米国・代替医療への道 1998

「食」に不安、栄養補助食品に期待かける米国 / 過熱する健康情報メディア、問われる信憑性 / 膨張する米国民医療費、高まる予防医学への期待 / 米国のがん罹患率、1990年から毎年0.7%減少 / 糖尿病人口急増、予備軍含め1,600万人 / 食餌と「キレ」る行動との関連 / 米国・ぜんそくアレルギー患者の実態 / 米国におけるアトピー・アレルギー人口の現状 / ミネラルウオーター人気依然根強い、米国水事情 / ホルムアルデヒドなど、米国で深刻化する室内空気汚染

ミネラルウオーター人気依然根強い、米国水事情

  全米の消費者の4割が定期的にボトル入りの水を購入

エビアン水のボトルを小脇にかかえ―。そんなファッション感覚から始まり、今ではすっかり生活の必需品となったボトルに入った水。ビベレージマーケット社の調べでは、殺菌剤の入った水道水を飲むのは心配と、全米の消費者の約40%が定期的にボトル入りの水を買っている。そんな状況の中、政府は新しい法律を施行し水道水の質の向上とイメージ挽回に乗り出した。

ボトルに入れて売られている水の全米消費量は、約30億ガロン、金額にすると約50億ドル。毎年8%近く着実に伸びている成長株の商品だ。ところで、ひと口にボトルに入った水といってもいろいろな種類がある。需要の高まりにのって、連邦食 品・薬品局(FDA)は1995年、種類の違いを次のように定義している。[ARTESIAN WATER]水脈まで掘り下げ水圧によって自噴させる掘り抜き井戸からの水。[GROUND WATER]気圧と同じまたは少し高い地表下からの水。[MINERAL WATER]天然の鉱泉からの水。[PURIFIED WATER]溶液に高圧を加え、半透膜を通して溶媒を低濃度側に移したり、蒸留、消イオンなどの処理を加えた水。[SPRING WATER]天然の涌き水[STERILE WATER]無菌試験の結果、必要条件を満たした水。[WELL WATER]地下帯水層からの水。

ボトル飲料水は連邦、州、業界で厳しく検査

現在、数多くの異なる銘柄が出回っているが、輸入品は全体のわずか4%と少なく、ほとんど水源を米国内に持つ。飲料製造業者は水源の持ち主から水を買い、輸送、びん詰めなどに手間をかけるため、水道水に比べ値段は高くつくが、「水道の水よりも安心」と需要は伸び続けている。

インターナショナル・ボトル・ウオーター協会によると、ボトル水の消費量は、1996年に29億4千40万ガロン、95年に26億9千150万ガロン、94年に24億9千340万ガロン。消費の一番多いのはカリフォルニア州で、96年の消費量は8億5千440万ガロンと全体の約30%を占め、二位につけたテキサスの1億9千650万ガロンを大きく引き離している。

カリフォルニア州が飛び抜けて多い理由として、健康志向が高い、フィットネスなどに通う人が多くボトルは持ち歩きに便利、水道水よりも味がいい――などが挙げられている。ところで、このだれもが安心して買っていくボトル入り水、品質管理はどのように行われているのだろうか。連邦、州、業界の三段構えと慎重だ。連邦レベルでは、食品・薬品局(FDA)が食品として規制。すべてのブランドに対し、化学物質や放射線などの汚染物質の検査を毎年義務づけている。

また、州によっては毎年、FDAの対象となっていない汚染物質についても検査を実施。業界では業者の85%が加盟しているといわれるインターナショナル・ボトル・ウオーター協会が会員に対し検査を実施するなど、品質管理には厳しい目を光らせている。家庭用浄水器を取り付けたり、ボトルに入った水を飲料水にしている とはいえ、水道水の質の向上を願う声は強い。 

「毎月の水道代が10ドル上がっても」と、美味しい水を求める市民

ジョージア大学の世論調査センターによると、ジョージア州に住む400人を対象に電話で意見調査をしたところ、60%以上が「水道水の質が向上しもっと安心して飲めるなら、毎月の水道代が10ドル上がってもいい」と答えた。80%が「におい」、「味」の点では満足していると答えたが、13%が浄水器、40%がボトルに入った水、9%が水道水を沸かして利用しているという。

こういった市民の声を受け、クリントン大統領は96年、安全飲み水法(SDWA)修正案に署名。老朽化した浄化システムの改善や新施設の建設に連邦政府が援助金を出すほか、ロサンゼルス市水・電気局のような地域の各エージェントに対し、消費者への水質報告を毎年義務づけている。また、今年2月からオークランドの東湾ミュニシパル・ユティリティー・ディストリクトでは、これまで殺菌に使っていた塩素から窒素と塩素を含む化合物クロラミンにかえている。塩素は水を殺菌する過程で発がん性の副産物を作りだす危険が指摘されており、全国的に塩素を使わない傾向にあるという。 

南カリフォルニア・メトロポリタン・ウォーター・ディストリクト(MWD)でも84年からすでに塩素からクロラミンに切り替えている。ロサンゼルスはクロラミンからさらに安全性の高いオゾンに変更。殺菌過程で生じる副産物はさらに少なくなるといわれている。MWDも数年以内に、2施設でオゾンに変えていく方針だ。

MWDのスポークスマン、ロバート・ホールワックスさんは「ボトルに入った水も水道の水も、連邦政府の検査基準は、水道水の殺菌剤基準が高いことを除けばほとんど同じ。水道の水は危ないという固定観念が広まっているが、ミネラルも豊富だし安全。ボトルに入っているけれど、実は水道水なんていうのもある」と話していた。