米国・代替医療への道 1998

「食」に不安、栄養補助食品に期待かける米国 / 過熱する健康情報メディア、問われる信憑性 / 膨張する米国民医療費、高まる予防医学への期待 / 米国のがん罹患率、1990年から毎年0.7%減少 / 糖尿病人口急増、予備軍含め1,600万人 / 食餌と「キレ」る行動との関連 / 米国・ぜんそくアレルギー患者の実態 / 米国におけるアトピー・アレルギー人口の現状 / ミネラルウオーター人気依然根強い、米国水事情 / ホルムアルデヒドなど、米国で深刻化する室内空気汚染

米国におけるアトピー・アレルギー人口の現状

  アメリカ人の約10%がアトピー性皮膚炎という研究報告も

米国のある研究によると、人口の約10%に見られるというアトピー性皮膚炎。発疹が体の一部あるいは広い範囲に表れかゆみをともなう。ひどくなると発疹が腫れ上がったり膿んだりもする。アレルギー性疾患といわれるが、その決定的な原因はいまだにつかめていない。環境要因、医薬品による副作用、遺伝など1要因から発症することもあれば、幾つかの条件が重なって罹ることもある。

この症例の約75%は1歳から3歳の間に表れるという。米国の子供たちの1~3%はこの症状を経験する。1歳前に発症したケースも8%ある。また、患者の半数ほどが2歳前に治っている。しかし、残りの患者の中には思春期を過ぎ、さらに大人になっても治癒せず、持病のように慢性化してしまう事例もかなり見られるという。症状の辛いところは、何といっても痒みを伴うこと。病斑はかさぶたになってはがれたり、また硬くなったりの繰り返しとなる。掻きすぎてばい菌が入ったりすると、じくじくと膿んだりもする。

アトピー乳児の27%は母親もアレルギー体質

乳児のアトピーは顔、耳の裏、ひじ、膝裏の柔らかいところや臀部などにあらわれることが多い。幼児期になると、主に腕や足に多くなる。アレルギー性疾患といわれることから、食べ物に対するアレルギーやほこり、花粉、石鹸過敏症などの症状が同時にあらわれやすい。またアトピー乳児の27%は、母親がやはりアレルギー体質であることが判っている。

アトピー患者46人を対象に65種類での食品アレルギーを調べた研究では、食品1種類に対し、61%が皮膚に刺激反応を示した。また27種類に対して、患者15人に陽性反応が出たが、陽性反応の78%は卵、ミルク、ピーナッツなどの食品に対してのものだった。

イエダニ被害、ほこり対策用カバーで顕著な改善

室内のほこりに住むイエダニ(HDM)がアトピーの病原であるアレルギー抗源であるかどうかについては、各所でかなり論議を巻き起こしている。HDMの量とアトピー症状の関連性を調べた実験では、ほこり対策用のゴアテックス(通気性、撥水性ある布地)・ベッドカバー使用VS木綿地のカバー、高性能の掃除機使用VS一般的なものなどの比較調査を行った。ほこりは毎月、ベッドカバー、リビングルームやベッドルームのカーペットから採取。実験に参加したアトピー患者は48人で、成人24人(中間年齢30歳)子供24人(同じく10歳)の内訳。グループの28人がほこり対策道具を使用し、残りは比較対照グループとなった。実験は6ヶ月間行われた。

この結果、ゴアテックス・カバーから採取したほこりの重さは、1ヵ月で98%減少。木綿地のカバー使用には、1ヵ月では顕著な変化は現れなかったが、6ヶ月後にはかなりの減少を見せたという。どちらのグループでも重症患者に症状の改善が見られたが、特にほこり対策用カバーを使用したグループで改善は顕著なものだった。

2年間の温泉治療でアトピー徐々に改善、オオバコ、カモミールなどのハーブも炎症緩和に一役

慢性病の色合いが強いアトピー皮膚炎には、即効で完治できるという治療法はなかなか見当たらないが、家庭でできる症状緩和には次のようなものがある。①膿んでいる湿疹には水風呂。痒みを抑えることができる②なるべく石鹸は使わないか、化学物質が含まれない物を使用③子供にストレスを与えない④衣服、寝具など身に付けるものにウール地は避け、木綿地など自然派製品を使用する⑤洗濯洗剤も香料の入っていない物を選ぶ⑥指の爪はいつも短く、清潔に⑦ある食物を食べると湿疹が出たりひどくなる場合は、その食品を避け代用品を探す――など。

湿疹がひどくなった時はステロイド系の塗り薬、抗ヒスタミン剤などが与えられるが、長期にわたる使用には副作用の可能性が指摘される。そうしたことから、最近では自然療法からの症状の緩和を求める声が多くなった。日本で行われた研究でも、2年間にわたって温泉治療を追跡したが、徐々にだが改善が見られたという。また、症状緩和のためのハーブを利用した研究が進んでいる。

例えば――①痒み/Chickweed(ハコベ)が特に痒みを抑える働きをするという。入浴オイル、湿布、ローション、クリームで利用。同じような働きをするものにWitch Hazel(マンサク)がある②炎症/Plantain(オオバコ)、Calendula(キンセンカ)、St. John’s Wort(オトギリソウ)、Camomile(カモミール)などが炎症を抑える働きをする。入浴オイルなどで③皮膚軟化に/Comfrey(ヒレハリソウ)、Mallow(アオイ科)などが皮膚軟化や症状緩和の働きをする④傷/Comfreyが傷となった跡を緩和する――などのハーブが専門家から薦められている。