米国・代替医療への道 1998

「食」に不安、栄養補助食品に期待かける米国 / 過熱する健康情報メディア、問われる信憑性 / 膨張する米国民医療費、高まる予防医学への期待 / 米国のがん罹患率、1990年から毎年0.7%減少 / 糖尿病人口急増、予備軍含め1,600万人 / 食餌と「キレ」る行動との関連 / 米国・ぜんそくアレルギー患者の実態 / 米国におけるアトピー・アレルギー人口の現状 / ミネラルウオーター人気依然根強い、米国水事情 / ホルムアルデヒドなど、米国で深刻化する室内空気汚染

過熱する健康情報メディア、問われる信憑性

  健康雑誌の創刊ラッシュ、昨年フィットネス関連で14誌登場

米メディアは健康がらみの情報提供にかなりの力を注いでいる。というのも、需要と供給の関係からだ。咽から手が出るほど正確で役に立つ健康情報を望んでいる消費者にこたえ、報道はますます加熱していくばかり。特に、ここ2年ほどは、センセーショナルを狙うばかりに誇張された報道傾向が目立つという批判的な指摘もある。

雑誌売り場をのぞいてみると、「フィットネス」「シェープ」「ハーブ」といった健康を扱った雑誌が所狭しとばかりに並んでいる。昨年だけでも、スポーツマガジン103誌、フィットネスマガジン14誌が創刊された。

  それだけに競争は激しいといえるだろう。新しい雑誌の半分近くは創刊1周年をみずに消えていく。5年生き残るのも、10誌のうちわずか3誌と少ない。消えていく雑誌のほとんどは、焦点が絞りこ込まれておらず、内容があまりに一般的すぎるためといわれている。 

娯楽性の強いものから、実用的なものに移行

健康・フィットネス関連雑誌の発行部数を見てみると、トップは「プリベンション」の325万部、そして、「ゴルフダイジェスト」150万部、「メンズヘルス」132万部、「ゴルフ」128万部「ウエイト・ウォッチャー」103万部と続く。特に代替医療や栄養補助食品などをよくテーマにしている健康雑誌で発行部数の多いのは、「ヘルス」90万部、「シェープ」86万5257部、「アメリカン・ヘルス・フォー・ウエメン」80万部、「フィットネス」70万部、「ニューエイジ」24万部。 

雑誌業界の専門家によると、これまでの娯楽性の強い読み物から、実際に活用できる内容に記事の傾向が移り変わってきているという。確かにタイトルを見ても「長生きするには」「セクシーでほっそりとした足作り」といったものが目立つ。また、購読対象も絞りに絞り込まれている。たとえば、黒人女性、ニューエイジ志向の人、五十歳以上、中年の活動的な男性向きといった具合だ。

「がん」に関して誇張した取り上げが増えている

こういった情報洪水の中で報道内容の「信頼性」が問題になっている。ワシントンDCにある「メディア・アンド・パブリック・アフェアー・センター」の最近の研究報告によると、ここのところ「がん」に関する報道が増えており、メディアはがんに罹る危険要因をしばしば取り上げている。問題なのはその取り上げ方だという。科学者たちが取るに足らない危険要因と考えていることでも、メディアは誇張して報じてしまう。これは「がん」に限らず、ここ2年ほどの健康問題を扱った報道におしなべていえることだという。 

がんに罹る危険要因についていえば、「たばこ」を除いては、メディアと科学者たちの報告には明らかな開きがある。メディアの多くは「食品添加剤」「放射線」「家庭用の化学薬品」に発がん要因があると大々的に報道しているが、多くのがん専門家は「それでがんに罹る危険はごくまれ」と指摘する。ダイオキシン、ラドン、人工甘味料、DDTなどの殺虫剤とがん発病との関連に焦点を当てるのも問題ありという意見も上がっているという。 

信ぴょう性に疑問符のつく報道が増える中、同研究報告は、ニューヨークタイムズ紙とテレビのニュースは、がんについての情報源としてかなりの信頼性があると指摘している。