の計画および方針作成の援助―などの「技術的な援助」の方面に特に力を注いでいるという。 

具体的な活動状況を見ると、近年、北・中・南米諸国で約9400万人の健康をむしばんでいる鉄分の欠乏と貧血症の対策に乗り出し、各国と協力し鉄分補強プログラムを展開中。特に、妊婦の40%以上、6―12カ月児の50%が貧血症という中南米で、安く消費量の多い小麦やコーンの穀粉に鉄分を加え栄養強化をはかるほか、妊婦や幼児に鉄分補強剤を供給し、2000年までに貧血症患者を1/3減らすという目標達成に向け尽力している。 

流行病学上の見地から暴力とメディアの役割も監視

また、北中南米で問題になっている「暴力による死」も最近の大きな課題。PAHOの調べでは、暴力による死者は1日に1250人以上、アメリカだけでも65人を数える。中国では平均すると10万人に1人が殺されているのに対し、北中南米では10万人に20人と、20倍に跳ね上がる。PAHOはこういった現状をもとに、暴力防止に向け各国と協力し、流行病学上の見地から暴力とメディアの役割の監視を行っているほか、問題への社会的な意識を高める努力を続けている。

今年で創立95周年を迎えたPAHOは、世界で最も古い公共保健衛生局で、WHOの地域機関としても名高い。政府、非政府組織、地域団体と協力し、健康と生活の質の向上を目指し精力的な活動を展開している。