米国・代替医療への道 1997

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米国代替医療の現状<祈>療法

  科学者たちが「祈り」の治癒力を認識しはじめた

原因不明の体の不調、医薬品の副作用、高額な医療費、医療ミス。こうした西洋医学の落とし穴から逃れようとする人々が、鍼、漢方、自然・家庭療法への意識を高めている。その特異な例として、「ヘルシー・リビング春夏号」は「祈り」に注目、治療との関わりかたについての記事を掲載している。

プロ・フットボールのデニス・バード選手は試合中首を骨折、二度と歩行は無理と医師から言い渡された。だが、現在自力で歩きはじめている。10ヶ月の乳児が肝臓移植手術後肺炎を併発、危篤状態に陥った。しかし、24時間以内に回復、無事退院した。いずれの例も外から行われた祈りが作用したとしている。

こうした例は、タブロイド版の記者が作り上げた記事、あるいはテレビ伝道のネタとしか受け止められない。だが、これまでこの手の「治療」を無視し続けてきた科学者らが最近になって、「祈りと治療の因果関係」を認めはじめている。

外部からの「祈り」も患者に影響

「祈り」は、祈る本人に与える影響が大きいことが、すでに科学的に証明されている。瞑想は、血圧の低下や心臓病の悪化抑制の働きをするが、「祈り」も同様の作用をするといわれる。ヒトはストレスを受けると、副腎からコルチゾール、エピネフリンといったホルモンを流出する。流出が短い間なら刺激から保護しようとする働くが、長い間、あるいは頻繁に流れ出すと免疫機能を傷つける。瞑想や祈りを行うことによって、余分のホルモン流出を阻止する。

では、反対に外から祈られることと治療の関係はあるのだろうか。全米健康健康協会(NIH)は19世紀以後発表された250の研究調査を基に、がん、心臓血管系統の疾病、高血圧症、大腸炎、腸カタルなどの疾病に外からの祈りが積極的に働くことを確認した。家族、友人、ある種の宗教グループなどによる祈りがある患者は、それを持たない患者より回復が早いと結論づける。オハイオ州ボーリング・グリーン大学の心理学者、ケネス・パーガメント博士は「我々は神を直接計測することは不可能だが、信じるということの影響力を計ることはできる」と述べている。

1,000病院対象の調査でも「祈り」の効果明らかに

1993年イスラエルで発表された、公務員1万人の26年間追跡調査では、正当派ユダヤ教徒は心臓血管障害で死亡する率が、「無信心」の者より低いという。

また、ニューハンプシャー州のダートマス大学研究グループが、開心手術後の患者250人を追跡した1995年の研究報告によると、宗教背景のある者また宗教社会からの支持がある者は、持たない者より12倍死亡率が低い。デューク大学が1000病院を対象に1987年から89年までの患者を調査した結果、祈りなどの宗教的行いを実行した患者は、まったく経験しなかった患者より闘病への意欲が高かったことが分かった。

さらに、患者本人が祈られていることを知らない場合の祈りの働きを調べた研究もある。心臓学者、ランドルフ・バードはサンフランシスコ総合病院の冠動脈科病棟に入院した患者の393人について調査した。患者は、外からの祈りを受けるものと受けないものがあったが、どの患者がどちらの分野に入るかは患者本人を始め、医師、看護婦にいたるまで知らされなかった。これによると、祈りを受けた患者は抗生物質の投与が5倍、肺浮腫を併発する率も3倍少なかったという。さらに、気管内挿管法を必要とした患者は一人もいなかった。

NIHはじめ、多くの研究団体が「祈り」の作用に関心寄せる

では、祈りはペニシリンの代わりになるのだろうか。多くの科学者の答えは「NO」だ。だが、NIHはその答えを探しはじめる。最近の学会で、高血圧症治療のために従来の薬剤投与に心理療法を加えるかどうかの話し合いを行っている。また、ニューメキシコ大学でもアルコール中毒治療に与える祈りの影響についての研究が進行中。その他シアトルのバスタイア大学で祈り治療の研究が進んでいる。だが、祈りの「メカニズム」自体はまったく解明されていない。祈る者から、ある種のとらえにくいエネルギーが放出されるという説、「メディカル・シティ・ダラス・ホスピタル」の元医学部長、ラリー・ドッシー博士を始めとし量子物理学の領域と捉える説、さらに生物学者、ルパート・シェルドレイクが唱える空間、時間の拘束を受けない「形態形成」の領域説と様々だ。結局、解明できないままだからこそ、我々はこれを「奇跡」と呼ぶしかない。

ドッシー博士は言う。「よく自問自答したものだ。『自分を科学者と呼ぶ時、科学的にデータがそろっているものを患者に使用しないのはただの無責任ではないか』と。現在、私は病院に出勤すると、毎朝礼拝を欠かさない」