米国・代替医療への道 1998

「食」に不安、栄養補助食品に期待かける米国 / 過熱する健康情報メディア、問われる信憑性 / 膨張する米国民医療費、高まる予防医学への期待 / 米国のがん罹患率、1990年から毎年0.7%減少 / 糖尿病人口急増、予備軍含め1,600万人 / 食餌と「キレ」る行動との関連 / 米国・ぜんそくアレルギー患者の実態 / 米国におけるアトピー・アレルギー人口の現状 / ミネラルウオーター人気依然根強い、米国水事情 / ホルムアルデヒドなど、米国で深刻化する室内空気汚染

糖尿病人口急増、予備軍含め1,600万人

  女性の糖尿病患者急増、推定800万人

米国の糖尿病患者は近年、著しく増加している。米疾病予防センター(CDC)の調べによると、1958年に160万人だった患者数は97年にはその6倍の約1千万人に達しているという。だが、CDCはアメリカ人の糖尿病患者実数を1千600万人と推定。統計との差の600万人は自覚症状のない潜在糖尿病患者と見ている。また、傾向として女性の糖尿病患者が急増しており、800万人ともいわれる。64歳以下では240万人が糖尿病と診断されている。

糖尿病とは、膵臓からのインスリン分泌が不足することで血液中のブドウ糖の利用度が低下し、血糖値が上がる病気。血液に吸収された栄養素、特に糖質はブドウ糖という形で存在するが、インスリンがブドウ糖を細胞へ送り込む調節役を果たしているのは周知のこと。

発症に2タイプ、早期発見が重要なカギ

糖尿病のタイプには①インスリン依存型(タイプ1)と②インスリン非依存型(タイプ2)があり、タイプⅠは糖尿病患者全体の10~15%を占める。特徴として、発症は30歳前が多く、ウィルスの感染や免疫機能の不全などにより膵臓のインスリン分泌細胞が破壊されインスリン不足となることが起因。症状も突然現れる。大体、生涯を通してインスリン注射に頼る。一方、タイプ2患者の90%は40歳すぎてから発症している。発症の原因には、肥満、運動不足、ストレス、貧しい食生活、老化、そして家族の糖尿病歴などが挙がっている、早期発見が重要な鍵。だが、病状の進行は遅いため、重症になってから気がつく場合が多い。

診断の決め手は血糖値だが、140mg/dLを超した時(正常値は70~100mg/dL)糖尿病患者の太鼓判が押される。しかし、早期発見の必要性を強調する専門からは、診断の目安を126mg/dLに下げるよう意見が出されている。さらに、成人はすべて45歳になったら糖尿病検査を受けることも進言している。

症状としては喉の渇き、飢餓感、疲労感、急激な体重減少などがあるが、糖尿病で危険なのは広範囲に起こる合併症だ。治療も受けずに放っておくと、心臓病、腎臓障害、神経組織への損傷、失明、四肢の痺れなどへの危険性が指摘されている。また、48歳から92歳までの3千571人を調べた最近の研究では、糖尿病患者の方により難聴の症状が現れたという。

低繊維の食事を摂り続けると、発症率が2.5倍に

糖尿病予防、また治療には食生活が深く関連してくる。ハーバード大学が、看護婦を対象に乳がんと肥満の関連を調べた研究では、穀物繊維を多く摂る被験者は後々糖尿病に罹りにくいことも明らかになった。また、Low glycemic index foods(低血糖症指標食品)を多く摂ると糖尿病を防げることも指摘されている。こうした食品には、りんご、ブロッコリー、ヨーグルト、パスタ、オートブラン、ヤムいも、ナッツなどが挙げられる。

つまり、反対に低繊維、High glycemic index foodsの食事を摂りつづけると、罹患率が2.5倍になる。また、炭水化物を摂取カロリーを45~50%に抑え、タンパク質を15%、一価不飽和脂肪酸(オリーブオイル、カノラオイルなど)を多めにした脂肪を35~45%にすることで、糖尿病患者の心臓発作を誘発するトリグリセリド濃度を減少させる。

その他、栄養学的注意事項としては――①精糖、ソフトドリンクなどを避ける、②飽和脂肪酸を成分とした油を多く使った揚げ物などを避ける、③ムコ多糖類の摂取を増やす。例えば、オーツ、オクラ、アロエなど、④1日に少量、何回にも分けて食事を摂る、⑤まぐろ、サケ、いわしなどの魚を摂る⑥乳製品の摂取は少なめに、⑦ソルビトールの豊富な食品(チェリー、プラム、桃など)の摂取を少なめに――などを挙げている。