米国・代替医療への道 1998

「食」に不安、栄養補助食品に期待かける米国 / 過熱する健康情報メディア、問われる信憑性 / 膨張する米国民医療費、高まる予防医学への期待 / 米国のがん罹患率、1990年から毎年0.7%減少 / 糖尿病人口急増、予備軍含め1,600万人 / 食餌と「キレ」る行動との関連 / 米国・ぜんそくアレルギー患者の実態 / 米国におけるアトピー・アレルギー人口の現状 / ミネラルウオーター人気依然根強い、米国水事情 / ホルムアルデヒドなど、米国で深刻化する室内空気汚染

米国のがん罹患率、1990年から毎年0.7%減少

  1990-95年、がん死亡率平均0.5%減少

アメリカ国民のがんにかかる率(罹患率)が1990年から95年で毎年平均で0・7%減少――米国ガン協会(ACS)や疾病抑制予防センター(CDC)などの合同研究チームはこのほど、そんな朗報を発表した。73年から毎年平均1・2%の割合で増え続けていたのが、90年を境に減少傾向に好転。死亡率も90年から95年で平均0・5%減っている。定期検診などの予防・対策が効を奏したものと見られている。

この合同チームは、CDCや健康統計センター(NCHS)が集めた人口統計調査や死亡確認書などをもとに73―95年までの推移を調査。その結果、がんの罹患率、死亡率の低下は男女およびほとんどの年齢層、人種に共通していることが分かった。ただし、罹患率については、黒人男性の間で増加、アジア太平洋系女性で横這いになっている。死亡率の減少は、女性よりも男性に顕著に見られる。 

1日に1,500人以上ががんで死亡

がんの種類別で見ると、男女ともに発生率のトップにあがっている肺がんに関しては男性の場合、90年からずっと減少しているのに対し、女性はいずれも増加。男性の間で二番目に多い前立腺ガンの罹患率はすべての人種、死亡率はヒスパニック系を除いてそれぞれ低下した。 

現在、約800万人のアメリカ国民が、完全治癒も含めがんの生存者と推定されている。今年新たに約1,228,600人ががんと診断され、約564,800人が死亡するといわれている。これは一日に1,500人以上ががんが原因で死亡することになるわけだ。減少傾向にあるとはいえ、死亡原因1位の心臓病についで2位とまだまだ多い。 

米国がん協会によると、主ながんの種類別の今年の罹患・死亡推測、生存率は次の通り。

[肺がん]

罹患率:推定171,500人。がん全体の14%を占める。男性では84年の10万人に87人の割合をピークに94年には74人に減少。一方、女性は微増で、10万人に42人の割合で発病している。死亡率 160,100人。がん死亡率全体の28%を占める。87年以降、毎年乳がんを上回る女性の死亡が報告されている。生存率 一年生存率は94年が40%と73年の32%を大幅に上回った。これは手術の向上による。五年生存率は14%。早期発見の場合は49%だが、早期に発見されるのは15%とまれである。

[結腸がんと直腸がん]

罹患率:結腸がんが約95,600人、直腸がんが約36,000人。今年のがん診断全体の11%を占めるという。85年の10万人につき53人という罹患率ピークを境に下り坂が続いており94年には44人まで落ちた。死亡率 結腸ガン47,700人、直腸ガン8,800人。がんによる死亡の約10%を占める。過去20年間で女性の場合25%、男性は13%減少した。罹患率の減少と生存率が高くなったため。生存率 1―5年生存率は、結腸で81%、直腸で62%。早期発見の5年生存率は92%。ただし、早期で発見されるケースは全体の37%と低い。10年生存率は51%。

[乳がん]

罹患率:女性の場合の侵襲性がん178,700人。男性は1,600人。死亡率 女性43,500人、男性 400人。女性のがん死亡原因の一位。早期発見と治療の進歩で大幅な減少傾向にある。生存率 5年生存率は97%と高い。40年代には72%だった。10年生存率は67%、15年は56%。

[前立腺がん]

罹患率:推定184,500人。89年から92年にかけて罹患率が急増。定期検査を受ける人が増えたため。死亡率 推定39,200人。男性のがんによる死亡原因の2位。生存率 58%が早期発見。早期発見の5年生存率は100%。過去20年の生存率は67%から89%にアップしている。10年生存率は67%、15年が50%。

[子どものがん]

罹患率:推定8,700人と、子どもの罹患率は低い。血液、脊髄、骨、リンパ、脳などに発生しやすい。死亡率 推定1,700人。うち3分の1は白血病。珍しいとはいえ、15歳以下の病気による死亡原因の一位。70年代と比べると死亡率は57%低下している。がんによる死亡の3分の1は食事、同じく3分の1は喫煙がリスク要因としてあげられている。また、運動不足や遺伝も原因といわれる。プロテインの高い果物や野菜、穀物、豆を食べ、脂肪分の多い肉を控え、摂取カロリーのバランスをとり、適度な運動をする――そういったことが、がんに罹るリスクを抑えると言われている。

大豆のがん予防効果にマスコミも注目

がんの治療として最近、食事療法やハーブなどを用いた代替医療が注目されている。代替医療の草分け的存在は食事療法で、クリニックの多くが実践しているという。中でもマクロビオティック(穀物、野菜を主とした長寿食)への関心が高まっており、全国健康研究所の代替医療部門は最近、長寿食のがん予防の有効性を調査するため資金を出したほどだ。また、大豆のがん予防効果は頻繁に雑誌や新聞などがとり上げている。

ハーブのがん予防効果も米国の雑誌などによく載っている。特に「ESSIAC」は、がん予防で北アメリカでは最も人気のあるハーブのひとつ。カナダで注目されたのが始まり。「ESSIAC」は「BURDOCK」「TURKEY RHUBARB」「SORREL」「SLIPPERY ELM」の4種類のハーブから成る。ただし、「まったく効果なし」という研究報告もあり、アメリカとカナダでの配給は違法とされている。